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香りと気分に対する洞察力

昨夜、寝る前にディプティックのヴェチヴェリオという香水をほんの少し手首周りにつけた。
ヴェチヴェリオはヴェチバー、日本語で言うベチバーをテーマにしたグリーン・ウッディ系の香りである。
柔らかいパウダリーフローラルの奥に、ほんのり感じる草の汁と土のような匂い、その野生的な匂いが奥行きとなって花々を引き立てている。

布団に入ってから気づいたのだが、寝る前の香水、いわゆる寝香水としては何となく違うなという感じがした。
その晩、初めて使ってみたので、香りに対するデータが私になかった。寝る前にそれを使ったのは、間違いではなかったが、正解ではなかった。

私は、その日がたとえどんなに酷い1日だったとしても、眠る前だけは幸せな気持ちでいたいと思っている。
悲しいことがあった日には、それすらも材料とし、慰めの物語を作り、現実から離れ、夢を見る手前の「夢」を創り出している。
そんな時間にベチバーは違う。
もっと優しく、夢見るような香りが、私の夜のお供としては最適だ。

香水を選ぶ時に、私は膨大な手持ちの中から気分に合うものを選び出すわけだが、なぜ気分と一致するものが選べるのか不思議でならない。
その日の天候・湿度・季節はもちろん、明るい気持ちになりたいのか、優しくなりたいのか、デキる女になりたいのか、強気でいきたいのか、そういうことを一瞬のうちに見定めて、記憶の中にある香りのデータから選び出すのだ。
日によっては、単純に「この香りを嗅ぎたい」という時もある。

香りは、今足りないものを補ったり、今あるものを増強させたり、とにかく今日1日あるいは寝る前のひと時を気分良く過ごすために役に立っている。

先述の通り、なぜ今欲しているものがピンポイントでわかるのか、その理由はわからない。
ただ、香りのデータが自分の中に蓄積されていくにしたがって、単なる直感だけではない、自分の気分や感情に対する洞察力も同時に上がっているように思える。

でも、読んでくださるみなさんにひと言申し上げておきたい。
寝る前に新しい香水を試すなんて無謀なことはお控えください。
選び方を失敗すると眠れなくなりますよ。

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