ツキステ。11幕を観に行って。①
1年9ヶ月ぶりのツキステ。コロナで延期になっていた11幕。場所は何度か訪れているヒューリックホール。最速先行を申し込んだ時、チケットは取れないだろうと思っていた。それならそれで、行かない理由になる。そんな風にも考えていた。
が、なんということか。こんな時に限って、きちんとご用意されたのである。漆黒の章、月白(げっぱく)の章、両公演とも、とびきりの良席で。
11幕は、わたしにとって初めて「推しの居ないツキステ。」になった。
わたしは、6幕で栗田学武さんが出演されたことをきっかけに、ツキステ。を観に行き始めた。栗田さんは、昨年末のプロステ。の延期公演(無観客、配信のみ)を最後に、キャストを卒業されている。
本来11幕は、昨年夏に上演されるはずだった。配役表にも栗田さんのお名前があった。それがコロナで中止となり、やっと決まった延期公演と同時に、卒業が発表されたのだ。
卒業自体が哀しかったのではない。なぜこのタイミングだったのか、事情はわからないが、せめて11幕を演ってからでも良かったのではないか。何度もそう思った。初めて演るはずだったお当番回(年中組メイン)。栗田さんがふたたび葉月陽として、あのステージに立つことを期待していたし、誰より本人が一番楽しみにしていたことだろう。それを思うと、今も胸が痛む。
あれほどコロナを恨めしく思ったことは無い。舞台KING OF PRISMの千秋楽と大千秋楽が中止になった折も、あまりの悔しさで、誰彼かまわず泣きごとを言ったが、その時とは比較にならないほどショックだった。(ちなみに最前列および一桁通路席が幻と消えた。思い出すとやはり悔しい 笑)
11幕のチケットが取れた時、正直行くのを迷った。何度も言うが、コロナさえなければ、推し殿が出るはずだった舞台。しかも新キャストは、いや旧キャストと言うべきか、第1幕~第8幕およびツキノ帝国2まで担当されていた、初代葉月陽・鷲尾修斗さんである。当然、界隈からは「おかえりなさい!」「待ってました!」と歓喜の声が飛び交った。少なからず耳をふさぎたい気持ちになったものの、9幕で鷲尾さんがキャス変となった時は、彼のファンも寂しさや喪失感、いろいろな思いを抱えたのだろうと、ぼんやりした頭で思った。
栗田さんは、ツキステ。デビューとなった6幕で、陽のお兄ちゃんである透と黒天狗の勘助、8幕やスケステ。では、伊車六価という舞台オリジナルキャストをそれぞれ演じている。「兄だった人が、今度は弟を演るの?」「栗田さん好きだからご出演はうれしいけど、舞台キャストのイメージが強いから複雑...」。SNSでは賛否両論あった。なにより初代キャストであり、ファンの多い鷲尾さんの卒業は、界隈を震撼させた。そんな方の後任だったのだから、栗田さんのプレッシャーは計り知れない。ツキステ。の出演自体は初めてではなくても、メインキャストへの抜擢、しかも大人気初代からのバトンタッチというのは、さぞ大きな重責だったのだろうと今でも思う。
そんな栗田さんが卒業され、鷲尾さんがふたたび戻ってこられる。純粋に復帰を喜ぶファンの気持ちを、わたしごときが責められるはずもない。コロナは憎いが、誰も悪くない。そして、6幕から観ている鷲尾さんの葉月陽を、わたし自身も素晴らしいと思っている。こんな感情、とても説明がつかない。
11幕で陽を見たら、どんな気持ちになるのか想像がつかなかった。どうして栗田さんじゃないんだろう。そんな風に感じるのは絶対に嫌だった。鷲尾さんにも、栗田さんにも、ツキステ。に関わるすべての人たちに対して、あまりにも失礼だ。だから、いっそのこと、観に行かないほうがいいのではないかと考えていた。
でも、この気持ちにケジメをつけないと、半永久的にモヤモヤが残ると思った。この機会を逃せば(栗田さんがふたたび出演されない限り)、わたしがツキステ。を観ることはもう無いだろう。これは禊(みそぎ)だ。どう感じるかなんて、実際観てみなければわからない。
そして足を運んだ、漆黒の章。
②へつづく