太陽光パネルの価格高騰と納期遅延・資源エネルギー庁にとって不都合な真実
2020年初頭に新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大が始まってから、太陽光パネルの価格上昇や供給遅延が取り沙汰されてきましたが、その時はあまり政策的には注目されていませんでした。
しかし、2021年に入って過去に例のない規模での太陽光パネルの価格高騰や供給不安が発生しています。その実態を明らかにするべく、私が専務理事を務める一般社団法人日本PVプランナー協会で緊急調査を行った結果を先週公表しました。
価格高騰も納期遅延も異様な事態
詳細はレポートや後述する記事を見ていただければと思いますが、全体で108件の回答を受けた中で、価格高騰については9割近くの事業者が太陽光パネルの価格上昇に見舞われていると回答しており、3分の2の事業者で15%の値上がりとしています。
納期遅延についても、従来はほとんどの事業者が3ヶ月以内で納品を受けられていたとした一方で、現在は3ヶ月以上が46.2%となり、更に27.8%の事業者が納期未定と回答しています。単に納期が延びただけでなく、メーカーや商社から納期の回答自体を得られないというのは前例のない状況です。
様々なメディアでも報道
この情報を公開してから、調査結果が業界関連のメディアを中心に報道されています。これまで噂レベルだった太陽光パネルを巡る市況が、こうした調査結果として明らかにされたことのインパクトは大きいと感じます。
また、私がスマートジャパンで担当しているソーラーシェアリングの連載記事でも、太陽光発電事業に関わる問題として紹介しました。
資源エネルギー庁に不都合な事実が明らかに
これらの調査結果は、これまで「太陽光発電事業のコストは経年で必ず逓減していく」という前提を取っていたFIT制度やこれから導入されるFIP制度にとって非常に不都合な事実となるでしょう。
国内製造の太陽光パネルメーカーが撤退し続ける中で、海外からの調達に依存した状況では、今回のような事態に至ると資源エネルギー庁としても資材価格の引き下げに対しては打つ手がありません。国内メーカーが健在であれば政策協議もできるでしょうが、海外メーカーを集めて「日本企業に適正な価格で供給せよ」とは言えないでしょう。
しかし、だからといってこうした問題が存在しないかのようにFIT制度の調達価格やFIP制度の議論を進めても意味が無く、今回明らかになった問題を直視した政策対応が必要です。
これは何も、市場価格に応じて調達価格を引き上げる/維持するというだけでなく、国内製造を復活させていくということも検討すべきテーマです。
今回の調査結果を基にして、各方面に政策提言を行っていきたいと思いますが、この状況にどう向き合うかは2030年やその先に向けた日本国内の再生可能エネルギー導入拡大の行方を占うことになると考えます。
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