
Grace Blanc de Blancs 2015
ブドウ畑にも山からの北風が吹き付ける季節となりました。
地元、山梨の勝沼ではブドウの収穫が終わる頃になると、民家の軒先を干し柿のカーテンが鮮やかに彩る光景が見られます。
私の実家でも、百目柿という渋柿を吊るして天日干しを行い、自家製の干し柿を作っているのですが、山々からの「おろし」によって干し柿はぎゅっと甘味が凝縮します。
この時期に降雨があるときれいに柿を干すことができません。ブドウと同じように、自然が産み出す農産物には毎年異なる滋味があることを実感します。

さて、12月18日に「Grace Blanc de Blancs 2015」が発売となりました。
低収量で育てた三澤農場産シャルドネを丁寧に圧搾し、シャンパンと同じ製法による瓶内二次発酵を行ったスパークリングワイン。瓶内での滓との接触期間は5年間です。
標高700mの清々しい酸と、白ブドウのみによるしなやかさはブラン・ド・ブランならでは。一本一本手作業で仕上げたきめ細やかさがエッセンスとなり、ピュアな味わいを引き立てています。

2015年は、一言で言うと「変化に富んだ年」
春先の低温から萌芽期には一気に好転し、短時間の萌芽となりました。その後、開花期の梅雨の影響を受け「花ぶるい」という現象が起き、結実数は少なくなりました。
8月末から9月にかけては、まとまった降雨があったものの、10月に入ると、豊富な日照量と晴天に恵まれた(降雨量わずか28㎜)ことにより、花ぶるいが自然な収量制限につながりました。カベルネソーヴィニヨンや甲州などの晩熟品種は、過去一番の熟度を得られた年でした。
グレイスワインのスパークリングワインは、全て瓶内二次発酵による長期熟成型を目指しています。
そのため「Grace Blanc de Blancs」に見られるように、収穫を行ってから6年後にリリースされることも多く、発売の際はその時の収穫年にタイムスリップをするような感覚になります。

「Grace Blanc de Blancs 2015」の発売に際し、2011年産~2015年産の5ヴィンテージに亘る垂直試飲セミナーも開催させていただきました。
2011年産と2012年産は、滓との接触期間を36か月熟成としていましたが、2013年産の一部より60か月熟成と進化しました。
長期間の熟成によってかえって風味が損なわれることもあるので、慎重な選択が求められるのですが、私自身の経験からお話しすると、やはり滓との接触期間が3年と5年とでは、味わいのあつみが別物です。
一般的な瓶内二次発酵スパークリングワインの造り方
収穫
↓
圧搾
↓
アルコール発酵
↓
ティラージュ(糖と酵母を加え、瓶内での二次発酵開始)
↓
瓶内での熟成(グレイスワインの場合、36か月間~60か月間)
↓
ルミュアージュ(滓をボトルネックに集める作業)
↓
デゴルジュマン(ボトルネックに集められた滓を凍らせて除去、瓶詰め)
↓
出荷

デゴルジュマン(滓の除去)を行った瓶詰め後の熟成も当然影響はしますが、デゴルジュマン前の熟成が味わいに大きな変化を与えます。
そして醸造家にとっては、発酵を終えた酵母の滓というものがやはり神秘的なのです。

垂直試飲セミナーでは、各ヴィンテージの特徴とともに、瓶内での熟成期間の長さが味わい深さに貢献していることを確認しました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

今年も残すところあとわずか。
どうぞ御身大切にお過ごしください。