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静けさと躍動感と畏怖の念 〜サノマ8-17〜

なだらかな傾斜のある松林に私はいる。
松特有のガサガサとした固そうな表皮がくねった幹に沿って這いつくばり、そこからやはりガサガサとした力強い木の香りが漂ってくる。
足元の土は黒くフカフカした柔らかい。湿った匂いが立ち昇る。
暗い色をした海と街並み、赤い鳥居、更にその向こうには青々とした木々が繁った山並みが見える。
海からは汐の匂いがやってくる。私の髪は湿気を帯びて少しゴワゴワしてくる。
時折風に乗ってやってくる金木犀の香りで、今が秋なのだと気づく。
私がここに来る前に、松の根元のキノコを食べに何らかの動物がやってきたかもしれない。
まるで「お前なんぞが来るところではない」と声が聞こえてくるような動物のフェロモンの匂いが感じられる。
自然の躍動感と畏怖の念を、私はどのように受け止めよう。

実は私はこの香りを1年前から知っている。
昨年のサロンドパルファンで購入したサノマのお香8-17松風だ。
それを焚きながらウトウトしていた私は、金木犀の並木道を散歩している懐かしい風景を思い出した。

金木犀の並木道を散歩した

という経験はないにも関わらず、私には明確にその風景がまるで体験したかのように感じられた。
この香りをフレグランスとして纏ったら、どんな風景が目に浮かぶのだろう。

そして手にしたのは、ボトルに詰められ今年のサロンドパルファンで販売されたフレグランスの8-17松風、それを纏ったときの印象が冒頭に書いた風景だ。


静寂感のあるお香と、躍動感溢れるフレグランス、同じ香料を使ってこんなにも違うものなのだろうか。

フレグランスでは木や海藻やムスクなどの香料がしっかり感じられる。かと言ってそれぞれの香料がバラバラなのではなく、きちんと調和をとっている。

香りの中心…私にはこの香りは砂時計の形に感じられるが、真ん中のくびれた部分から、青春時代を思い出す時のようなキュンとした印象の花の香りがする。それが木・海藻などの男性的なファセットに女性的な柔らかさを与えている。
それを下支えしているのが、アニマリックなムスクだ。

このフレグランスを纏うには少し勇気が必要だ。
こんなに力強く迫ってくる香りに、私は立ち向かえるのだろうか。

お前は私に勝てると思っているのかい?

キノコを食べに来たあの何者かが、私をジッと見つめている。

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