読書感想文「夜が明ける」
本について
■タイトル:夜が明ける
■著者 :西加奈子
■発売日 :2021年10月20日
■あらすじ:15歳の時、高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。 普通の家庭で育った「俺」と、母親にネグレクトされていた吃音のアキは、 共有できることなんて何一つないのに、互いにかけがえのない存在になっていった。
大学卒業後、「俺」はテレビ制作会社に就職し、アキは劇団に所属する。しかし、焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、少しずつ、俺たちの心と身体は壊れていった……。
思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描きながら、 人間の哀しさや弱さ、そして生きていくことの奇跡を描く、感動作!
※「夜が明ける」特設サイト(新潮社)から引用
著者の西加奈子さんについて
今(2024年)からちょうど10年前の2014年に「サラバ!」を読んで、とっても衝撃を受けたことを覚えています。
小学生くらいの時は結構本を読むことが好きだったけれど、2014年の僕は大学生でほとんど本を読むことが無くなっていました。
「サラバ!」は確か直木賞を受賞した作品で、本の表紙の絵もインパクトがあったので何となく購入したのだと思います。
「サラバ!」は再び僕に読書の楽しさを教えてくれた本で、今でも大切な本の1冊です。
それ以降、西加奈子さんの作品は(全部では無いですが)ちょこちょこ読んでいます。
当然テイストは本によって違いますが、「どの本にも人に対する優しさがある」というのが僕の西加奈子さんのイメージです。
描かれるのは、一般的にはちょっと変わった人だったり社会的には成功者と呼ばれるような人ではないけれど、どんなキャラクターも優しさをもって愛おしい存在として表現されているな、と。
「夜が明ける」の感想
今回の「夜が明ける」という作品にも「優しさ」があります。
ただ、読んでいてかなり苦しくなる場面がありました。
ネグレクトや差別、貧困、ハラスメントなど社会的に容易に解決できない人の暗い部分を描いているためですが、とてもリアルで胸に刺さるからこそ、「なんでこんなの読んで暗い気持ちにならなければいけないんだ!」と途中読むのを辞めようかと正直思いました。
※ここから先はエンディングにも触れますので、まだ読んでない方はご注意を。
ストーリー的にはエンディングで全てハッピーになる話ではありません。
この話の後にどれだけ良いことがあったとしても、登場人物たちが経験したことは無かったことには必ずならないからです。
それでも、最後に西加奈子さんからの「救い」とは言えないほどかもしれないけれど、「優しく強いメッセージ」が込められています。
だから僕は最後まで読んでよかった、と思いました。
途中、話が辛すぎて「もう物語もあとちょっとしか残ってないのに!こんな状態で大丈夫なの!?」と心配になっていました。。。(笑)
誰にでも辛いことが起きます。
↑言葉で簡単に書いてしまう事ができますが、現実の世界では本当に、本当に辛いことが起きます。
その形は人それぞれ違います。
だれの身にも辛い時間があります。
私もあります。過去にありました。これからの人生でも、きっとあるでしょう。
あなたの人生にも辛い時間があるでしょう。
だからこそ、誰かに助けてもらって、誰かを助けようと努力して生きていくことが必要だと。
この本を読んで受け取ったメッセージです。
物語の中盤は辛いので、全部を通して読み返すか分かりませんが、最後の部分のメッセージはまた読み返すために本は「サラバ!」の横に置いておきます。
おわり