
天に住んでる友達へ
ねぇ、こちらは猛暑が続いているけど、お空の上は快適ですか?
8月の今くらいだろうか、はっきりとした日にちは覚えていない。
もう15年以上前になる。
ある晩、夕食が終わった頃に電話がかかってきた。
しばらくして、電話を受けていた母が目を真っ赤にして私の部屋に入ってきた。
彼の母親からの電話だった。
中学生のとき、彼も私もお互いの存在は知っていたが、彼の母親と私の母の生年月日が全く同じということがわかってから、家族ぐるみでお付き合いをしていた。
そして彼と私は、お互いの母親を含めて定期的に食事をしたり、ゲームをしたり、コンサートに行ったりしていたし、先輩・後輩ではあるが、勉強や資格取得ではライバル的な存在でもあった。
それに、お互いに好意を持っていることもわかっていた。
友達とも違う、恋人とも違う、友達以上恋人未満みたいなものとも違う。
そんな状態でありながら、私は私でフラフラしていて、私たちは何も進展しなかった。
そして、卒業してしばらくの後、年に一度会うか会わないかになり、話すことも世界も微妙にずれ、疎遠とまではいかなくても、やり取りすることはほとんどなくなった。
葬儀の日、彼の妹から、彼は20歳まで生きられないかもしれないと言われていたことを聞かされた。
それでわかった。
彼の気持ちは薄々気づいていたが、彼がはっきりとアプローチはしてこなかったのは、そういう理由だったのかもしれない。
たった一度、彼は私への想いを電話越しに伝えてきたことがあった。それだけだった。
彼が亡くなった日から、私は毎晩泣いていた。
30日か40日か。
布団に入り、部屋が暗くなると毎晩涙が溢れた。
そして、あれからたくさんの年月が過ぎていった。
彼は時々夢の中に現れる。
現れた後しばらくすると私に何かが起きる。
人生を大きく変えたり、あるいは軌道修正したり、偶然とは言い切れないほど、彼が夢に出てきた時は何かがある。
最近出てきてくれないのは、もしかしたら、このまましばらくは幸せだよということなのかもしれない。
お空の暮らしはどうですか?
知っての通り、あれから私にはいろいろなことが起きました。でもこうして元気でいられるのは、きっとあなたが見守ってくれてるからだよね。
たまには夢に出てきても良いんじゃない?
ほら、あなたの好きな中島みゆき聴こうよ。
相変わらず良い歌歌ってるよ。
でも少し歳をとったかな。
私もね。
あなたは歳取らないね。
羨ましいよ。
いつか私がそちらに行ったとき、太っておばちゃんになった私を見て驚かないでね。
じゃ、また何かあったら知らせてね。