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長い、ながーい握手

2013年
「歌声広場」での出来事です。

一般居宅と介護居宅が一緒になったシニア・マンション。


スタートの10分ほど前に、アナウンスがありました。
『大食堂にて「歌声広場」を開催します。
みなさま、どうぞご参加ください!』

 少し離れたエレベーターホールのほうから、スタッフに押された車椅子のご婦人と目が合いました。

私をみつけると、微笑みとともに 左手をぐっと前へ延ばしたまま、会場へ入ってこられました。


ようこそ!
差し出された手と、しっかり握手。
・・・でも、その方は、ずっと私の手を握ったまま離しません(???)


強い力でした。
すべすべの綺麗な手でした。
他のお客様をお迎えする間、ずっとその方の手を握ったままでした。


30人ほどのみなさんがそろったので、
握り続けていたその手を 両手で包んで、そっとお膝に置かせて頂いてピアノの定位置に向かいました。


その方は、全く歌うことをされません。
話しかけても、何も言葉は返ってきません。
ただ、上半身を大きく使って、とても大きなうなずきを返して下さいます。 終了後、スタッフの方にお聞きしてわかったのですが、両足と右腕はご不自由で、「失語症」ということでした。

握る手の強さの感覚と、とても似合っていらした肩掛けの淡い緑色と、なぜか、忘れられない日でした。

この施設では 今も定期的にイベントをさせて頂いています。
コロナ禍になってから、、握手を求められても応じることはできないどころか、そばへ行ってお話をすることもできません。
充分な距離をとってマスク姿のままマイクでみなさんに語り掛けることしか。

本当は、手を握り、すぐそばでおしゃべりもしたいのに、お互いにぐっと我慢が続いています。

だから、かな。
ずいぶん前のこの出来事を思い出してしまいました。

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