【独学精神医学#5】統合失調症とは?原因から症状・治療法まで徹底解説
「統合失調症」という言葉をよく耳にするようになったと感じるのは、私だけでしょうか?
うつ病、不安障害に並んで発症数が多いとされる統合失調症。調べてみるとなんと日本で約80万人(100人に1人弱)も発症しているということが分かりました。
今回は、そんな統合失調症について、病因や診断基準から症状の特徴・治療法までを網羅的にまとめてみました。
このような基本的な部分をまとめていますので、どうぞご一読ください。
基本情報
統合失調症はもともと「精神分裂病(Schizophrenia)」という名称だったのですが、1970年代に「統合失調症(Schizophrenia)」に改名されました。
これは、「精神分裂病」という名称から根付いていた不合理な偏見や差別をなくし、患者の社会参加に不都合を生じさせないために行われた変更です。「統合失調症」という名称は、精神機能の分裂よりも「統合の欠如」を強調しています。
第一級症状として代表的なのは、思考化声、話しかけられる形での幻聴、自分を非難する内容の幻聴、作為体験、思考奪取及び思考干渉、思考伝播、妄想知覚、感情や意欲のさせられ体験の8つの症状です。
難しい言葉がたくさんあって、よくわからないですね(笑)
ある本では、統合失調症を一言で次のように表現しています。
具体的な症状の詳細に関しては、後ほど説明しています。
また日本、世界ともに一般人口の0.7~0.8%が発症しているとされています。発病率に男女の差はありませんが、男性の方が発症時期や症状の経過が早く、治りもよくない(転帰が不良)といわれています。また、男女ともに15~35歳くらいでの発症が多くみられます。
発症の原因とされるもの
発病危険率が一般人1%であるのに対し、第一度親族に統合失調症の方がいる場合は10%、さらに両親が統合失調症の場合は50%にも引きあがることから、遺伝的要因が関与していることはほぼ間違いないとされています。一卵性双生児の罹病一致率が50%、二卵性双生児の罹病一致率が17%であることからも遺伝的要因の関与が確認できます。
また、心理社会的要因ももちろん発症に関与しています。遺伝的な素因を持つ人が環境ストレスを被った場合に発症するとされる「素因・ストレスモデル」が当てはまるとされ、幼少期の家庭環境や、両親との人間関係の障害が環境要因になり得ます。また、親の過保護による支配的環境、夫婦間の断裂などにより慢性的葛藤がある場合、子どもの自律性が妨げられ発症につながることもあるといわれています。
加えて、ストレスフルな出来事、都市部での生活、社会的孤立、薬物乱用(特に大麻や覚醒剤)などの環境要因や、妊娠中の母体の感染症や栄養不足、出産時の合併症などが胎児の脳発達に影響を与えることが原因で、統合失調症のリスクを増加させるともいわれています。
診断基準と病型の区別方法
統合失調症は、2000年にアメリカ精神医学会用語統計委員会により発表された「DSM-Ⅳ-TR」という基準を用いて診断されることが多くあります。
以下に、その診断基準をまとめました。
※自閉症などの発達障害をもともと患っている場合などの条件や、基準の詳細・例外は一部省いております。ご了承ください。
これら➀~⑤をすべて満たす場合、統合失調症と診断されます。
また、統合失調症は症状によって以下の5つの病型に選別されます。
統合失調症に見られる症状
統合失調症には、様々な症状が幅広くみられます。
◎思考障害
話のつながりが悪くなり、高度な場合一貫性や論理性を欠く滅裂思考になります。人格の解体が進むと、関係のない言葉を羅列する「ことばのサラダ」や、全く新しい言葉を作り出す「言語新作」などがみられます。
また、ふと知覚したものに対して突然特別な意味づけをする「妄想知覚」、なんの動機もなしにふと頭に浮かんだものを確実なものだと確信する「妄想着想」、何かが起きるかもしれないという不安感に襲われる「妄想気分」といった一次妄想がみられます。これは統合失調症特有の症状です。
また、他人が自分に害を加えているのではないかという「被害妄想」、自分に関係のないものをあるものだと確信する「関係妄想」、食べ物や飲み物に毒を盛られ毒殺されると考える「被毒妄想」も生じます。これは二次妄想とよばれます。
◎知覚障害
どこからか他人の声が聞こえる、誰かが話し掛けてくるというタイプの幻聴を多く発症し、その発言もとは直接・テレビ・ラジオからなど様々です。内容は自分に関する噂や悪口、命令などが多く、自分の内面の思考や考えが外部から声として聞こえるように感じる「思考化声」も、統合失調症の一級症状として認められています。
◎感情障害
また統合失調症の特殊な症状として、以下の5つの感情障害があります。
◎行動障害
行動障害は、統合失調症「緊張型」に特にみられる症状です。
言動に一貫性がなく、突然興奮した行動をみせたと思ったら突然行動が停止し、極端な場合にはあらゆる刺激への反応も全く示さないで行動が止まってしまう緊張病性昏迷などがあります。
昏迷に関してはこちらの記事でも触れておりますので、よかったら見てみてください。
◎自我障害
離人感や感情や意欲のさせられ体験などの自我障害も、極めて重要な特徴です。一般に知能障害や意識障害は出現しないとされています。
離人感、させられ体験の具体的な内容はこちらにまとめております。
一言でいえば、離人感は自分が自分であるという実感が湧かない感覚、させられ体験は他人に操られている感覚を持ちます。
症状の進行過程
統合失調症は、発症し始めた段階の「病初期」と、症状が長期に亘って続いた状態の「慢性期」で症状が異なります。
グラフで表されることもしばしばあります。このグラフの横軸は時間軸、縦軸の「エネルギー」は高ければ「陽性症状」、低ければ「陰性症状」と解釈していただければと思います。
また、症状の度合いの変化は具体的には3つのパターンに分けられます。
➀は解体型、➁は緊張型、➂は解体・緊張・妄想型に多いとされています。
治療法
統合失調症の患者は、感情、思考、動作に関与するとして知られる神経伝達物質ドパミン(ドーパミンとも)が異常に放出されていると考えられています。そのため、以前まではドパミンを抑制するハロペリドールやクロルプロマジンなどの定型抗精神病薬が、薬物療法として使用されてきました。
しかし、これらは陽性症状の抑制には効果があるものの、陰性症状を悪化させたり、薬剤性パーキンソン病の誘発といった問題性があると指摘されたため、現在ではドパミン以外の神経伝達物質にも作用する非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなど)の使用が主流となっています。
また薬物療法以外にも、以下の治療法が有効とされています。
もしもご家族や身近に統合失調症の方がいれば、これらへの参加も検討してみてください。
まとめ
統合失調症について、基本情報から判断基準、具体的な症例、治療法などをまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?
冒頭でも触れましたが、統合失調症は100人に1人弱が発症している、非常に身近な精神疾患です。
遺伝的要因はもちろんですが、学校や会社などの社会的要因・家族関係などの環境的要因が引き金になることがほとんどですので、慢性的なストレス環境に置かれてしまっている場合は一刻も早くそこから抜け出す手段を探す、ということをお勧めします。
また周りに統合失調症を患ってしまった方がいれば、その症状が悪化しないように、長期的な視点を持ちつつサポートしてあげましょう。現在はネット上での情報も溢れていますし、まさに私たちが使っている「note」では統合失調症の経験を投稿している方もたくさんいます。そのようなツールをお勧めするだけでも、患者本人が共感できる部分が見つかり、症状の緩和につながるかもしれませんね。
どうか一人でも多く、統合失調症に縁のない生活が送れますように。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
お恥ずかしながら私は、今回の記事を書くまで統合失調症がどんなものなのかはっきり理解しておりませんでした…。調べる過程で色々な症状を知り、思った以上に深刻な疾患だと驚いたのが事実です。
だからこそ、このように記事の作成を通して一つの精神疾患にじっくり向き合う時間を作るのは、やはり必要な過程だなと改めて実感しました。
他の精神疾患についても同様にまとめていけたらな、と思っているので、ぜひ他の記事も覗きに来ていただけるとありがたいです!
それではまた、次の記事でお会いしましょう👋
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今回参考にした本はこちら ↓
精神医学の基礎が初心者用に分かりやすくまとめられていて、とっても愛用させていただいてます!少しお高いですが値段相応のおすすめ本です。
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