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『モノ忘れ』じつは進化論?
最近、モノ忘れひどくなってますよね?
ひょっとしてそれは「老化」ではなく、
「進化」なのではないか?という話です。
ボクのモノ忘れは30才になる頃から始まりました。
モノ忘れ歴27年!という事になるので、
なかなかの名人クラスです。
モノ忘れが始まった頃は、ボクの人生で最も忙しい時期の始まりでもありました。
「今週の忙しさは、過去最高だった」と振り返る週末の
翌週には、忙しさを更新する事がしょっちゅう。
頼まれたことをいくつも忘れているので、
来週は少し楽になるかも♡、などと、
のんきな週末を過ごしているのです。
でも次第に状況は悪化します。
忘れるたびに怒られる訳で、ボクが忘れたせいで
追加の仕事も増えます。
何枚もの付箋に「タスク表」を作り
ひとつずつ消す程度の努力はしますが、
社内を歩いている時に声をかけられたり、
会議中ぽろっと文脈にない頼まれごとをすると、
いま自分が考えている「外の事」なので、
うっかり席についてもメモする事を忘れてしまいます。
ただ、ある日気付くのです。
「あの頼まれごと忘れてやらなかったけど、
仕事上問題なかったじゃん」という事が、
まぁまぁある。
なるほど!
そうして『モノ忘れ進化論』は生まれました。
以下、ボクの経験に基づく仮説です。
1:一度に取り組めるコトには限界がある
↓↓
2:覚えていられるタスクにも限界がある
↓↓
3:今日やれる仕事量の2倍ならまだいいが
5倍、10倍、それ以上の仕事をインプットされる。
↓↓
4:瞬時にタスク優先順位をつける事を身につける
(急ぎ対応が必要なモノ、直近重要なコト)
↓↓
5:『急がない重要でないコト』が溜まって忘れていく
ここが『モノ忘れStage1』
いくつかの物忘れと引き換えに、数多くのタスクから重要な仕事だけを選び、取り組む事ができるようになっているはずです。
これは社会人として結構重要な基本スキルです。
そして「こいつ忘れやすいな」と周囲に思われると、
なんでもかんでも「急ぎで」頼まれやすくなり、
事態を複雑にします。(笑)
また
仕事以外では、今までしたことのないような
モノ忘れも体験します。例えば、
○家にカギをかけ忘れる。(かけたか心配になる)
○財布を置いた場所を忘れる
○電車に乗り間違う。などなど
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整理するとこの図の左側が『モノ忘れゾーン』になります。
モノ忘れには次の段階があります。
モノ忘れ『Stage2』
Stage1では中長期において大事な事に取り組めません。だいたいこの段階では「忙しいから」と諦めています。
しかし次第に、右上の「急ぐ、重要な仕事」のクオリティを上げるためには、左上の「急がないが、重要な仕事」へのアプローチが重要である事に気づき始めます。
気づきはしているものの、右下の急ぐ仕事への対応で時間が取られて、ストレスを感じ始めます。
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この頃に部下がいると、右下の仕事を部下にお願いする事で、自分は「急がないが重要な仕事」への取り組みにスライドできるようになります。
それでも『仕事とは出社して机に座ってするもの』という社会常識に縛られていると、部下がいても案外スムーズにはいきません。
急がない重要な仕事とは、まだ「課題」として分解されておらず「問題」のまま残っているので、
どこから手をつけていいか分からなかったり、ハッキリした答えもない事が多いのです。
そうすると、一人時間に何かずっと考えるようになります。
当然、仕事以外でのモノ忘れが悪化します。
ボクの場合だと
○出かけた最寄り駅と、違う最寄り駅に帰ってくる
(乗ってきた自転車がない)
○招待された結婚式を忘れる
○出発空港を間違える、
おまけにトランジットで乗り損ねる
あまり思い出したくないのでこのくらいにします。
絶え間ない「考えクセ」は、当たり前の生活でたくさんのトラブルを起こします。
会社の同僚や家族がそばにいるときは、注意してくれますが、一人でいる時こそ危険です。
日常生活では家族に「要介護」レベルと揶揄されても、
仕事する人間としては、最適化がなされた状態(=進化)ともいえるんじゃないか、
いや、言えた方が良いなぁと、希望を持っています。
そして最終ステージ『Stage3』へ
ゴルフでは、優勝した選手が優勝インタビューで、重要な場面で「キャディさんがゴルフと全く関係ない笑い話をして、緊張をほぐしてくれて感謝してる」ような話があります。
またアイデアが生まれる場所として、トイレや、お風呂場、関係ない雑談中という話を聞いた事もあるでしょう。
解けない課題にぶつかった時、ひらめきを得るために『一旦寝る』という人にも多く出会います。
これらに共通するのは、意図的に『一旦目の前の問題や課題から離れる』『忘れる』事で、リラックスし、クリエイティビティを発揮し、ゴールに近づこうとしているとも言えます。
認知心理学、創造性研究ではこれらの現象を『インキュベーション』と言い「問題解決プロセス」の重要な段階として研究されているそうです。
短期、中期・長期の重要な事だけにフォーカスできるようになると、意図的に課題から離れる、忘れる事が重要になるって面白くないですか?
つまり『モノ忘れ』は間違いなく困った状況を生み出しますが、必ずしも悪いことばかりではなく、むしろ仕事に最適化していく過程で生まれる副作用として捉えても良いのではないか?と考えています。
また一旦忘れる事で、よりクリエイティブになれる作用もあり、『効果的に忘れる』のは『役にたつ技術』と言えます。
最後に
ここまでボクのモノ忘れの『言い訳』に付き合ってくれてありがとうございます。
もしあなたが『モノ忘れ』して言い訳が必要になったときに使ってみて下さい。
因みに書き終わって、試しに『忘却』と『創造性』の関係について研究した論文がないか調べてみました。
すると、ちゃんとあるではないですか!
以下にChat Gptの返事を残しておきます。参考まで。
1. 忘却が創造的思考に役立つ可能性に言及した研究(Adaptive Forgetting)
• いわゆる「適応的忘却 (adaptive forgetting)」という考え方があります。人が過去の情報を忘れることは、一見デメリットに思えますが、不必要な情報や誤った思い込みを捨て去ることで新しい発想が生まれやすくなるという指摘です。
2. 記憶負荷と創造的問題解決に関する研究
• ワーキングメモリ容量(作業記憶)と創造的問題解決の関係を調べる研究もあり、作業記憶が大きい人ほど論理的・分析的問題解決は得意になる一方、かえって制約が強く働きすぎて自由な発想を阻害することがあると指摘されています。
• 具体的には “Wiley, J. (1998). Expertise as mental set: The effects of domain knowledge in creative problem solving. Memory & Cognition, 26(4), 716–730.” などでは、詳しい知識や強い記憶がかえって思考を固定化する例が示唆されています。
3. 一部の研究知見からの示唆
• 不要な情報をうまく忘れられる人は発想が柔軟になる可能性
前述のように、不必要な情報や先入観を保持しすぎると新しいアイデアを阻害することがあります。もし「意図的に、あるいは自然な形で不要情報を忘却できる」タイプの人であれば、創造的発想がしやすい側面はあるかもしれないと考えられます。
4. 重要なのは「どのように忘れるか」「どの情報を忘れるか」
• 前述の「適応的忘却 (adaptive forgetting)」は、古い情報や先入観を意図的・無意識的に手放せることで、思考が広がる様子を指します。
• しかし、「必要な情報までもすぐ忘れてしまう」「そもそも集中力が続かずアイデアを深掘りできない」という状態では、創造的思考を形にする以前の問題が生じます。
• 結果的に、創造性にプラスに働くのは「必要な情報と不要な情報を取捨選択し、不要なものを適切に手放せる」能力であり、単なるうっかりミスや注意力不足とはやや異なる可能性が高いです。