[短編小説] ハイブランド服をまとった男たち
私は、高級ブランドの服で全身を固めた男が好きです。それも、思わず吹き出してしまうほど、ブランドのロゴがはっきりと分かる服じゃないとイヤです。そして、上下ちぐはぐのブランドを着ている方がいい。例えば、グッチのTシャツにルイヴィトンのパンツを合わせるとか。
私が好むハイブランドの服
私が思うハイブランドとは、フランスやイタリアの老舗ブランドのこと。ヴィトン、グッチ、ヘルメスなどが該当する。また、ギラギラしたブランドの方がいい。アルマーニやフェラガモも老舗ブランドの類に入るが、何となくコンサバで成金思考の派手さには欠ける。
着ている人の印象が薄くなるくらい、ロゴが強調されている服が好ましい。そう、そのブランド服に「着られてる感」がないとダメ。私たちが歩いていたのを見かけた知人から、「先日一緒にいた、あのグッチ男は誰?」と言われるレベルじゃないと気がすまない。
とにかく、派手なロゴでブランド名がすぐ分かり、着ている本人の影が薄くなるくらいがいい。
ハイブランド服のコーディネート
ブランドは1つだけではなく、たくさん取り入れてほしい。つまり、ちぐはぐなコーディネート。手持ちのブランド服を盛れるだけ盛って、可能な限り高額にしてほしい。
ロゴが全面に出た服がいいと言ったが、スポーツブランドを取り入れるのは厳禁。ナイキやアンダーアーマーは私の好みではない。高級スポーツブランドが着たいければ、私に会わない日に、球蹴りして汗が絞れるくらい着ればいいのだ。
そして、ハイブランド男の服装の金額が結構いい線行ってたら「今日は、おいくら?」と聞くようにしている。金額を教えてくれるときの、その顔がたまらなく可愛い。
私が選ぶハイエンド男の実情
友人たちからは「もっと洗練されたハイブランド男を見つけたら?」とよく言われる。彼女たちが言う「洗練されたハイブランド男」は、通常は1つか2つにブランドをしぼり、出しゃばったロゴの服を着ることはない。彼らの全身からは上品な印象が感じられ、時計や靴、更には車も高級品である。そんな男といたら、私は窒息してしまう。
それとは反対に、私が選ぶハイブランド男は、国産の時計や車さえ持っておらず、靴を1、2足買うのが精一杯。おそらく将来は高級時計や車を購入したいのだろうが、現時点では貯金や積立てNISAをする余裕もなく、今を精一杯生きている。そして、フリマでのトラブルで、ときどき精神状態が不安定になったりする。
私のハイブランド男との付き合い方
ハイブランド男には、私の方からもっとブランド品を買うように煽ったり、そのお金遣いをとがめたりするようなことは一切ない。その日のコーディネートの金額を聞くことはあっても、服のコーディネートを大げさに褒めたり、ましてやケチをつけるようなこともしない。そうしたハイブランド男に憐れみの念を持ったことさえ一度もない。
私が見る限り、彼らは今を精一杯生きていて、少しばかり大柄なところはあるかもしれない。でも、ハイブランドの鎧を脱いだとき、彼らの心はとてつもなく繊細だったりする。