見出し画像

旅とデザイン —エジプト編—

これまで「デザインで見る各国の暮らし」と題して記事を書かせていただきましたが、今回は旅先で出会ったデザイン(建築・アート・音楽など全て)についてお話しさせていただきます。今回はエジプト編です。
この記事を書いている2020年12月は、コロナ第3波が来ていて相変わらず旅行には出られない状況です。読んでいる間だけでも、エジプトへ脳内トリップしていただければと思います。

古代エジプトって?

画像1

エジプトに興味を持ったのは小学生から。「消えたピラミッドの謎」という子供向け書籍を読んで衝撃を受け、巻末にあるヒエログリフを暗記したことを覚えています。その後図書館にあるエジプト関連の本を読み漁り、大人になってから2回ほど訪れたことがあります。
エジプトといえば、世界4大文明(メソポタミア文明・エジプト文明・インダス文明・黄河文明)の1つです。エジプト文明は紀元前3000年頃から紀元前30年頃までのエジプトで栄えた文明のことを指しています。この文明の特徴である、「ファラオ」と呼ばれる王を中心とした神権政治によって繁栄しました。土地の特徴としては、9〜10月のナイル川の氾濫による肥沃な大地によって作物がよく育ち、国家が繁栄につながった土地です。よって、ナイルの関心ごとは、毎年変わる水位管理と増水時期の把握です。
水位管理に関してはナイロメーターから始まる水位計測や神殿を大移動させた大工事アスワンハイダムの建設は歴史的にも有名です。増水時期ですが、ナイルの洪水が始まる頃はシリウス星が日の出直前に昇る時期です。そのため、天文学が発達し、1年を365日に定める太陽暦も考案されました。
古代エジプト王朝を大まかに分類すると
・古王国時代(前27世紀―前22世紀)ピラミッド建設、太陽神殿建設
・中王国(前21世紀-前18世紀)文字が体系化され古典文学が成立
・新王国(前16世紀-前11世紀)ツタンカーメン、ラムセス2世/
に分類されます。
数々の有名なファラオ達や貴族は死者の谷に埋葬されています。中を見学できるお墓もあります。内部は鮮やかな色とファンタジーにも見える装飾や壁画。何千年も守られてきたフォーマット化しているエジプト絵画は、浮世絵や文字にも似ています。どちらかというとオモシロ方向で取り上げられるエジプト壁画ですが、デザイン性が高いです。
<推薦本>
エジプトの歴史や哲学的な思想には様々な神様が登場してきます。神様を知ると、エジプトと仲良くなれると思います。

画像9

ゆるゆる神様図鑑 古代エジプト編
ピラミッド、スフィンクス……、エジプトはふしぎだらけで謎だらけ。そんなエジプトの神様はとっても個性的。本書はエジプトの神様を4コマ漫画でゆるゆると紹介しています。さらにエジプトと言えばこの人、駒澤大学の大城教授が4コマに登場する神様たちをわかりやすく丁寧に紹介、解説をしてくれています。

星とピラミッド

画像2

画像3

ピラミッドの意義が墓ではないことは常識となりつつありますが、他にも「日時計説」「穀物倉庫説」「宗教儀式神殿説」「天体観測施設説」など多数の説があります。先ほど記したように、エジプトは天文学が発達していました。古王国時代に建設されたギザのピラミッドは、ほぼ正確な角度で4方向を向いていることから、精緻な天文観測の技術があったことは認知されています。「天体観測施設説」は私が好きな説ですが、様々な本も出版されています。推薦したかった本は絶版になっていますが、近い内容のものを挙げておきます。なかなか面白かったです。

画像10


オリオン・ミステリー―大ピラミッドと星信仰の謎
古代エジプト人はかなり高度な天文学の知識をもって文明を築いたのだとして、天文学の見地からピラミッドの謎にいどむ。発表後イギリスで反響を呼び、NHKテレビでも放映された「星相関説」を紹介。

光の設計ーアブシンベル神殿ー

画像4

アブ・シンベル神殿は、歴代ファラオ(国王)の中でもヒーロー的存在の、ラムセス2世により紀元前1250年頃に造られました。大小2つの神殿からなる、砂岩をくり貫いた岩窟神殿です。大神殿入口にある、4体の像で有名ですね。この像は全て4体ともラムセス2世の座像。旅行すると、どこに行ってもラムセス2世に遭遇する感じですが、青年期〜老年へと年を重ねた姿を模しているとはいえ、4つも20mの自分像を並べるとは、本当に自己顕示欲の象徴!一方、小神殿は結婚25周年を記念して王妃ネフェルタリに捧げられたもので、ネフェルタリとラムセス2世の立像が並んでいます。王妃の像は王の足元に小さく作られるのが慣例のなか、このように対等に王と王妃の像が並ぶことは稀です。大勢の妻と100人以上の子供を持ったことで有名なラムセス2世ですが、第1王妃ネフェルタリへの愛情を象徴しているようです。

画像9

1960年代、アスワン・ハイ・ダムの建設計画で水没の危機にありましたが、移築を決定。大神殿は高さ33m、幅38m、奥行き63mにも達する壮大なものですが、その大きな建造物を正確に分割し、約60m上方のナイル川から210m離れた丘へ、コンクリート製のドームを基盤とする形で移築されました。ここでポイントなのが、正確に分割した点です。なぜなら、年に2回だけ神殿の奥まで日の光が届き、神殿の奥の4体ある像のうち、冥界神であるプタハを除いた3体を順に照らしていく設計になっているからです。プタハが照らされないのは、冥界を支配する神だからという理由だといいます。数学と建築学の発達が素晴らしいですね。この日は“ラムセスデイ”と呼ばれて、世界中から観光客が集まり現地ではお祭り騒ぎになっています。本来ラムセス2世の生まれた日(2月22日)と、王に即位した日(10月22日)に“ラムセスデイ”が設定されていました。しかし移築の際、当時のユネスコの一員が計算したら古代エジプト人の計算間違いが見つかったために、わざと角度をずらして移設したそうです。しかし結果はユネスコの計算がまちがっており、現在は“ラムセスデイ”の日にちがズレる年が発生するそうで、残念でたまりません。
推薦本
ラムセス2世は90歳以上まで生きた、長身で金髪巻き髪のエネルギッシュなファラオなので、関連本は多数あります。彼をモデルにしたフィクション小説やマンガも楽しいです。

画像11


太陽の王ラムセス(全5巻)
エジプト史上、最も偉大なファラオと呼ばれたラムセス二世、波瀾万丈の運命の矢がいま、放たれる!世界で一千万人を不眠にさせた絢爛の大河歴史ロマン。

画像12

王家の紋章
何と、2020年6月に66巻発売してました。1976年に連載開始〜まだ連載中!ちょっと懐かしい絵柄ですが、それも含め、長い連載期間を想像しながら、色々な楽しみ方があります。

オペラ「アイーダ」とハトシェプスト女王葬祭殿

画像8

エジプトが舞台の物語は多数ありますが、「凱旋行進曲」はサッカーの応援にも使われているので、1フレーズ聴けば「あ〜アレね!」という曲なので、「アイーダ」はオペラに詳しくない方でも名前もしくは曲だけでも知られていると思います。スエズ運河の開通を祝い、エジプトに建設されたカイロ歌劇場のこけら落としのため(間に合わなかったけど)ヴェルディに委嘱されて作られたオペラです。
舞台は古代エジプトのメンフィス。捕虜として連れてこられた、敵国エチオピアの王女「アイーダ」とエジプトの将軍であるラダメスとの悲しい恋物語を描いたものです。大がかりなセットと豪華絢爛な美術で、初心者でもかなり楽しめる舞台で有名です。全部で4幕ありますが、第2幕の凱旋するシーンでは本物の馬に乗った騎馬隊を登場させる事もあり、演出もワクワクします。そんなスペクタクルオペラですが、エジプト当地では更なるお楽しみがある催しも。それは、世界遺産を舞台に繰り広げるアイーダです。

画像7

夕方のハトシェプスト女王葬祭殿。このままでも素敵です

画像8

夜ライトアップされたハトシェプスト女王葬祭殿

ギザのピラミッド前もありますが、有名なのはハトシェプスト女王葬祭殿!昼間訪れても壮大で美しい建築の葬祭殿に感動しますが、夜ライトアップしてオーケストラと音楽が彩るエジプトの世界って。想像するだけで夢のような感じです。街からは遠い場所にありますが、この舞台を目指して世界中から人が集まります。

ハトシェプスト葬祭殿では、衝撃的なテロ事件がありました。エジプトだけではなく、多くの国でも立ち入り禁止地区や警察の護衛がないと行けない遺跡が多数あります。
このままテロや戦争もウィルスも消えて、自由に世界中出かけられる世の中になりますように、と祈るばかりです。
エジプトの砂漠はサラサラ。ドバイの砂漠はゴツゴツ。そんな小さな記憶が、日常をちょっと幸せにしてくれます。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?