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【清水由起のデータから読み解くギフト事情 vol.12】華やかさと安定感が見直され、ステイタス高まる「フラワーギフト」
コロナ禍で急伸、ギフトアイテムとしての「花」
イベントや贈答用での需要が多くを占めている日本の花業界だが、若者の花離れや祭壇に供える花の簡略化、「母の日」等これまで絶対的に花が定番であったギフトオケージョンでも多様化が進んでいることにより、花の消費量は下降の一途を辿っている。
加えて、新型コロナウイルスの感染拡大時には入学式や卒業式、冠婚葬祭など、花を消費する機会がことごとく消滅し、企業イベント等も中止または延期されるなか、会場の飾り付けをする切り花などの需要も大きく低迷し、フラワーショップは苦難に直面した。
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しかし、ギフトに限定してみると、コロナ禍で「花」の市場規模は急伸している。2020年のフラワーギフトの市場規模は前年比130.3%、2021年は同108.1%、2022年は同105.0%と、これまでダウントレンドだった市場環境とは大きく様変わりした。人と気軽に会えなくなったことで、何かお祝い事やお悔やみ事、贐(はなむけ)や餞別事のケースには、とりあえず花でも贈っておこうという風潮が強まったのである。お祝いやお別れの場面において「花」は華やかな印象を演出してくれること、また、失敗が無く無難であることも、便利に使われた理由であると言える。
伸びしろが顕在化、新たな需要喚起につながる
その他にも、コロナ特需として「供花」が挙げられる。お盆時期の帰省を諦め、お墓参りができない代わりに、供花をフラワーギフトとして実家へ贈る需要が急伸し、2020年8月のフラワーギフトの売上が前年同月比200%、なかには同400%となったECサイトも存在するなど、例年には無い動きが見られた。参入各社がプロモーションに注力したことによって、供花を贈るという認知も拡大し、2021年、行動制限が無くなった2022年以降もその勢いは継続している。また、供花といえば菊やユリなどの切り花を素朴にまとめたものが定番であったが、オシャレで華やかな供花用のアレンジメントが数多くラインナップされるようになってきたことも、需要喚起に繋がっていると言える。
通夜や葬儀・告別式の供花も急伸している。家族葬傾向が高まり、会葬者の規模縮小化はコロナ前から起こっていたが、コロナ禍以降はその傾向は加速しており、参列しない代わりに供花を贈る動きが目立つようになった。香典を送ると返礼が発生するため、喪主を煩わせないために供花を選ぶという要因もあるようだ。四十九日や3回忌、7回忌などの法要に対しても、同様の傾向が見られている。
現在は落ち着くも需要は継続、デジタルシフトも奏功
花離れが顕著だった傾向がコロナ禍において一転したことは、低迷していたフラワー業界に明るいニュースとなった。一度花を贈って喜ばれた経験、贈られて嬉しかった経験は人々の記憶に残るため、現在は多少落ち着いた感はあるものの、需要は継続している。
これまであまり意識してこなかったギフトオケージョンにおいても、フラワーギフトの伸びしろが存在していることがわかり、花にまつわる国内外の文化を紹介、自家需要の訴求など、今まで花を購入しなかった客層の取り込み、花を贈りやすくする機会を増やす取組みが数多く行われている。フラワーギフトが持つ華やかさ、失敗の無さに加え、デジタルシフトにより注文や配送の利便性が高まったことで、ギフト選びにおけるフラワーギフトのステイタスが上昇したと考えられる。
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