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前編・バルジについて本気出して考えてみた

バルジについて本気出して考えてみたら
意外に深いところまで気が付いた
君もバルジについて本気考えてみてよ
あとで答え合わせしよう
どちらがくだらないかな?

原曲:ポルノグラフィティ
「幸せについて本気出して考えてみた」

序編に続く記事のため、前略。

さて、ようやく本題に入っていこう。

バルジといえば、何よりも謎に包まれているのはやはり、その正体だろう。

しかし、急がば回れ。ヤツの正体それ自体を考察する前に、まずはシリーズ本編単体で明らかになっている事実、およびそれを根拠とした可能性の高い予想事項について、今一度ここでは羅列し、分析と推測を進めていこう。

ただし、このパートに入るにあたり、事前に謝っておかなければいけない点がある。

現在、大変恐縮ながら家庭の諸事情等によりHiGH&LOW THE MOVIEシリーズを再視聴することが困難な状態にあり、ここからの事実確認パートにおいて、一部台詞や時系列等に関する誤認が含まれる可能性がある。

これは本来なら執筆者としてあってはならないことであり、先んじて深くお詫びする。深刻なものがあれば、読者の方々から遠慮なくご指摘いただければ幸いである。

では、改めて先に進もう。

【EOSでのバルジ】

・サンキングス刑務所における、(恐らくは)看守クラスの人間からジェシーへの「バルジがお呼びだ」のシーン

記念すべき「バルジ」という単語の初登場だ。当時は固有名詞の不自然さや突拍子のなさから「あるじ」であるという説の方が自然とされ主流だったのも、今となっては懐かしい。たしか北九州フィルムコミッションに台本を観に行った人がいて、そこで「バルジ」の名が確認され、TLが騒然としたのを今でも鮮明に覚えている。

このパートの考察は、一見すると詳しく語らずとも簡単だ。サンキングス刑務所において囚人、それもジェシークラスの凶悪囚を自由に出所させる権限を持っていること。その出所には、ジェシーがある指令(仕事)を確実に遂行するのが条件として伴っていること。このあたりは容易に思いつくだろう。

加えて言えば、刑務所内の重役クラスが秘密裏にジェシーを呼び出したりするのではなかったことから、少なくともサンキングスでは一定以上の職員まではバルジの名は認知されているようだ。

特にこっそり伝えているような様子でもなかったことから、あるいは同所内においては管理者・囚人の側を問わず、バルジの存在は自分たちの上に君臨する最高権力者として、常識なのかもしれない。

いずれにせよ、名前自体が極秘、知る者すら限られる、というレベルのものではないことがここだけでも窺い知れる。

ただし、出所していたプリズンギャングの面々が、ジェシーの今回請け負った「仕事」について、どこまでの情報を得ていたか。その正確なところまでは、作中では不明だ。もしかしたら、単に金払いのいい仕事ということで、詳細は聞かずに引き受けただけという可能性もある。

その一方、FMでの反応から、少なくともフォーはバルジの名前を事前に知っていたか、特別扱いで一人だけジェシーから聞かされていたのは間違いない。

また、マイティとの合流と報酬分配のシーンでバルジの名前をジェシーが出したときの動揺から、フォーにとっては依頼主バルジの名は出すだけで危険を伴うタブーであり、外部の人間には、特に彼を新たなメンバーとしてあたたかく受け入れてくれたマイティには明かすべきでない、という考えがあったのかもしれない。

とはいえ、プリズンギャングたちの出所後という短期間でバルジが絶対的な権力を握った可能性は極めて低いため、素直に考えればサンキングス関連の元・現囚人のほとんど(少なくとも一番危険であり上位に君臨していたジェシーらの一派)は全員がバルジの存在を認識していたのだろう。

つまり、ジェシー・フォー・ブラウンらプリズンギャングは初めから「バルジの依頼」ということを理解した上で、DOUBTに加勢し、傭兵のような立ち位置でSWORDと戦った、ということになる。

もっとも、プリズンギャングでは対外的にも明らかにジェシーが別格であるため、バルジから彼一人にだけ個別に明かされた極秘情報がある可能性も非常に高い。

特に、後述する「モグラ(潜入捜査官・スパイ)の炙り出し」といったデリケートな依頼などは、ジェシー単独での極秘任務だったのだろう。あるいは先述の通り、バルジからの秘密情報を信頼するフォーにだけ共有していたことも考えられる。

では、加勢される側の林蘭丸およびDOUBTがバルジの存在を知っていたかというと、これはもう完全に推測の域になってしまう。

まず、少なくとも側近の高野・平井の2人およびその他モブについては、サンキングス刑務所で最も危険とされているプリズンギャング一派の存在すら知らなかったため、バルジの名前も認知していなかったと考えるのが自然だ。

湾岸地区の裏社会では一定の存在感を持っているであろうDOUBTの二大幹部が知らない存在ということは、バルジの知名度はあくまでもSWORDや他地域(リトルアジア他?)の裏社会、または刑務所など直接掌握している一部エリア・施設内や警察などの権力機構に限られているのかもしれない。

この推測については、(非戦闘員を含めて)組織の規模や特性、あるいは過去の経歴から考えて、比較的広範な情報ソースを持っているはずのマイティが同様にバルジの名を知らなかったと見られることも、根拠の一つだ。

では、当の蘭丸はどうか?彼はジェシー移送の件のように、自らが収監されてはいないサンキングス刑務所の内部情報についても充実した情報網を持っていることが伺える。したがって、少なくとも蘭丸だけはバルジの名前自体は知っていたと考えるのが自然だろう。

元より対立していたラスカルズを滅ぼすだけでなく、続いてSWORD全てを討ち支配するという彼の非常に強気な宣言も、自身の野心や暴力性に加えて、バルジのTakeover planの一環としての支援・後ろ盾があったゆえなのかもしれない。

さらに想像を膨らませる。ここで注目したいのが、ROCKYとのタイマンに蘭丸が完敗し、個々に無双するマイティ勢を除いては敗色が濃厚になった黒白堂の戦いに突如乱入してきた、九龍グループ・善信会だ。

詳細は後述するが、彼ら善信派は九龍の中でも特にバルジと強い繋がりがある可能性が高い。そして、ジェシーにSWORD地区荒らし・その一環としての黒白堂への加勢を依頼したバルジが、何らかの方法で決戦の状況を逐一把握していた可能性もまた、極めて高い。

したがって、善信会の前線への投入は九龍グループだけの意向ではなく、その上位または背後にバルジの意思が働いていたとも考えられないだろうか。

尚この際、劉がただちにICEへ情報を送ったため、マイティとジェシー・フォー(およびKOされずに無事だったプリズンギャング?)はいち早く撤退。善信の乱入による混沌状態には巻き込まれなかった。

劉とICEの交流が劉のマイティ離脱後も続いていたことから、即座に注意喚起の電話をかけたものと見られるが、ジェシー個人として「黒白堂の戦いが長期化するか、情勢が不利なようであれば九龍勢力を投入して制圧する」という情報までを把握していたかどうかは……さすがに不明か。

さらに深読みすれば、善信によるSWORDへの服従命令、それにコブラがNOを突きつけたことによって「大人の喧嘩」の口火が切られたこと、電光石火のごとく開始されたSWORD壊滅計画までも、事前にバルジが全ての絵図を描いていたとしてもおかしくない。

バルジはおそらく、SWORDが九龍に素直に服従することはなく、従って裏社会の徹底的なやり方=大人の喧嘩を用いて完全屈服させる展開になることをたやすく読めていたのだろう。

さらに気になるのは、蘭丸がまるで子供のように笑いながら善信の足元に縋るシーンだ。ここはEOSの劇中でも特に解釈が分かれ、蘭丸のバックボーンとも相まって非常に想像を掻き立てられるシーンではあるのだが、折角なので本稿では「同じバルジサイドから援軍が来てくれた」と蘭丸が思い込んでいた、という説も提唱してみたい。推測の上に推測を重ねた論ではあるが、可能性としてはゼロではないだろう。

さて、ここで内容は前後するが、九世会長が逮捕の直後に釈放された件についても触れよう。これは単純に考えれば、ほぼ間違いなく警察内の権力層に存在する九龍サイドの内通者、または圧力を掛けられる立場の政治家などの工作によるものだろう。

ここからは少しFMの内容とも絡んでくるが、バルジの権力は特に警察機構上層部に強く及んでいる可能性が高いと見られる。

彼がジェシーに命じた「モグラを炙り出す」という仕事を、「他の警察権力者と同じく、九龍(バルジ)側に属するフリをしながら、グループ壊滅のための極秘活動をしている警官(潜入捜査官)を発見する」ことである、と素直に解釈してみよう。

すると、逆説的にこの国(もしくはSWORD+周辺諸地域のみ?)の警察機構のほとんどは、既にバルジの掌握下にあることになる。劇中某キャラの言葉を借りれば、警察内の、あるいは政界を含めたほとんどの権力は九龍のみならず、最大の闇のフィクサー・バルジと「ズブズブ」だということだ。だからこそ、FM最後の逮捕シーンでも西郷の出現と電撃的な逮捕劇があれだけの動揺を招いたのだろう。

したがって九世の釈放についても、バルジの力が強く働いていた可能性が極めて高い、ということになる。言い換えれば、あれだけ九龍の各会長たちが危険視し血眼になって探していたUSBの存在、その内容の公表によって九龍グループが被る打撃など、バルジにとってはちゃぶ台返しをするのも容易なほど小さなことに過ぎなかった……ということなのかもしれない。

あるいは、EOS公開直後から劇場リピート勢によって指摘があった、USBの中身の一部はロックが掛かっておりアップロードされずに終わっていた問題。それすらもバルジの手の内なのかもしれない……というのは、流石に考えすぎだろうか。


いずれにせよ、こうして仔細に検証してみると、バルジの計り知れない権力は、EOSの時点からあらゆる場面で有形無形の影響を与えていたことが、改めてお分かりいただけただろう。

ここまで分析してきたEOSでのバルジの動き、およびそこから推測される点は以下の通りまとめられる。

・ジェシーを「仕事」の依頼と引き換えに自由に出所させられることから、サンキングス刑務所最高位者(所長?)を上回る権力を持つ。(確定)

・バルジの名前は少なくとも看守以上の刑務所職員の間では常識に近く、タブーではない。(ほぼ確定)

・刑務所外でも、元サンキングス組の劇中プリズンギャングはバルジの名前を知っていた可能性が比較的高い。SWORD地域で暴れる、またそれに付随してDOUBTに加勢しラスカルズを壊滅させる仕事がバルジからの依頼であることを知っていたかまでは不明だが、知っていても不自然ではない。(濃厚)

・DOUBT側では、平井と高野はプリズンギャングとの邂逅時の反応から想像するに、バルジの名前を知らなかった。(ほぼ確定)

・また、マイティの面々もジェシーから明かされるまでバルジの存在を知らなかった場合、バルジの名前や権力は湾岸地区にまでは及んでいない可能性がある。(推測)

・蘭丸がバルジを知っていたかは明言されていないが、彼の各刑務所を横断する裏の情報網や凶悪犯としての知名度(格の高さ)によって、知っていても不自然ではない。(濃厚)

・蘭丸のSWORD全体への乗っ取り宣言は、バルジがバックに付いていることもその強気さの一因になっていたかもしれない。(多分に推測)

・九世の短期間での釈放には、警察機構等におけるバルジの権力が働いた可能性が高い。(濃厚)

・上述項から逆説的に、バルジの権力はUSBから公表された内容、ならびに九龍グループ総会長逮捕程度の刑事事件であれば、容易に覆すことが可能なほど強い。(濃厚)

・九龍グループの各会長、または久世を含めた全員がUSB探しを重要任務と考えていたことから、バルジによる上述の「覆し」はもともと九龍から期待されていたものではない。(推測)

・よって、バルジの権力の強大さ、その全貌は九龍側でも把握しきれていない。(推測)

・黒白堂の戦いの推移をバルジはどこかで見ていた可能性がある。(推測)

・それにより、善信会へ戦場への乱入、およびSWORDを服従させる指令を下した。(多分に推測)

・ICEが劉からいち早く連絡を受けたことで、マイティとジェシー、プリズンギャングは撤退。このことから、劉の連絡は「善信が動いたからその場を離れろ」、または「善信の乱入は決してDOUBT軍への増援を意味しない」などの内容だったと思われる。(濃厚)

・一方の蘭丸は、タイマンでのダメージで意識が朦朧としていたこともあり、善信会長を同じバルジサイドからの手助けだと思い込んだ可能性があるが、結果としてあの末路を辿った。(多分に推測)

・SWORD側が善信の服従命令にNOを突きつけることを読んでおり、その情報を受けて即座に、または同時並行でSWORD壊滅計画を裏から指示・統率した。(多分に推測)

概ねこのような感じになるだろうか。


さて、それではいよいよ、バルジの名前と動向が本格的に絡んでくるFINAL MISSION(FM)の考察に進もう。

【FMでのバルジ】

・源会による雨宮兄弟への狙撃。それを西郷がかばい菊池と共に撤収。それを発見したジェシーの「西郷、ねえ……」

まず、源による琥珀九十九・雨宮兄弟への狙撃についての再確認から。こちらはバルジの指令というより、シンプルに九龍全体のSWORD壊滅作戦の一環だろう。

むしろそれ以前に、コンテナ街の抗争で獅子奮迅の活躍を見せて戦況を一変させ、完全武装した上園会を壊滅に追い込み、USBの死守と公表を達成した雨宮兄弟は、九龍として排除すべき最大の障害、最重要の殺害標的と見られていたと考えられる。

また、ムゲン事態からの仇敵であり、暴走時代からFUNK JUNGLEの決闘を経て再び敵に回った琥珀・九十九についても、同様に重要ターゲット扱いだっただろう。

したがって、源の狙撃はシンプルに雨宮兄弟の命を奪おうとしたものであり、「モグラの炙り出し」とは無関係、単に暗殺部隊による障害排除だと素直に考えてよい。そのため、西郷が乱入して凶弾から広斗をかばい、殺害に失敗したことは、源にとっては単に想定外だった可能性が高い。

では、それを見て潜入捜査官が西郷であることをついに突き止めたジェシーはどうか。劇中では、彼が狙撃ポイントを見張っていた理由は不明だが、警察と琥珀九十九・雨宮チームの内通に既に何かのきっかけで気付いており、源の狙撃に際してその張本人が現れる、と読んでいた可能性は高いだろう。

また、このシーンでは続いて藤森会長も姿を見せている。藤森は善信派であり、後述する「バルジが手を引いた」際に退室した一人だ。そのため、他の善信派と同等かそれ以上にバルジとの繋がりが強く、「スイーパー(掃除屋)」担当であることからも分かる通り、特に隠密行動に長けている。そのため、九龍側からジェシーのサポートを行っていたのだろう。むしろ、源に死体処理などの後始末を依頼されたか、でなくとも動きを察知したことで、藤森とジェシーを同行させたのであっても不思議ではない。

ここで西郷を見つけたことで、今回ジェシーがバルジから受けた「依頼」はひとまず終了した模様。彼は報酬を受け取ることになるが、その前にどうしても気になるのが、潜入捜査官を「見つける」ことを依頼していても、それを「消す」ことは含まれていなかったことだ。ジェシー単独では困難とバルジが判断した可能性もあるが、結果として西郷はFMのラストシーンまで無事に生存してしまっている。

西郷の生存と、彼が最終的に目的を(九龍完全壊滅にまでは至らなかったとはいえ)達成したこと。これも全て、バルジの計画通りだったのだろうか?

だが、広斗を狙撃から庇ったことで西郷の裏切りが発覚したということは、つまり最悪の場合(もしくは最良の場合?)その場で西郷は死亡していた可能性もあるのだ。

全てに無理やり説明を付けようとすると、たとえば以下のようになるだろうか。

・バルジは既に警察機構の大部分、特に権力層を中心として掌握し傀儡化しているが、一方で九龍の壊滅を目論む一派の存在も察していた。その一派には西郷以外にリーダー格が別に存在していた可能性、加えてその人間は九龍から距離を取っており未だ察知されていないというパターンも考えられるが、少なくとも九龍側からの情報漏洩を察知したことで、「モグラ(潜入捜査官・スパイ)」の存在を確信。ジェシーへの依頼と出所へ。

・ジェシーが仕事を遂行する過程で、結果として潜入者が死亡したケース。この場合、九龍全体としては公害問題の公表という最大のリスクが遠ざかり、カジノ計画が成功するため、バルジ・九龍サイドともに何の問題もない。

・一方で、潜入者が生存し、その協力によってムゲン・雨宮兄弟・SWORDの連合軍(以下SWORD連合)が隠蔽された秘密に到達してしまった場合。言うまでもなく、劇中展開と同じケースだ。

ここからは後述する最大の問題シーン「バルジが手を引いた」とも大きく関わってくるのだが、バルジはモグラが生き延びたことを把握した時点から、実際に「手を引いた」ことが九龍内に伝えられるまでの間に、隠蔽された公害問題の公表、それに伴う九龍のカジノ計画の頓挫までを、リスクシナリオとして一定の可能性ありと想定していたことも考えられる。

この場合、バルジはSWORD連合が西郷の情報提供によって秘密とその証拠へ辿り着く可能性が高く、逆に九龍が暴力によって強引にSWORD連合を潰して証拠を隠滅する(隠蔽を継続でき、カジノ計画も成功する)可能性は低いと読んでいたことにもなる。多少本筋から脱線するが、この辺りからは決して敵を過小評価しない性格も見え隠れするようにも思える。

・ジェシーはマイティが黒白堂に参戦してくるまでバルジの名は出さなかったが、報酬山分けの場面でその存在をフォーの制止にも関わらず明らかにし、結果としてなし崩し的にバルジの仕事=NEXT STAGEへ巻き込んでいった。ただし、ジェシーとICEらの内心には、金のためにバルジの仕事を請け負うだけではなく別の目的がある可能性も否定できない。(叛逆、バルジ体制転覆など)

・劉とバルジの関係、FM前まで。上園の粛清はある程度既定路線・会長たち(もしくは所属する派閥の長・善信)の決定で、手を下したのが劉だっただけ?それとも突然の行動が(久世の子ということもあり)結果的に受け入れられた?前者だと「お見知り置きを」と矛盾するか?レッレが手元にないので確認できない……。

・劉とバルジの関係・久世死亡〜今後。
先の展開として考えられるのは、
①劉はバルジの忠実な配下、または大幹部となる路線。マイティはそのための戦力(アンセムMVから推測)。

②劉はバルジにどこかのタイミングで反旗を翻すつもりである。そのことをICEらに明かした上で、マイティと戦力を整えて機を窺っている。→ジェシーはどうする?劉とは面識があるが、バルジとの関係は。単に金銭面だけで繋がる依頼主だったとして素直に反バルジに加わるか、それとも密告するなどして親バルジを貫くか?

※別軸として、劉の今後の行動は彼独自の判断によるもの(or自由に動けるタイミングが来たことによる決断)なのか、久世の遺言など事前に誰かに託された、もしくは協議して決めていたことなのか?


・九龍とバルジの関係、「バルジが手を引いた」問題について。

まず「バルジが手を引いた」のは、何に対してか。

これはシンプルに、無名街爆破セレモニー後のカジノ建設・利権支配計画から手を引いた、と考えるのが自然だろう。

しかしそうなると次に、「手を引いた」のはなぜか、という疑問が出てくる。

①釈放の件のように、久世会長と個人的な親交が深く、死亡時には九龍への援助を打ち切るという契約(約束)であった。→takeover planは止まらずに動いている。そのために九龍はまだ活用できるはず。あらゆる情勢を見極めるバルジが久世の体調・寿命問題を認識してなかった可能性はないと言ってもよく、従って「久世の死亡」が「手を引いた」直接の理由ではないと考えるのが妥当。会長とバルジの個人的な交流の深さ、組織における思想の一致または不一致等についてはいくらでも解釈ができるが、どれも大幅に妄想の域へ踏み込んでしまうため、省略する。

②バルジは、過去の公害事件の隠蔽とその証拠をめぐる戦いで九龍グループがSWORD連合に敗北し、派閥争いも相まって半壊してしまうことを、(琥珀さんたちが証拠を世間に叩きつけるより)はるか前に、なんらかの理由により予期した。そのため、「手を引く」ことを宣言した。

→この時点ではまだ三つの証拠を琥珀さんたちが揃えてないにも関わらず、九龍が負けると読んだ理由が謎。カジノ計画が失敗に終わることはさほど痛手ではなく、むしろ深追いしてバルジの存在が表に出るorSWORDに露見するのを恐れた?

今のところ考えられるのはこの二つだ。

さて、そろそろ前編も終わりに近づいてきた。

中途半端なところになってしまうが、加えて本記事の最後に、九龍サイドの不明点も述べておこう。

それは、おそらくバルジと最も関係の深い一人と思われる、善信会長の去り際の言葉だ。

「九龍の火を消さないために」「跡目の件もお願いしますね」

ここから考えられるのは、「バルジが手を引いた」時点で善信(とその派閥)にとってカジノ計画は強行するメリットがなくなるか極めて薄くなり、リスクに釣り合わなくなるという考え、そして撤退の方針が事前に決定されていたことだ。

さらに言えば、それに黒崎らが動揺しなかったことから、カジノ計画に支障が出るリスクが一定の許容レベルを超えた時点で、善信派が撤退する(恐らくはバルジとの相互支援により地下化する)ことは、九龍全体での合意事項となっていた可能性が高い

そして、最悪の展開として計画の違法性と隠蔽が白日の下に晒された場合には、スケープゴートとして黒崎派は(昔気質の彼ららしく、義理を貫くという意味もこめて)逮捕される。一方の善信派は地下に潜伏して力を再度蓄えながら(これを「火を絶やさない」と表現)、世間のほとぼりが冷める、またはバルジによる次の計画の準備が整うのを待ち、時が来たら九つの龍の頭としての跡目を継ぐ。そのようなシナリオだったのだろう。

善信とバルジ。その関係のほとんどは霧の中に包まれているが、九龍グループ内での黒崎とのスタンスの違いや派閥・個人の性格を考慮すると、こうした予想も案外いい線を行っているのかもしれない。

しかしその場合、九龍の跡目争いについても実質的にバルジの意向(ex.撤退のリスク判断)が関わっていることになる。既に予想はされていたことだが、やはり九龍とバルジは少なくとも現在は対等の立場にはなく、バルジは九龍を計画のうちの一つを推し進める駒が兵隊として扱っている、と考えるのが妥当である。


FMの終盤については字数と時間の都合で触れられなかったが、前編はこのあたりで終わろう。9500文字も書いてしまった。それでは、続きは後編で。

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