ただそこにある建築物
雨で寒い日だった。
その日はバスを乗り継いで、少しだけお洒落な…といってもいわゆる”お洒落”とは程遠く、それでも田舎町にしてはマシな大型モールに行く予定だったのを急遽変更し、バスに乗って10分で着く大型スーパーに行った。
”大型モール”と”大型スーパー”と書き比べたように、スーパーはスーパーでしかなく、私はそこでは最低限の必要なものと、食品しか買わない。
たいして買わないのなら、凍えるような雨の日に車椅子でわざわざ出かけなくても良いじゃないかと思うかもしれないが、この外出を逃すと、次に外に出られるのは1週間後だ。それまで私は自室の壁しか見ることができない。ドロドロの砂利道だって、雨に打たれてしょんぼりした草木だって、背中を丸めていそいそと歩く人だって、見ないよりマシなのだ。
いつもなら通院の為にバス停で待っている高齢者、今日は1人もいなかった。駅方面からやってきたバスも、あまり人を乗せておらず、途中のバス停はスキップした。
午前10時過ぎ。
平日の昼間は空いているスーパーも、祝日は混むだろうとの予想に反し、どのフロアもガラガラだった。
ランチ時のフードコートも、午後の食品フロアも、行列という言葉を知らないかのようだった。以前はあんなに並んでいたハンバーガーチェーンだって、ガラガラなのだ。
唯一並んだのは100円均一ショップぐらいだろうか。ただそれは祝日の混雑のために混んでいるのではなく、動線が悪いためだった。
100円均一ショップでクリアファイルを買おうとした。手に取るとペラペラで使い勝手が良くなさそうだった。そういえば母が、輪ゴムが前より細くなって弱くなったと言っていたのを思い出した。
幸い、文具フロアでしっかりした厚みのクリアファイルが98円で売られていたので、そちらを購入したが、この品質はいつまで維持されるのだろう。
ここは政令指定都市とはいえ、バスの廃線や減便が少しずつ増加している。
大型スーパーも大型モールも、もちろん百貨店も、驚くほど人が少ない。
スーパー内、モール内には空き店舗がかなり目立つ。
こうして国力は落ちていくのだろうか。
外国人に株を買われ、3000円のカレーや6000円の海鮮丼が飛ぶように売れるという。
私が子供の頃に持っていた東南アジアの貧しい国々のイメージ、それがもはや日本の姿だなんてにわかには信じがたい。
しっかりした造りの家に住み、スマホを持っているのに、ちゃんとした服を着て、毎日ちゃんと食べられているのに、とりあえずの生活が出来てしまっている間に、あちらもこちらも衰退していく。
雨に濡れ、冷たい風が肌を突き刺す。
活気のない、大きいだけの建築物が、ただそこに座っていた。
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