【解説】第20話 研究者には単身赴任が多いにゃ!
まとめ本に収録した各トピックの解説の全文を掲載
夫婦のうちのどちらか一方、もしくは両方が研究者である場合、同居環境を維持することは極めて難しいです。理由はアカデミアの研究職は任期付きだからです。両方が同じ地域にパーマネントポジション(任期無し職)を獲得するまで、別居になる可能性は無くなりません。私自身も子供が小さい頃を除けば基本的にパートナーとは別居です。
このトピックでは単身赴任のいろいろな例を挙げましたが、別居の何が一番大変かって、それは「交通費」です。あと移動もかなりの負担になります。私も一時期、異常に飛行機のマイルが溜まりました。単身赴任と言っていますが組織の命令で移動しているわけではなく、前職の大学を退職して移動するので、単身赴任手当などもありません。大学には単身赴任手当という項目が存在しますが、実際に貰っている人を見たことがありません。私は国立大学に所属しています。国立大学法人間の移動であれば単身赴任手当が出ると言われています。私立・公立大から国立大への移動や、国の研究所から国立大への移動はその対象外となります。しかし、国立大学間で移動した知り合いは支給されなかったと言っていたので基本的に貰えない制度のようです。
このトピックでは不妊治療に関するコメントが出てきます。本当は「別居と妊活」について1つトピックを立てたいと思っていましたが、最終的にこういう形に収まりました。不妊治療だけではなく出産前診断(の説明)など夫婦揃っていなければならないことは別居していると何かと不便です。本編では描写できませんでしたが、Iにゃんとミャオ先生夫婦はずっと不妊治療を続けていたという設定があります。第28話では子猫大に移ってから子供ができました。
2人の物語は第29話として加筆しました。
最後の「夫婦採用」ですが、日本では九州大学がはじめに制度として立ち上げました。大きな一歩です。しかし、そのハードルは非常に高く、採用者の配偶者が既に世界的に優れた業績をあげていることが条件になります。つまり、子育て中の若手の研究者を想定したものではありません。今後、少しずつ変わっていくことを望みます。