【金魚】松かさ病の治療
※この記事は、現在研究中の記事になります。随時追記します。
治療が難しいと言われる松かさ病
一般的に松かさ病と言われる魚の病気は、松ぼっくりの様に鱗が逆立って見えるような症状のことを指します。
しかし、これはあくまで症状であり、原因は複数あります。人間でいう浮腫であり、水腫と呼ばれる症状になります。
治療が難しいと言われる原因は、魚の体内で何らかの異常が発生し、それによって水腫が発生、松かさ状態になるのですが、その原因が複数あるという事です。
どうやっても救う事ができないケースは、先天性の異常がある場合です。腎臓や肝臓がもともと未発達であったり、異常がある場合です。この場合は、魚ができるだけリラックスして余生を過ごせるようにしてあげたいものです。
助かる可能性がある場合は、水腫の細菌感染、寄生虫感染が原因の場合です。但し、助かったとしても転覆症状が改善しなかったり、鑑賞性を著しく損なう可能性が高いことも認識する必要があります。
私自身、何匹かまつかさ病を経験しています。実績的には80%は落としています。
助かった例は、
怪我による一時的な高ストレス(若魚)
横たわって沈んでしまうほど弱りましたが、少量のGFG顆粒と塩浴だけで完治し、怪我により鑑賞性は下がりましたが、とても元気です。
原因不明 体力のある魚(2歳魚)
食欲は旺盛なものの、消化不良により痩せてしまった個体、一時横たわってしまい、くの字型に浮いてしまっている状態から復活しました。寄生虫の類ではないかと考えていますが、原因は不明です。治療は寄生虫駆除と抗菌剤を使用し、餌が食べれるようになるまではエビオス錠も添加していました。一時的にではあるものの、黄疸も出ていました。エロモナス症に多い赤班の症状等はありませんでしたが、ヒレがよく裂ける(栄養失調?)個体でした。鑑賞性、活動性は若干下がりましたが、現在も餌をよく食べ、消化不良は克服したようで元気です。
治療法
金魚がまつかさ状態を呈しているという事は、水腫(dropsy)という状態にあります。体内の水分をうまく排出できず、水が溜まってしまっている状態です。
複合的な治療
原因が特定できれば良いですが、松かさ症状が出ているという事は、もうあまり残された時間はありません。なので、複合的な治療が必要となります。バランスを得るために、時には、魚の症状を緩和するために、相反する治療を要する場合があるということを知っておきましょう。
また、複合的な治療を実施するという事は、その分、魚にダメージを与える可能性もあります。
若い魚で、よく泳いでいる、食欲がある。という場合は、積極的な治療を検討してみても良いと思います。
事前確認事項
隔離水槽を用意する
塩0.5%の塩浴を実施する
徐々に水温を上げる → 様子を見ながら慎重に。
細菌用感染薬と寄生虫感染薬を合わせて薬浴する
薬餌を作り、少量ずつ与える
水温を上げることが最優先です。
もともとの水温や魚の状態を見ながら昇温してください。10℃以上昇温する場合は、水量を確保した上で徐々に実施することが望ましいです。
昇温限度は2~3℃/dayが安全ですが、状況に応じて判断しています。
エプソムソルト浴と塩浴は相反する治療(一時的な消化不良の改善)
まつかさ病(dropsy)の症状が出ている時点で、エプソムソルトを使用しても救命は難しいと思います。実際、エプソムソルトを入れて救命できたと言うほど予後がいい例はありません。長時間のエプソムソルト浴は、肌荒れを引き起こすこともあります。
それから、エプソムソルト浴と塩浴を同時に実施することについては、議論を呼ぶところです。なぜなら水を排出させようとするエプソムソルト(硫酸マグネシウム)と、一方で、塩浴は、浸透圧差を少なくして水分排出量を少なくすることを目的とするからです。
これらの研究はまだそれほど進んでいないと思いますし、魚への作用機序は未知数です。ですが、一般的な作用機序としてはエプソムソルトは、腸壁を刺激して排泄を促すとされています(代謝促進)。
腸管を刺激して排せつを促す効果は、消化不良による松かさ症状の改善に役立つことも一時的にはあると思います。(エプソムソルト浴をするとたくさんフンをします。)後述の細菌感染薬と寄生虫感染治療薬の併用もするので、金魚の負担を考えると塩浴とエプソムソルト浴の同時実施は、検討しても良いかもしれません。
細菌感染用薬と寄生虫治療薬の併用
昇温後、2~3日しても変化がないというような場合は、細菌感染用薬と寄生虫治療薬の併用をします。魚の状態を見ながら一種類ずつ、少しずつ規定量を投薬しましょう。
細菌感染薬と寄生虫感染薬の使用は、金魚にとって負担のある治療です。体力がない金魚は薬浴によって死んでしまうこともありますし、深刻な内臓疾患を招く可能性もあります。まつかさ症状がある場合は、必ず塩浴と一緒に実施します。これは浸透圧を下げることにより金魚の体力温存の効果を狙います。
薬餌
食欲のある魚であれば、薬餌を行います。薬餌は、餌を与えることは消化により、金魚の体力を奪う原因になりますが、塩浴で体力を温存しつつ、金魚の体内に薬の成分を届けることを目的として実施します。それであれば薬浴だけでいいのではないか、と思われるかもしれませんが、薬浴では内臓には薬が届きにくく、薬餌の効果が高い場合があります。
ただ、現状、薬餌についてもあまり治療成績は良くありません。薬餌をあげた後は、じっと動かなくなることもあります。
助かった例としては、皮肉にもできる限り何もしないで置いた個体の方が多いのが現状です。
薬餌は、グリーンFゴールド顆粒0.6gをカルキを抜いた水1リットルに溶かし、普段の餌を浸します。30分ほど経ったら、ペーパータオルに上げて、ハンディ扇風機で一気に乾燥させています。これでなるべく雑菌を防ぎつつ、薬餌をつくることができます。
栄養補給とストレスを取り除く
急性のまつかさ症状は、ストレスに起因する場合と栄養不足が原因の場合があります。
長く消化不良の治療をしていたりすると、自然と給餌量が減り、栄養が不足してしまっていることがあります。
飼育水にビタミン、アミノ酸などを添加して急激に回復したことがあります。観賞魚用のビタミン剤のほかに、私はエビオス錠を溶かして飼育水に添加することがあります。但し、非常に水が汚れるので、12時間程度で水換えをします。しばらく栄養が取れていないという個体(消化不良による痩せ+まつかさ症状など)は、これで急激に持ち直すこともあります。思い当たる節があれば、試してみるのもアリだと思います。
ストレスが原因の場合は、かなり意識してストレス原因を排除していきます。基本は塩浴のみです。水量を確保して水換え頻度を減らし(臭いが出ているような場合を除く)、温度も一定に保ちます。なるべく変化を与えず忘れるくらいの勢いでそっとしておきます。もうダメだ・・・と思ったら、本当にそっとしておきます。案外むくっと起き出して1週間後には元気に泳いでいることも。
エロモナス症について
私の水槽環境で特に大変だったエロモナス症について書きます。これによっておそらく1匹、成魚も落ちてしまいました。魚によって症状は様々なのですが、細菌の内部感染で本当にあっという間に症状が悪化してしまい、たくさんの魚に影響を出してしまいました。
初めは、病気知らずだった稚魚の数匹に目の充血があり、すぐに隔離しましたが、あっという間に他の魚にも感染していきます。不思議なことにほぼこの症状で落ちた稚魚はいませんでした。ですが、1日程度であっという間に悪化し、これに感染した魚は片目を失うか両目を失ってしまいました。目を失ったほとんどの魚が落ちることはありませんでした。
同じ温室内の成魚には感染はなく、稚魚特有かと思っていましたが、1匹成魚にも感染があり比較的緩やかではありましたが、最終的にはまつかさ症状が出て、落ちてしまいました。
それぞれ治療法は、塩0.5%+グリーンFゴールド顆粒で治療を開始しましたが、成魚は消化不良も併発していて、何度か薬浴をしましたが助かりませんでした。
何度かこのパターンで成魚を落としていますが、いずれも消化不良の症状(食後の浮き)が初期症状としてあります。
この消化不良の症状が出たらできるだけしっかり治してやることです。食後の浮きがちょっとみられると言うくらいからの治療であれば比較的予後は良いです。
ここまで読んでくれた方へ
体力があり、感染等も比較的軽微でありダメージが残らないレベルであれば、まつかさ症状がでても数日で金魚は回復すると思います。
ただ、前述の通り、まつかさ症状の出た魚はほとんど助からないことが多いです。一種の寿命ともとれると考えているくらいです。
放置すれば数日以内に死んでしまうことも多いと思います。治療をしたとしても、長期間の治療を要し、まつかさ症状も再発を繰り返します。また、高額な治療薬が必要となり、それでも回復せずに死んでしまう事が多い病気だと思います。
ここに書いてある治療を全て実施するには、恐らくたいていの金魚の価格をゆうに超え、あなたも心をすり減らし、時間もたくさんつかっていることでしょう。魚を飼っている人はいずれ、どこかでこれらの事に折り合いをつけていくのだと思います。
今目の前にいる命に真剣に向き合い、
ここまでの治療を全て実施したあなたへ
「たくさんお世話をしてくれてありがとう」
と言いたいです。
何事も費用対効果が得られないとなかなか研究が進みません。特に鑑賞魚は毎年大量に生産され、寿命も比較的短く、商業的には色形にフォーカスされますが、その健康と飼育方法はあまり研究されていません。
愛好家にとってお魚一匹と言えど、大切なペットであり命です。
大切にしたいと思う気持ちは、皆さん一緒だと思います。
ですので、試行錯誤の上金魚を飼って治療したり、元気に生きる方法を愛好家がナレッジを残していくことにより、少しずつ研究が進んでいくのではと思っています。
お断り
この記事は、個人的な研究の途中経過で書いています。
ですので、全ての金魚がこの治療方法に当てはまるとは限らず、後から否定されるものも含まれると思います。その点ご了承の上、参考にしていただけると幸いです。