【兄弟トラブル】家業の経営問題を乗り越えるための秘訣
家族で事業を営む家業もちにとって、家族内での意見の対立・不仲は大きな問題です。
特に兄弟で家業に貢献している会社では、継承をめぐって兄弟間で意見が割れ、争いになったり関係が険悪になったりするところもあります。それでは、兄弟で経営を上手く回している家業持ちは、一体どのようなことを意識しているのでしょうか?
今回お話を伺ったのは老舗の金属加工メーカーの5代目の跡継ぎを予定している榎並さん。
弟さんと二人で社内の人事・総務・生産管理・新規開発など多岐にわたる業務を担当しています。
そんな榎並さんと家業であるエナテック株式会社の関係を語るうえで、弟さんの存在は欠かせません。家業を継ぐ前・継いだ後のご兄弟の仲の良さの秘訣や家業エイドとの出会いについてお話していただきました。
学生時代から感じていた跡継ぎの葛藤とは
榎並さんご兄弟/株式会社エナテックについて
大阪の老舗金属加工メーカー「エナテック」の5代目跡継ぎ候補
エナテックは鉄砲鍛冶の金属加工に始まり、戦時中は戦車等の軍事製品を扱っていた
戦後は大手農業機器メーカーに農業機器やエンジンの部品卸しを展開
最近では医療機器や電子機器の部品を製造している
-子どもの頃の榎並さんにとって、家業はどんな存在でしたか?
・幹也さん:
実は僕は家業ってそんなに好きではなかったです。
子どもの頃は、父親が自営業をやっていると「あの子は恵まれた子だから」と嫌みのようなレッテルを貼られることが多かったので、あまり継ぎたくないなと思っていました。
それから家族との会話の中で明確に継いでほしいと言われたのは大学生の時でしたね。
ただ、高校を卒業してオーストラリアの大学に進学したこともあり、外資系などの英語能力を生かせる企業も良いんじゃないかなど、絶対に家業を継がなければならないという圧力はなかったです。「兄弟で継いでほしい」と言うのが父の希望ではありましたが、強制させられたわけでは全くなかったです。
-昨年の元日に公開されたnoteでは大学時代の進路や就職について綴られていました。その頃のことについて詳しく伺いたいです
・幹也さん:
就活の時は僕はオーストラリアの大学を卒業して日本に帰ってきていました。近畿職業能力開発大学校というところに通って、日本のきっちりとした時間感覚を取り戻すとともに機械の勉強をしていましたね。
元々プログラミングなど理系的なところがあったので、機械を動かすのは面白いのではないかと思っていましたが、実際機械を操作してみるのは恐怖心がありました。在学中にちょっとした事故を起こしたこともあり、「機械を使うのも、家業を継ぐのも向いていないかもしれない」と思うようになっていたんです。
一方、弟は大学の4回生で就活がひと段落していた頃かな?
そこで弟に「お兄ちゃんしたいことあるならしたいことしたら」と背中を押してもらって、家業を弟に任せ、アルバイトをしていた塾に就職することを決めたんです。
・直輝さん
そうですね、僕としては正直なところ当時、兄自身は会社に入る、家業を継ぐということが「プレッシャー」に感じ、そのことから避けていたように見えてました。
ただそれをネガティブに捉えたわけではなく、私自身が引っ張っていくことで兄もしたいことができるのではないかと思ったんです。
そういった背景から当時兄には「好きなことしたら良いよ」という言葉をかけた記憶があります。
その後僕はエナテックに就職し、最初の2年は別の機械メーカーの会社へ修行に行ってました。その後に僕がエナテックに帰ってきた1年後に兄がエナテックに就職したという流れです。
兄が感じた弟への後悔
-幹也さんは機械に恐怖心があったのにも関わらず、エナテックに就職するに至った経緯はなぜですか?
・幹也さん
弟がエナテックに戻ってきてちょっとしたころ、たまたま二人でご飯を食べに行ったときがありました。その時に弟から「自分ひとりでも頑張っていけるけど、もしお兄ちゃんがいたら心強い」と言われたのがきっかけです。ちょうど私も塾の仕事から転職を考えていた時期ではありましたが、塾講師という他の職業とはタイムスケジュールが違う職業からの転職というのに少し不安があり、踏ん切りがついていない時期でもありましたね。
弟は僕に大企業や英語が生かせる仕事などを提案してくれるなど、家業に戻ることを無理強いするような感じではありませんでした。ですが、「一緒にやってくれると心強い」という弟の言葉で、全てを背負わせてしまっていたとそこで初めて気が付いたんです。
・直輝さん
当初兄が戻ることを決意してくれた時はすごく嬉しかったです。
でも最初は「無理してないかな?」という気持ちも大きく、陰ながら心配してました。笑
今はこうしてメディアに出るような動きもしてくれているのですごく助かってます。
-兄弟二人で家業に戻ってきたわけですが、どちらが跡を継ぐなどの話はされているのでしょうか?
・幹也さん
父親も交えて跡継ぎについて話すことはあり、正式には決まっていませんが私が跡を継ぐことになりそうです。ただ、私自身は弟が跡を継ぐのが良いと思っています。弟自身も就活してやりたいことがあったのに、自分がやりたいことを優先したために彼に家業を背負わせてしまって申し訳ないという思いはあります。私から見た彼は人望に厚い、人を惹きつける力・タフさがある人なので、それは私にはない良さだと思います。
家業に再集結した2人が語る兄弟円満の秘訣
-お互いに良さが違うというお話でしたが、兄弟、家族で仲良く仕事を進めるうえで意識していることはありますか?
・直輝さん
まずお互いの強みを理解し合うことかなと思います。
・幹也さん
そうですね、お互いに得意分野が違うので、役割分担については暗黙の了解があります。
例えば、機械に関することは弟の担当で、パソコンなどコンピューター関係は私の担当と言った感じです。
先日、弟がビジネススクールで発表する資料の作成をパワーポイントで行っていた時、スライドの配色や見栄えについてアドバイスをしたことがありました。そのアドバイスについて彼も「こっちの方が見やすいわ」と納得している様子で、お互いにアドバイスはすんなり聞き入れて、深く立ち入らないようにしています。
もっと全体的なことで言えば、弟が社内の内政を担当し、私が社外と交流することが多いです。得意分野が違うことを生かして、補い合いながらやっています。お互いのことを知ってるからこそ、担当領域を任せて深く踏み込まないことが大切なのではないかと思ってます。
-実は家業エイドユーザーの中で兄弟と上手くいっていないという方が一定数いらっしゃいます。そのような人たちに何かアドバイスはありますか?
・幹也さん
おそらく兄弟仲で悩んでいる人たちは、自分と兄弟の間で意見に違いがあってぶつかっているのだと思います。逆に私たちは意見の違いを受け入れられるように意識していますね。
私自身、弟のことを「一番付き合いの長い友人」だと捉えています。幼いころから一緒に過ごしてきた親友だからこそ、私のことをよく知っているし、会社も良くしたいと思っています。そんな兄弟が悪意を持って反論したり異を唱えたりするわけないので、自分とは違う意見も受け入れられるのかなと。
同時に自分が正しいと思ったことを主張するのも大事なので、受け入れながら、主張しながら、という関係を意識していますね。
-とは言っても現状、仲が悪い兄弟では難しいかもしれません。そのような関係を築くために榎並さん兄弟が大切にしていることはありますか?
・直輝さん
仕事やプライベートに関わらず、日常的によく会話をしますね。
お正月もテレビの年始特番を見ながら他愛もない話で盛り上がったりして。
考えてみれば、家族全体として幼いころからみんなが同じ空間にいることが多かった気がします。
後はある程度相手のすることを信頼し、放置することも大切かと。
突っかかったりしてしまいがちですが、まずは自分ではできない点を認め、そこを色々教えてもらうことで、自然と相手に敬意が生まれてくると思ってます。
家業ならではの話題を共有できる”ちょうど良い”SNS
-榎並さんが家業エイドに参加したきっかけは何だったのですか?
・幹也さん
一昨年の8月くらいに中途採用をしようと思って色々調べているうちに「側島製罐株式会社」の石川さんの存在を知りました。
石川さんに直接話を聞きたいと思って家業エイドに登録したのがきっかけです。
twitterでもコンタクトをとることはできましたが、当時SNSは全く触れたことがなく、twitterはビジネスや家業の話を聞くにはあまりにもオープンでフランクな感じがしたので、家業エイドがちょうどよかったです。
-家業エイドに登録してから、何かメリットを感じるようなことはありましたか?
・幹也さん
「家業」と聞くと勝手に製造業が多いような気がしていたのですが、実は他の業界の人がたくさんいることに驚きましたね。
考えてみれば、当時エナテックは大手企業の一社と取引していただけなので、社外の人と交流する機会が少なく、他の家業持ちともつながることが出来ませんでした。それが家業エイドに登録することで一気にネットワークが広がって、事業承継などの家業ならではの話題について詳しく知ることができましたよ。
あと、家業エイドの空気感も良くて、twitterほどオープンでもなくfacebookほどパーソナルではないと思っています。家業エイドには家業に関係するユーザーしかいないので、気軽に家業・ビジネスの話題で繋がれると言うのが魅力的だと思ってます。
-最後に兄弟関係に悩みを抱える読者の方にメッセージをお願いします。
家族仲が良いことは最大の武器だと思います。家業であれば家族は離職しませんし、付き合いが長いので自分のことよくわかってくれているパートナーになります。
親子・兄弟のキャラクターが違えば違うほど、お互いの武器になっていきます。
まずは「仲良くしたい」と言うことを伝えてみるのが良いと思います。
弟さんのことを「一番付き合いの長い友人」と捉えていらっしゃるところなど、身内ではあるけれども別の人間であり、意見の違いがあっても受け入れられる関係性を築くことが大切だと感じさせられるお話でした。
自分と違った意見を兄弟が持っていても、会社をより良くしようという目的が一致していることを心に留めて、まずは「話し合う・会話を重ねる」ことを意識したいですね。
家業持ちが集まる家業エイドでは、自社以外の家業・企業についての視野が広がり、事業継承等、家業持ちならではの悩みや疑問を相談できる場として活用しているとのことでした。
「家業」という共通のキーワードを持っているユーザーだからこそ、特有の悩みを共有・相談しやすいSNSということで、家業エイドとしてもこれからもお二人を応援していければと思います!
今回のインタビューの感想やご意見はぜひ家業SNS「えんがわ」で呟いてもらえると嬉しいです!
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最後までご覧いただきありがとうございました!
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