就活の本質は誘導尋問

 私は社会学部でフィールド社会学を専攻する文系だ。
 したがって、就活では自動的に営業職を志望することになる。
 いやなんで?
 
別に生きてきた中で「俺営業になりてぇなぁ~」なんて思ったことがないし、企画など、他の職種も経験してみたい。しかし面接を受けると事ある毎にこう問われるのだ。

「営業に興味があるんですね!」

 就活市場において、「理系は研究職やエンジニアに、文系は営業職になるのが普通」という謎のシステムがあり、これから逸脱する学生に待っている運命は苛烈だ。
 例えば文系の学生が、営業ではなく総務や人事になりたいとしよう。結論から言うとなれないのである。理由は次の動画が詳しい。

 以前メーカーの集団面接で、このような学生と同席したことがある。
「私は現在では営業職を希望していますが、ゆくゆくはこの経験を踏まえて人事になりたいと考えています。」
 珍妙な言い回しに感じるだろう。しかしこうでも言わないと受からないのだ。
 面接後、私は彼と話す機会を得た。彼はこう言っていた。
「営業?なりたいわけないでしょ。競争するなんてまっぴらごめんだ。でもこうでも言わないと人事になって営業から逃れる術はない…。」
 逆に、理系学部生が営業を志望する際も同様である。実際先ほど挙げ動画に出演する竹内氏も、「起業のきっかけは理系就活に失敗したからだ」と語っている。

 馬鹿げた話である。そもそも大学生は「営業になりたいから文系」というように文理を決めるわけではない。
 それなのに、「なぜ文系なのにデザイナーになりたいんですか?」「理系なのになぜ営業になりたいんですか?」などと訊かれる筋合いは全くないはずだ。
 さも「入りたい企業を前提に、大学や学部を選んでいるはずだ」と言わんばかりのシステム設計には非常に腹立たしいものがある。こちらは学生であり、学びたい学問を選んでいるまでで、入りたい企業があるからそれを専攻するわけではない。どこまで横柄な勘違いをしているのだろうか。活躍させたいのなら、活躍できるスキルを教育するのが企業の責任である筈だ

 しかし、現実の面接で「実は企画になりたかったんですけどねぇ~」とでも言おうものなら一発で落とされてしまう。また、企画などの求人が少ない職種に限定して探す就活をすれば、最悪内定がないまま卒業する可能性もあるのだ。
 こういうような構造があり、文系学生は営業志望と仮定して就活を進めないと苦境に立たされる現実がある。人事は営業を心の底から興味があるかのように誤解しているかもしれないが、そんなのは選択圧をかけられ誘導されそう言わされているだけに過ぎない。営業なんて微塵も興味がない。

 我々に興味があることは、ワークライフバランスだけだ。


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