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長野県 斑尾高原で冬季限定Barを営むオーナーにインタビュー
今回は長野県飯山市と新潟県妙高市にまたがる自然豊かな斑尾高原で、ひときわ異彩を放つBar「MiSTER DARUMA」を訪れた。
寒い雪山で、来訪者の心も体もあたためる人気店のオーナーに話をうかがった。
白銀の世界、斑尾高原
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JR長野駅に降り立ち、JR飯山線の電車に乗り継いで、ようやく飯山駅に近づいてきたぞ、と大きな車窓から外のまぶしい白銀の世界を眺める。この飯山線は途中、奥信濃の豪雪地帯を超えると、信濃川が見えてくる。
日本有数の大河に沿って進んでいくと、昔ながらの駅舎や素朴な街並みを楽しむことができる。飯山駅からバスに乗り換え山道をどんどん進んでいくと、私は「自然の中にまた、帰ってこれた」と心の中でつい呟く。
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ここは標高1,000mに広がるリゾート地、斑尾高原。冬は上質な100%天然雪のパウダースノーで形成されるスキーリゾートだ。森の中を滑ることができる"ツリーランコース"はコース数が日本最大級としても有名な場所。
また夏は高原エリア内に張り巡らされているトレッキングルートを活かしたトレイルランや、キャンプなどのアクティビティも楽しむことができる。
斑尾高原の豊かな自然に抱かれたBarへ
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斑尾高原は雄大な山々のパノラマに抱かれ、100軒もの個性あふれるホテルやペンション、ショップが点在する。その中の一つにBar「MiSTER DARUMA」がある。
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「こんにちは」と声をかけると、大柄な体格に反して、人懐っこい笑顔でオーナー兼シェフのコンさんが、妻のシノさんと共に出迎えてくれた。イギリス生まれで日本とオーストラリアで育ったため、流暢な日本語で挨拶してくださった。
有名な唱歌『ふるさと』にも唄われた“かの山”斑尾山の景色に見惚れていると、「ここは、四季によって景色の表情が変わるし、キツネや鹿などの動物もたくさんいるし、自然が好きな人にはたまらないんだよね。飯山駅からは新幹線も出ていて、東京までのアクセスも悪くない。自然と人間が上手く共存している場所なんです。」と教えてくださった。
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MiSTER DARUMAはオーナーのコンさんをはじめ、妻のシノさんが切り盛りする冬季限定のBarだ。(2024年12月現在)
建物は木造で丸い大きな樽のようなフォルムで、2階部分には大きめの二つの窓がある。外観は大きな二つの目を持つ、まさにダルマのよう。
店名について「ダルマはどんな願いも叶えてくれる縁起物。新しいスタート、夢という僕たちの状況にも当てはまる良い名前だと思ったんです。雪だるまにもダルマが入っているしね。」と無邪気に笑う。
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MiSTER DARUMAのこだわり
コンセプトは『訪れたどんな人も、お家にいるようなCozy空間で、美味しいものに囲まれながら楽しい思い出を提供する。』
斑尾高原スキー場によると訪⽇外国⼈来場者数は2022年度の5,000⼈から2023年度10,000⼈に倍増、全来場者のうち20%を占める状況となっている。
そのため日本人だけでなく、オーストラリア人をはじめとした多くの外国人が訪れる場所でもある。ところが、スキー場の近くには飲食店が少ないのが現状だ。
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さらにコンさんは「日本は、ヴィーガンやベジタリアン、グルテンフリーに対応したお店がまだ少ない。だから、 オーストラリアなどの国から日本に来て、日本中を回っても、何にも食べられなかったという人がいる。
けれど、こんな田舎のスキー場のBarに来たら、やっと日本食を食べられたよって、喜ぶ人もいるんです。」と話す。
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店に入ると、灯りがほんのり調整されていて、より木の温もりを感じる。そして店内各所に、日本の文化を象徴するコレクションや小物が飾られている。
「僕はもともと木の建物が好き。レコード回してるのもとても好きだし、ヴィンテージ系の飾り物とかいろんなものが置いてあるのも好きです。」コンさんの好きなものがギュッと詰まったかのような内装である。
たくさんのものが置いてあるが、不思議とファッショナブルで統一感があるのは、オーストラリアの美術系大学で芸術センスを磨いてきたからだろう。
「Barだったら明るいよりも、少し暗い方が好きです。暗い方が気持ちが落ち着くと思うから。人は照明が明るすぎると、そんなにリラックスできないと思います。来た人みんながCozyな空間で、居心地の良さを感じで欲しいです。」と穏やかにこだわりを語る。
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食事に関しても訪問者への配慮を忘れない。オーストラリアでのシェフ経験を生かし、創造的な調理方法に挑戦する。
「グルテンフリーやビーガンなどのお客さんが多いから、小麦粉や乳製品も一切使っていません。素材の味を生かしながら、日本人だけでなく外国人にも楽しんでいただける日本食を日々試作し、提供しています。」とのこと。
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提供されたお食事をいただくと、彩鮮やかに盛り付けられ、味付けもしっかりしており、カクテルやビールなどのアルコールとよく合う。
「地元の食材だったり、今あるもので最大限、良いものを提供することが僕のプライド。」と語るコンさんのメニューには、自身が絶対に美味しいと思うものが、ひとつひとつ厳選されている。
開店時間を迎えると、外国人や日本人のお客さんが続々と入ってきて、一気に賑やかになる。まるで海外にいるかのような感覚。
しかし不思議と日本人の自分が浮いているような感じはしない。たまたま席が近くなったお客さん同士で交流が始まる。
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「自分の家にいるような空間を目指しています。たとえ一人で来ても、どんな方にも居心地の良さを感じてもらえるように。
うちの面白いところは、DJが来たらクラブのようにとても盛り上がったり、オーストラリア人の家族が来たら、少し騒がしめのパブみたいになったり。
かと思えば、一人でふらっと来たり、家族みんなで落ち着いてるテーブルがあれば、静かなジャズをかけて、他のテーブルも落ちついて食事する日もあります。みんな自然と周りの人と同じ空気感で過ごすことが多いんです。
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東京のお店だと、コンセプトがきっちり決まっているところが多いから、お店に合わせて、入ってくるお客さんの雰囲気もだいたい決まってくる。
でもうちは入ってくるお客さんによって、お店の雰囲気が1日1日変わる、そこが面白いんです。」その日のお客さんがMiSTER DARUMAの空間を創り上げる。
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心地よく、ここでの良き思い出を作れるように、コンさんご夫婦とスタッフである仲間たちが心をこめて一人ひとりに接しているからこそ、成せることなのかもしれない、と思う。
コンさんの人生で大切にしていること
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人生で大切にしていることを尋ねると「僕の人生で一番大切なのは、妻のシノ。家族が大切です。」と迷いもなく答える。その後少しだけ間をおいて、言葉を紡いでくださった。
「根本的なところで言うと、僕は自分らしくいることを大切にしています。クリエイティブなところが強みで、それを使いながら人を喜ばせたり楽しませることが好きです。
だから、今している料理も自分でクリエイティブに作って、誰かが食べてエンジョイしたら、もう一瞬で欲しかったループができあがるんです。
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でもまだまだ、自分自身をわかっていないところもいっぱいあります。どんなタイミングでチャンスがくるかはわからないし、自分に誇りを持った状態でい続けるために、今はMiSTER DARUMAに全力投球しています。」くしゃっと笑う瞳には、優しさと強い意志がこもっていた。
取材後記
穏やかに、真っ直ぐな言葉で取材に応じてくださったコンさん。斑尾高原もMiSTER DARUMAもコンさん自身も、まだまだ未知数な可能性を秘めています。
コンさんのクリエイティブな力と、人を喜ばせたいという思いが相まって、MiSTER DARUMAはこれからも笑顔が溢れる場所であり続けるでしょう。
今年の冬は、日本の自然豊かさを再発見し、美味しい食事や異文化交流を味わいに、斑尾高原にあるMiSTER DARUMAを訪れてみては。
Mister DARUMAの基本データ
<住所>新潟県妙高市樽本 1101-78
<営業時間>16:30〜深夜
<休業日>夏季
<駐車場>あり
アクセス
<電車>北陸新幹線またはJR飯山線「飯山駅」からタクシーで約30分
<車>中央自動車道「豊田飯山IC」から約10分
<バス>バス停プラザ前/長電バスから徒歩0分
バス停斑尾高原ホテル/長電バスから徒歩2分
取材・文:ふたば / 写真:コンさん・シノさん・ふたば