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【贈り物相談室 令和7年2月号】金券主義 その2
ギフトアイテムとしても重宝される商品券は便利なツールですが、実は案外知られていないことが多くあります。
商品券は金券であり、現金そのものです。商品券には有効期限が設定されているものと、されていないものがあります。百貨店商品券は有効期限が記載されていないので、いわゆる箪笥在庫と言われる未使用の商品券が全国にどのくらいあるのか、見当もつかない額になりそうです。発行部数から使用分を引いた額を計算するだけでも、伊勢丹が三越と統合するときには小さな課題(不安)となるぐらいの数字でした。
商品券は会計上で法律の適用を受けます。専門的なことは省くとして、発行元が破産や廃業した場合は使えなくなるのはもちろんのこと、細かなところで法律も変更されることがあり、営業部門と経理担当のコミュニケーションが重要となります。
百貨店には『商品お取替券』という金券が存在します。
何らかの理由で顧客に返金をする場合、売場の責任者は現金か金券を選択します。現在は、行政指導で販売側の瑕疵や顧客に正当な理由がある場合は現金での返金がルールですが、20年前までは商品お取替券での返金が当たり前でした。返品事由にどんなものがあるかというと、「贈答ギフトでもらった商品が不要」というケースが最も多く、特にお中元お歳暮、返礼品などのフォーマルギフトが多くありました。逆に、衛生商品、ベビー用品、直接肌に触れる商品、開封した食品などは返品不可とされていました。
昭和の時代は、中歳ギフトの期間が終わると食品フロアの片隅に返品コーナーを設けるほどでした。また返品された商品はメーカーに返品されるという悪循環があり、この悪循環に対応したのが食品業界です。それが、ギフトの包装紙の裏に貼り付けた「商品の性質上返品不可」のシールで、現在はこれが当たり前になりました。
『商品お取替券』は時として悪用されることがありました。
悪意の返品というのがあり、特に顕著だったのがバブル期と言われた80年代です。新宿伊勢丹はリモデルを重ね、一流百貨店を目指すようになりました。元々、自分使いの高いアパレルに強みを持っていましたが、ギフトに強化を入れてリビングフロアも高級化を図りました。高額な工芸品や高級輸入食器に力を入れるようになり、10万円、100万円以上の商品が品揃えされるようになりました。不安は盗難でした。監視カメラが無い時代だったので、毎日、毎時の陳列を確認することが日課でした。しかしながら、敵は正面から来ませんでした。ある日、有田焼の工芸の花瓶が熨斗紙をつけて進物で売れました。若い販売員は大喜びです。お客様はすんなり商品を決め、クレジットカードで購入したとの報告です。多少の不安を感じたベテランの販売員の心配が当たりました。
翌日、早速の返品です。持参したのは百貨店には縁のなさそうな若者です。カウンターに座ったまま返品されるまで動きません。強面のバイヤーが対応することになり、状況を把握すると、若者は使い走りで指示役の胴元がいるようでした。胴元を呼んで来いというと、組織のチンピラ風な男が来ました。強面バイヤーがいろいろと聞きだすと伊勢丹のあちこちの売場で同じようなことを繰り返しているとのことでした。紳士服売場ではお仕立券付きのYシャツ、服飾雑貨売場ではバッグなどが標的になっているようでした。恐らく盗難カードを使い、返品によって得たお取替券を金券ショップに流した組織的な犯罪だったのでしょう。
伊勢丹名義のお取替券が金券ショップで売れるようになった=そのぐらい屋号のブランドが確立した、という見方もできた一件ではあったのですが。
商品券やギフトカードはとても良いギフトアイテムです。
近頃はネットを介在しての犯罪やセキュリティ対策の強化で金券の犯罪は減少したかもしれません。ポイントや投げ銭などが金券に取って代わっていますが、お店に足を運んで商品を選ぶのもお買い物の楽しさです。皆さまも家や財布に眠っている商品券を利用しませんか。
来月は「お客様相談室」をお届けしたいと思います。
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