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ブランドが忘れてはならないこと
あるブランドについて書くが、どのブランドのことを言っているかは、どうか詮索しないでいただきたい。
ご自分がブランドを運営していて、たまたま読んでくださっているなら、参考にしていただければ幸いです。
私は、仕事や趣味でモノを作る人間であるが、ブランド運営をしているわけではない。
オリジナルグッズをちょっとだけ売った経験があって、気力が湧けばこれからやってみるかもしれないという程度だ。
だから、これはお客としての、あるいは客観的にブランドというものを見た時の意見である。
そのブランドが生み出すものは、とても良い。
シンプルで、機能的で、洗練され、知恵と工夫と努力のあとが見える、大変に知性のあるモノに仕上がっている。
価格だけでみれば手に取りにくい側面はあるものの、何より「良いモノを作り、届ける」という確固たる信念を、そのブランドから感じ取ることができる。
使ってみると確かによくできている。「今までの商品はこの点が良くなかったんだよね」というところを見事にクリアした、使い手のことを考えたモノである。
それを作ったクリエーターから、「消費者にとって本当に良いモノを届ける」という使命をもって、自らの感性を使い、モノ作りに真剣に取り組んでいるということが感じ取れる。
業界の明日を変えるという、ギラギラした側面も持っている。
クリエーターとして完璧である。
また、そのブランドは、出来上がったモノがどのような思想の元で、どんな過程を経て作られたものか、商品説明も企業理念も併せてきちんと説明できている。尋ねればおそらくすべて答えてくれる。どんな些細なことでも。
私はそのブランドの商品を買ったが、ある理由により、実は購入を一瞬躊躇した。
そのブランドを顧客対応という面でみた場合、クリエーターの目あるいは販売担当の目が、お客の方を向いているとは必ずしも思えないのである。
「その一言なんだよね」「その手間なんだよね」という部分が、モノには向いているものの、本当の意味でお客に対して向けられていないように感じられるのだ。
モノを通してお客を見ている一方で、お客の心そのものを見落としているように、私には感じられる。
先日、私はホテルでのランチショーに参加した。車椅子で参加すること、ナイフを使わなければならない食材は一口大にカットしてほしいこと、食事は1人でできることを事前に伝えておいた。
私が席に着くと、ドリンクにはストローが差してあった。スープはカップに入れてくれる旨の申し出があった、もちろんステーキは約束通りカットされていた。
他にも、宿泊施設がお客に対し、料金に含まれない心使いの行き届いたサービスを行っているという話を度々耳にする。
モノを作って売ることと、接客に特化したホテルと比較することに無理があるのは100も承知だ。
一流のシェフは接客をする必要がない。
その無理な話を、モノを作って売るブランドはしなければならない。
ホテル並みのサービスを求めているわけではない。
「こうされたら嬉しいな」「こうされたら嫌だな」という、人間関係において必要な”ちょっとした”ことがなされていれば良いのだ。
私がここで言及しているブランドには、まだその部分が足りていないように感じる。
足りていない理由も私はわかっている。だから、私はものすごく難しいことを要求している。
ブランドがそのことに気づいていたとて、現段階でそれが難しいことも、私は100%理解している。
しかし、それが出来るようになると、そのブランドの品格は格段に上がると私は確信している。
ブランド運営をしている方は、モノを通して人を見るだけでなく、お客の心そのものを見てみてほしい。
その一言、そのひと手間が、お客の信頼感と満足感に導くということを。
お客はモノが欲しいだけではない。
モノの向こうにある作り手の温かい心を求めているのだ。