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言語獲得の「臨界期」について

言語教育の世界に「臨界期」という言葉がある。これは言語教育だけに限らず、おそらく発達心理などのような分野にもあると思われる。例えば、一定期間、横縞しか見えないような環境に子猫を置いた後に通常の環境に戻すと、その猫は縦の動きには反応しないという。いくら猫じゃらしを振っても横に動くものについては戯れるけれども、縦の動きには反応しなくなるというものだ。


言語を習得する場合も、十分に発達していないある一定の期間に獲得した言葉は母語として定着するが、それ以上になるとネイティブと同じになることはないという。もちろん、努力次第でネイティブ並みにはなるが、一般的にはそうならないというのが学説だ。
この学説については、大学の英語の時間に聞いたことがある。大人になってから言語を習得する場合は文法学習が必要であり、決してネイティブと同じにはならないそうだ。しかし、そんなことはないと思いたかった私は、私でなくてもこの臨界期説を払拭してくれる人がいるに違いないと思い続けてきた。


ところが科学的にそれは証明されているそうだ。最近見ているYouTubeの「ことラボ」という番組でいくつかの実験を知った。
何らかの関係で生まれてから6歳くらまで大人から言葉を教わる機会がなかった子供でも、その程度の年齢であれば言語を母語としてを獲得できる。しかし、同じように幼少期に言語を獲得する機会が失われた大人は、その後教育によって言語を学んでも私たちが使っているようには話すことはできなかったそうだ。つまり母語として言語獲得には臨界期が存在することが証明されている。

そもそも、なぜ大人になると母語並みに新しい言語が獲得できないかというと、子供の頃は大人の庇護が必要であり、そのために言葉を獲得する必要があった。大人になれば自分で生活できるから、改めて言葉を学ぶ必要がない。その能力は退化していくということだ。
現代では大人になって外国とやりとりする必要が生じ、そのために外国語を学ぶ必要が出てきた。元々そういう能力が備わっていないのだから、苦労するのは当たり前だ。
もしも、こういった生活が何千年~何万年と続けば、もしかすると人間の言語獲得に臨界期はなくなるかもしれない。そんな日が来たら面白いだろうなと思う。


私を含め現代人にはいまだに言語獲得の臨界期があるので、私はたどたどしいスペイン語やフランス語を話し続けることになる。それが上達したとしてもネイティブになることはない。
そうわかっていても挑戦し続ける学習者ってすごいじゃないか!…と思いながら、度々直されて凹む私である。


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