イノベーションに逃げ込まないエネルギー政策を
先日、2030年の向けた再生可能エネルギー導入目標の引き上げについて、現実的にどういった再生可能エネルギー電源の導入が必要になるかをまとめました。
この「抜本的な政策の見直しによる太陽光発電の拡大が必要」という結論については、多くの反響をいただいています。改めて、この課題について政府のグリーン成長戦略なども見ていきます。
「イノベーション」に頼るばかりの政府計画
昨年12月に経済産業省から「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が公表されましたが、ここに記載された重要分野における「実行計画」に太陽光発電は含まれていませんでした。
成長戦略の冒頭では、このような下りがあります。
国として、可能な限り具体的な見通しを示し、高い目標を掲げて、民間企業が挑戦しやすい環境を作ることが必要である。2050 年カーボンニュートラルに向けては、温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取組が特に重要となる。このため、産業政策の観点から、成長が期待される分野・産業を見いだすためにも、前提としてまずは、2050 年カーボンニュートラルを実現するためのエネルギー政策及びエネルギー需給の絵姿を、議論を深めて行くに当たっての参考値として示すことが必要である。グリーン成長戦略は、こうして導き出された成長が期待される産業(14分野)において、高い目標を設定し、あらゆる政策を総動員する。(p.1)
最後に『成長が期待される産業(14分野)において、高い目標を設定し、あらゆる政策を総動員する。』とありますが、ここに組み込まれなかった太陽光発電は成長が期待される産業ではないという解釈になります。
あるいは、既に成熟した産業と捉えていると言ってもいいでしょう。
しかし、産業政策なきFIT制度によって国内の大手太陽光パネルメーカーの撤退が相次ぎ、国内産業としては空洞化が目立ちます。一方で、世界的には年間1億kW以上(日本国内の累積導入量の2倍)の太陽光発電設備が増えていく中で、一度は世界トップの地位を確立した太陽光発電産業を再構築することは、まだ見ぬイノベーションに頼らずとも成長と拡大を図れる可能性があります。
2030年の再生可能エネルギー導入目標引き上げとその達成は、2050年カーボンニュートラルの達成に向けた重要なマイルストーンであり、その実現には太陽光発電の劇的な拡大が不可欠です。
まず当面の10年間を見据え、イノベーション頼みではなく既に確立しているものを使って足場を固めていく政策を早急に整えていくべきだと考えます。