
【企業診断の勘所】「付け足しの美」と「親子の夢」
僕は、企業経営を支援することを仕事にしています。
長年、この仕事をしていると、自分なりの企業診断の勘所のようなものができてきます。
付け足しの美
僕は、しばしば長く利用されている古い工場を訪問することがあります。
現地に到着すると、同行した若手が一言発します。
「いやー、老朽化してますね」
でもですね。僕はそのような工場が好きであり、高く評価しています。
中小企業の収益力からすると、新しい工場に全面的に建て替えすることは、借入負担が大きく、将来大きなリスクが伴います。
中小企業は、受注の波が大きく、受注が減ったときに、工場建築資金の返済継続が厳しくなることが多々あります。
工場の建て替えでなく、昔からある工場を使いながら、付け足し付け足しで、あまり建築費用の掛からない方法で工場を増築している企業に、業績良好先が結構あります。
これは、工場に限ったことでなく、他の業種でも同様です。迷路のような旅館がそうです。
これを僕は ~付け足しの美~ と勝手に名付けています。

親子の夢
親から子に事業承継する際、親は、きれいな工場にして承継したいとの思いがあります。
経営陣である親子から、そのような相談を受けることがあります。
未来はどのようになるかはわかりません。
でも、現状よりも借入金返済負担が相当増えますし、今後の受注に波があることもほぼ確実なことです。
もしかすると、将来、返済猶予の事態になり、親子そろって、バンクミーティングに出席して、金融機関に頭を下げることになるかもしれません。
工場新築の設備投資は、大変難しい判断です。
でも僕は、親子の夢を応援したいです。
僕は、経営陣である親子には、将来起こりえることをお話しして、今後相当の覚悟が必要になるとお伝えしています。
工場新築祝いの際は、笑顔でお祝いして、「社長、これまで以上に頑張っていきましょうね」と力強く握手しています。
企業診断の奥深さ
「工場が古いが業績の良い企業」、「工場がきれいだが業績が厳しい企業」。
企業の現状は百社百様であって、その企業の未来についても様々です。
未来予想を確実にすることは不可能です。
僕は、親子の夢を素晴らしい形で実現できるように、ずっと近いところにいて、サポートを続けるようにしています。
企業診断の仕事は奥深いです。