令和6年度司法試験再現答案[憲法] バッタ
バッタです。
R6司法憲法の再現です。
第一 規制①について
1 規制①は犬猫販売業者の犬猫を販売する自由(以下、「本件自由①」とする。)を侵害し違憲ではないか。
(1) 憲法(以下、法令名省略)22条1項は、職業選択の自由を保障しているが、選択した職業を遂行する自由も保障されなければ無意味であるから、同項は営業の自由も保障している。そして、いかなる商品を販売するかの選択は営業の一環であるから、本件自由①は同項により保障される。
(2) そして、規制①によって免許をとらなければ犬猫を販売することができなくなるのであるから、本件自由①は制約されている。
(3) もっとも、かかる制約も公共の福祉(12条後段、13条後段)による制約として正当化されないか。
ア まず、権利の性質について、本件自由①は自己の個性を全うすべき場として個人の人格的価値と不可分の関連性を有しているため、重要であるとの見解がある。
しかし、職業は社会的相互関連性が大きく、公権力による規制の要請が強く、制約の必要性が内在する権利であるから、権利の重要性は相対的に低下する(薬事法判決参照)。
イ 次に、規制態様について、免許をとれば従来通り犬猫を販売することができる点で全面規制ではないのだから、制約態様は弱いという見解がある。
しかし、免許制は原則禁止で例外的に許可という点で、同様に営業の自由に対する制約手段としてあげられる届出制よりも重大な制約を伴う。また、免許付与の要件も一定程度厳格である。さらに、これから犬猫の販売を行おうとする者からすると参入規制としての面もある。そのため、規制態様は強度である。
ウ 次に、立法裁量について、立法目的を積極目的と消極目的とに二分する見解がある。しかし、両者の区別は相対的であるため(公衆浴場の適正配置に関する一連の判例参照)、このような単純な二分論は採り得ない。
もっとも、立法目的は立法裁量の好況を決する重要な要素となるところ、規制①の目的は、「人と動物の共生する社会」であって、犬猫の販売業の経営安定という積極目的ではないから、立法裁量は狭いという見解がある。
しかし、かかる目的は抽象的であり目的の認定は慎重である必要がある。規制①が制定された背景には、犬猫の供給過剰によって、売れ残りや売れ残りを減らそうとする無理な販売が生じているという認識があった。そうだとすると、規制①の究極的な目的は「人と動物の共生する社会」であるとしても、直接的な目的は犬猫の需給調整であると考えられる。立法裁量を考慮すべき場合は積極目的に限られない(酒税法事件判決参照)ところ、需給調整は経済状況などを踏まえた多方面にわたる立法府の考慮を要する。そうだとすると、同判決で問題となった租税法規に関する裁量ほどではないにせよ、一定程度立法府の専門技術的判断を尊重すべき要請があることは否定し難い。したがって、立法裁量が一定程度認められる。
したがって、規制①の合憲性は、目的が重要で手段が目的との間で実質的関連性を有する場合には合憲となると解する。
(4)ア 規制①の目的は、犬猫の需給調整を通じて犬猫の殺処分等を減らし、人と動物の共生する社会を実現することである。人類の利益を第一優先として発展し続けてきた人類史を反省し、動物に対する倫理意識が高まっている現代社会においては、かかる目的は重要であるといえる。
イ 次に、手段適合性について、犬猫シェルターの収容能力を免許交付に際して考慮することは、犬猫シェルターが犬猫販売業者からの引き取りを従来通り拒否できる以上、犬猫販売業者は売れ残った犬猫について終生飼養するか、自己に代わりそれを行う者を責任もって探すことになるのだから、犬猫シェルターへの持ち込み増加の原因は犬猫販売業者になく、犬猫販売業者に対し規制を及ぼしても無意味であるから適合性はないとの見解がある。
しかし、問題の抜本的解決のためには犬猫販売業者に対する規制も必要である。すなわち、かかる見解が想定するような犬猫販売御者が犬猫を売れ残らせたときに負担しなければならない負担は相当重大なものであり、犬猫販売業者はなんとしてでもかかる負担から免れようとする結果、無理な販売を行うことが考えられる。その結果、ただでさえ、飼養できなくなった犬猫を束成す飼い主の心理的ハードルが下がり犬猫シェルターの収用能力が限界を超えることが懸念されているのに、安易な気持ちで購入した飼い主による犬猫シェルターへの持ち込みが一層増加する。そのため、猫販売業者に対し犬猫シェルターの収容能力を考慮して免許を交付することに適合性が認められる。
また、犬猫飼養施設に関する要件は、これによって適切に犬猫を飼育することができる販売業者のみが犬猫を販売することができるようになり、悪質な販売業者による販売ができなくなるから適合性がある。
さらに、需給均衡を要件とすることにより、供給過剰による売れ残りや、売れ残りを晴らそうとする無理な販売が抑制されるから、適合性がある。
ウ 次に、必要性について、社会問題となっているのは販売業者や飼い主による遺棄や地方公共団体による遺棄なのであるから、直接の原因はそういった売れ残った犬猫を適切に扱わないことにあり、犬猫の遺棄等に対する自己的な罰則によって解決可能なのであるから、事前に需給均衡の要件を求めることは必要性を欠くとの見解がある。
しかし、日本では生後2,3か月の子犬や子猫の人気が高く、生後6か月を過ぎると値引きしても売れなくなるという現状がある。そうだとすると、供給過剰によって、生後2,3か月の子犬や子猫を売り切ることができなければ、犬猫販売業者としては売り物にならない生後6か月を経過した犬猫を管理し続けなければならないこととなり、これでは、いくら事後的な規制があったとしても犬猫の遺棄に繋がってしまいかねない。したがって、問題解決のためには、事前規制が必要なのであり、需給均衡の要件を課すことは必要性が認められる。
ウ 最後に、相当性について、犬猫飼養施設に関する要件が現行の基準より厳しくなっている点、及び免許制が新規参入者だけではなく、既に犬猫を販売しているペットショップをも対象としている点で、犬猫販売業者に課せられる不利益が大きく、相当性を欠くとの見解が考えられる。
しかし、犬猫飼養施設に関する要件は、国際的に認められている基準の範囲内なのであり、今までそれよりも緩やかな基準で社会問題を巻き起こしてしまった以上、それより厳しい要件を課すのはやむを得ない。さらに、現在、ペットを飼っている者のうち、犬を飼っているのは31%、猫については29%であり、犬猫以外の多種多様なペットを飼っている人は50%もいる。さらに、そのような犬猫以外のペットを飼う者の数は増加傾向にある。このような数値からすると、むしろ、犬猫の免許をとれなかった者については、犬猫以外の動物に特化したペットショップとすることで他店との差別化を図ることができ、それによって十分な収益化が期待できる。
したがって、相当性も認められる。
エ 以上より、規制①は手段が目的との間で実質的関連性を有する。
2 よって、規制①は合憲である。
第二 規制②の合憲性
1 規制②は、犬猫販売業者の犬猫の姿態を用いて広告する自由(以下、「本件自由②」とする。)を侵害し、違憲ではないか。
(1) まず、権利の保障について、営利的表現は経済活動の一環にすぎないのであるから憲法22条1項により保障されるとの見解がある。
しかし、営利的表現とそうでない表現との区別は困難である。また、21条1項は「一切の」表現を保障している。したがって、本件自由②は営利的表現の自由として21条1項により保障される。
(2) そして、規制②によって、犬猫のイラストや写真、動画を用いて広告をすることがSNSへの掲載も含めて禁止されるのであるから、本件自由②は制約される。
(3) もっとも、このような制約も公共の福祉による制約として正当化されないか。
まず、権利の性質について、本件自由②は営利的表現であるとはいえ、いかなる犬猫の姿態を用いるか、誰をターゲットとするか、どのような色彩を用いるかなどの点において作成者の個性が表れるのであり、これを通じて自己実現が図られるのであるから、重要な権利であるとの見解がある。
しかし、営利的表現は自己統治の価値が希薄であるため、権利の重要性は相対的に低下する。
次に、規制態様について、規制②は安易な犬猫の購入防止のために犬猫販売業者の表現を規制したにすぎない間接的付随的制約であるから規制態様は弱いという見解がある。
しかし、規制②はSNSへの掲載をも禁止している。SNSは情報化した現代社会において、情報の流通基盤として重要な役割を果たしているのであり、SNS上には一種の表現の自由市場が形成されている。そうだとすると、規制②による規制態様が弱いということは出来ない。
したがって、規制①と同様の審査基準により合憲性を判断する。
(4)ア 規制②の目的は、犬猫の安易な購入を抑制することを通じて、人と動物の共生する社会を実現することであり、かかる目的は規制①で述べたのと同様に重要である。
イ また、愛くるしい犬猫の姿態を見ると、人々の購買意欲が刺激され安易な購入に繋がる。実際に、SNSなどでは投稿者の飼っているペットを撮影した写真や動画が大きな反響を呼ぶことが毎日のようになされている。したがって、規制②は適合性が認められる。
ウ 次に、相当性について、犬猫販売業者は広告に際して文字情報により犬猫の情報を伝えることができるし、実際に販売させる段階では、現物を確認させることが義務付けられているのだから、犬猫販売業者の不利益は大きくなく、相当性があるという見解が考えられる。
しかし、ペットを飼おうとする者は犬猫から得られる癒しを求めているのであり、そのためには犬猫の姿態が最重要な要素となる。また、実際、犬猫の姿態の好みは人によって大きく分かれるものである。それにもかかわらず、姿態以外の情報が文字情報により伝えられるからといって犬猫販売業者の不利益が小さいと論じるのは妥当でない。また、実際に販売させる段階で現物を確認できるとしても、犬猫の姿態を掲載しない広告では、上述のようなペットを飼う者にとっての姿態の重要性に鑑みると、集客能力が極めて低下するのであり、そもそも実際に販売させる段階に至らない。そのため、事実上現物を確認させることができなくなってしまい、犬猫販売業者の売り上げが大きく下がることが予想されるのであるから、犬猫販売業者の不利益は大きく、相当性を欠く。
エ したがって、規制②は手段が目的との間で実質的関連性を欠く。
2 よって、規制②は違憲である。
以上
〇感想
・ダメダメofダメダメ
・まず、規制①を要件や免許制自体で分けて論じていないためめっちゃ分かりにくい
・しかもそのせいで目的の認定が微妙なことになってる
・さらに、適合性のところでは目的との繋がりがめっちゃ見えにくい
・もっといえば、立法裁量を認めるならどう考えても緩やかな審査基準に持っていくべきなのに、なぜか中間審査基準
・とはいえ良かった点もあり、まず見解の対立があるところでは「○○について」と書き出すことで、見やすい答案にできた。
・また、時間配分は完璧だった。規制②を書くのに十分な時間を残して規制①を書き終えることができた。
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