デービット・アトキンソン氏の人口減少論とデフレの解釈は誤りだと思う

これはあくまで体感なのだが、(数値で証明したわけではない)、氏の人口減少が日本経済停滞の原因→デフレ→賃金減少という方向性は、その相関方向が逆だと思う。

まず日本企業の従業員への賃金還元を行わない態度及びそれを助長する各種の規制緩和、構造改革→デフレによる日本経済停滞→賃金減少→若い人が子供を産む余裕がなくなる。→人口減少。

この相関性の方が私のように現場を20代、30代で生きてきた団塊Jr世代(就職氷河期世代、あるいはロスジェネ世代)としてはしっくりくる。

2000年代、我々が20代だった時に誰が政権を取っていたかと言えば、小泉竹中である。そして従業員の非正規雇用化の拡大。そして2008~2009年にはリーマンショック。これは僕らが20代後半に当たるもので、ちょうど結婚適齢期、子供を産む時期と重なる。そのとき、若者を使い捨てにしたのは政府や企業ではなかったか?

これがそのまま10年経過し今盛んにメディアを賑わせているいわゆる「中高年引きこもり」→中高年長期失業者の要因の一員だろう?

さらに消費税を97年に上げて自殺者を3万人に増やしたのは当時の橋本龍太郎首相だ。2014年の増税時からも、あらゆる景気指標は復活していない。

これでよく消費税が、経済の成長に影響しないといえるものだと思う。実は私は彼の本を読んで、深い感銘をうけたものだったが、ここへきて、どうも違和感を感ずるようになってきたのだ。

消費税は人を殺す。この現実がわからないのであれば、彼の言っていることは机上の空論であり、危険な理屈だと言わざるを得ない。

そもそも消費税はあってはならない税である。経済のスタビライザーとしての意味もない。

デフレで企業が身を守ることに走って、従業員をこき使った結果、人口減少が進んだのだ。

それから典型的な金融政策と財政政策を教科書の中だけの出来事と言っておられるようだが、彼は、財政政策の意味を理解していないと思う。おそらく、お金の発行の仕組みも理解していないと思う。

現在の金融緩和は日銀当座預金を増やすだけである。日銀当座預金は決済用資金である。しかしわれわれが使うのは民間の商業銀行が信用創造した銀行預金である。実は、金融緩和による日銀当座預金の増加と商業銀行が信用創造して発行する銀行預金の増加には因果関係はない。正の相関関係があるかもしれないといった程度だ。

デフレで民間支出が減っている今、市中にお金を増やすためには、政府が財政政策で政府預金を民間に支払って銀行預金残高を増やす以外に方法はないのである。

これは教科書どおりというか、現在の金融論の教科書は軒並み全部間違えているので、彼には理解できないのかもしれない。彼だけでなく、国民の99%は理解していないだろう。もちろん職業経済学者もである。

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