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職業紹介業はオワコンなの!?(5分で読む業界事情)


ビジネスチャンスの匂いがあれば素早く切り込んでいく、我が相棒のヒデさん(youtubeの相方予定)が職業紹介業に参入します。今月末から稼働開始できるということで、今日はこのチャレンジの行く末を考察していこうとと思います。

ヒデさんイメージ

職業紹介市場は伸びている

コロナが明けて2年、ホワイトカラーの職業紹介市場は、ITやDX領域を中心に市場全体の規模が伸びています(2022年現在で約3500億円市場/前年比約19%増)

ここでいう職業紹介市場は、正社員の職業紹介のことを指します。参考までに、人材派遣(非正規雇用)の市場は約9兆円と、ホワイトカラーの職業紹介市場に比べて25倍ほど大きくなっています。今日は触れませんが、昨今正規非正規問題が取り沙汰されていますが、こうした数字からも非正規の派遣社員がいかに多いかがわかります。

職業紹介市場が伸びている理由は以下のようなものが考えられます。
・1999年の職業安定法改正によって実質的に手数料の上限が撤廃されて新規参入が増えたこと(実際のところは手数料平均値として、年収の25〜40%といったところです)
コロナが明けて労働者人口の不足(人手不足)が顕著になり、求人が増えたこと
・ITやDX、さらにはAI人材といった高度専門人材には、高値がつくこと
などがあります。

職業紹介業を使うことのメリットを整理

人によっては複数社に登録しているケースなどあるようですが、では、こうした職業紹介業を使うことのメリットはどのようなものがあるでしょうか。ちょっとだけおさらいをしておきます。
・採用企業側が費用負担をする仕組みなので、応募側(個人)の金銭的負担がないこと
非公開であり、在職中の転職活動ができること。よって、転職が決まって、会社に退職届を出して、辞めた翌日から働くことが可能。
担当制により、「応募先の企業情報を教えてもらえる」「スケジュールなどの調整をしてくれる」「面接指導をしてくれる」などのサービスを享受できます。この担当制は仕組みとしては良いものですが、後でも触れますように、市場が大きくなる中では、これが課題の一つにもなってきています。

職業紹介業倒産件数は2000年以降で最多を記録

人手不足が今後も続いていく中で、職業紹介業の必要性は増していきます。今のところを概観してみても成長市場と言えます。一方で、職業紹介業の倒産件数は、2023年に16件と、2000年以降で最多となっています。

市場が伸びているのに倒産も増えている理由を考察

では、なぜ市場が伸びているのに倒産も増えているのでしょうか?

考察する前に、一つ他のデータを紹介します。
・転職を2回以上する人、いわゆる転職リピーターは3人に2人と言われています。
・またこうした転職にエージェント(ここで言う職業紹介業者)を使っている人の割合は50%と言われています。
つまり、転職する人のうち3人に1人は職業紹介業者を使って転職しているのに再度転職する、と言う計算になります。

これは、採用する企業側から見たらどう言うことになるでしょうか。高い手数料を払っているのに、そのうちの3人に1人は辞めてしまいます。採用費に加え、入社後の教育・育成費なども含めたら大きな損失になってしまいます。

こうした事実を背景に、考察に入ります。ここでは大きく2つの理由を仮説として上げていきます。

まず1つ目です。
高い手数料を払い、更に言えば入社後の教育・育成費も考えれば、間違いない採用をしたいと言うのがどの採用企業も思っていることです。企業側は自力ではなかなか探すのが難しいから職業紹介業者に頼んでいるわけで、この紹介精度が低いところは淘汰される構図となります。

では淘汰はどこから始まるか。小規模なところから始まります。この業界、参入障壁はあるにはありますが、基準資産額500万円以上を満たせば、一定の手続きを踏むと入っていけます。よって小規模事業者も多く参入しています。そして、倒産件数で言うと、昨年の16件のうち半分の8件は資本金1000万円以下の小規模事業者です。

小規模事業者が淘汰される理由は、紹介精度の大元である、応募登録者を囲えないところから始まることが多いと言われています。応募側の心理としても、大手の方が候補となる企業が多いという期待があるのは当然です。ここが、倒産件数が増えた一つ目の理由と言えます。

整理すると、紹介精度の源となる応募者を囲えない小規模な事業者から順に淘汰されて倒産する、と言うのが第一の理由です。

2つ目です。
もう一つの理由は、上述にも触れましたが、担当者制による問題があると思われます。これはどう言うことか、簡単にその構図を流れで説明します。

・各職業紹介会社は、応募者を増やすために、サービス強化をする必要がある
・サービス強化のために、応募者に対して担当者制を敷くことで対応する
・担当者は、できるだけ応募者を候補の企業に入れたい。更に言えば候補の企業に入れることで担当者自身の成績に影響する(成果主義が導入)
・応募者と候補企業のマッチングはAIを駆使して、精度が高い(と自負している)
・よって担当者は自信を持って、企業側にも勧めるし、応募者にも勧める
・そこにプロダクトアウト型セールスが発生する(プロダクトアウトについては、【ダメ、絶対シリーズ/マーケティング視点編】プロダクトアウトだけでは生き残れない、を参照ください)

私自身の経験です。
以前の会社でも、人事がキャリア採用時に「この人はお薦めです」と言うことで報告があった人に会ってみた時に、違和感を感じることがありました。私が会った時点では、既に応募者も、人事もその気になっているので、違和感を感じつつも、そう言うことならと採用しましたが、やはり短期間で辞めてしまいました。後で、人事になんであの時あんなに薦めたのか聞いてみたら、エージェント(職業紹介業者)の担当が、アセスメントやテストで当社とピッタリと出ていると言っていたのと、応募者もその通りの印象だったので、と言うことでした。

おそらく、この時、応募者も人事も、エージェントの担当者のプロダクトアウト型セールスに乗ってしまったのです。その時は、今後そのエージェントとの向き合いは慎重にするよう指示を出しました。

担当制は先にもあげましたように、メリットもたくさんあります。一方で、担当者自身が会社事情により、成績を上げなきゃとか、成立させなきゃとかと言う思いが強くなるとどうしてもこう言うことが発生してしまいます。

業界が市場の成長に合わせて大きくなると働き手がそこに集まって来ます。そうすると潜在的に担当者としての本質的適正(ここで言えば応募者、顧客である企業それぞれに寄り添うという姿勢)が足りない人材も流入してきてしまいます。

こうした蟻の一穴的な綻びから、信用を失っていくケースは今後も続くと思われ、そうした理由から淘汰されていく企業も増えていくものと思われます。この2つ目の理由による淘汰は、決して小規模事業者から順にと言うわけではないはずです。

昔のドラマで、お見合いを持ってくる世話好きな女性が登場する場面を見たことがある人、多いと思います。その女性の行動は
・お見合い相手の候補者写真何人か分を持ってきて、それぞれの良いところを説明します
・見せられた方は「うーん・・・」と言って断ります
・世話好き女性は「そしたら、どう言う人が良いの?」と聞きます
・そして聞いた内容をもとに新たな候補者を探してきます。

ここに紹介の本質があると思います。それは、
プロダクトアウトからスタートしながらも顧客ファースト(マーケットイン)の視点でPDCAを回して精度を上げていく寄り添い型のアプローチであること
と言うことです。(この点についても、【ダメ、絶対シリーズ/マーケティング視点編】プロダクトアウトだけでは生き残れないで触れています)

この2つ目の理由、すなわち
業界が大きくなり従事者が増えていく中で、そこで求められるスキル・マインドが必要十分条件を満たしていない人材が担当者をしている事業者から順に淘汰される

これは採用企業側からしても、しっかりと見極めていきたいポイントです。

まとめ

これまでの記事でも何度か、参照で使わせていただいている脱・税理士スガワラくんでは、M&A業界でも同様のことが起きていると言っています。成長産業には流入者が増え、その中で規模の理由、サービスレベルの理由で淘汰が起きることはどこにでもあるものという示唆です。

ヒデさんの新規事業が成功するか否かは、身の丈に合わせて規模を深追いせず、信用を獲得できる実績をコツコツ寄り添いながら作っていくことかと思います。近所の世話好き女性を見習ってぜひ頑張ってください!

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