#24. 使えないポストカード
「使えない」ポストカードがある。
「あいつは使えないやつだ」というような意味でも、「もったいなくて使えない」という意味でもない。
送るのにちょうどよい相手が見つからず、使いたくても使えないのである。
この江頭2:50(えがしらにじごじゅっぷん)さんのカードは、2010年ごろに『ヴィレッジヴァンガード』で購入したように記憶している。
江頭さんがYouTubeチャンネルを開設した2020年より10年も前のことであるから、この「一周回って逆にカッコいい」カードを企画した人たちは、なかなか鋭い嗅覚を持っていたのだと思う。
江頭さんのことを調べてみたら、私と同じ昭和40年生まれであることがわかった。
10年前の写真の時点ですでに今の私よりもだいぶ年配に思えるが、傍から見れば私もきっと同じようなものなのだろう。
このバースデーカードもいっしょに購入した。
いずれのカードも「そうだこの人に送ろう!」と思うことがないまま十数年がたってしまった。
紙が黄ばんできたこともあり、きっともうこのまま使われることはないだろう。
このマルセル・デュシャンのポストカードもだいぶ黄ばんでしまった。
このカードはまず、デュシャンがニューヨーク・ダダの芸術家であったことを知っている人にしか送れない。
何も知らない人に送ったら、「小便器のカードを送ってくるなんて、なんて失礼な人!」とキレられてもしかたがない。
しかし、デュシャンを知っている人に送ったとて、である。
なにか隠された意味が込められているのではないか、と相手を不安にさせてしまうに違いない。
制作されてから100年以上がたってもいまだに問題を投げかけてくるとは、さすが前衛芸術である。
なお近年の研究では、この作品『Fountain』はデュシャンではなく、エルザ・フォン・フライターク=ローリングホーフェンという芸術家が制作したとされている。
さらに意味ありげなカードになってしまった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?