〜heldioガイド〜【T】田辺春美先生
heldioとは?
・慶應義塾大学文学部の堀田隆一先生が「英語史をお茶の間に」をモットーにVoicyで毎朝6時に配信されているラジオ
・このガイドは、heldioを楽しむための道案内となることを願い、お茶の間の住人が作成しているものです。
・アルファベットのAから順にheldioにまつわるキーパーソンやキーワードを紹介します。
\今日からあなたもheldioリスナーに/
田辺春美先生(成蹊大学文学部英語英米文学科)
久々に先生紹介の記事となるが、今回もheldioご出演回をもとに話を進めて行きたい。
田辺先生と言えば、穏やかで温かみのあるお声が印象的であるが、まずは異色の?!ラジオ番組に関するトークから。
#320. 田辺春美先生との対談 かつても英語史のラジオ番組があった!?
人それぞれ好みがあるが、学習ツールの1つとして「ラジオ」はいつの時代も一定数のファンがいることだろう。落ち着いてゆっくり聴くのも良いが、ながら聴きができるのも嬉しい。heldioは音声メディアを利用して日々英語史をお茶の間に届けているが、英語史の「先輩」ラジオ番組がかつて存在していたという。田辺先生が高校生の頃に聴かれていた番組の正体とは…
・ラジオ英会話番組「百万人の英語」
・パーソナリティは、かの有名な英語学者渡部昇一先生
・語源の知識を基に英単語を解説
といういくつかのキーワードから、懐かしい!あの番組のことか!とピンとくる方もいらっしゃるだろうか。
田辺先生は、このラジオ番組がきっかけで昔の英語に興味を持つようになり、その後大学・大学院にて英語史を専攻されたそうだ。
果たしてheldioリスナーからも未来の英語史研究者が誕生となるか?!
その前にheldioを聴いて英語史を勉強してみたいと思いました!と入学してくる学生は既にちらほらいるのではないか。
いずれにせよ、今後が楽しみである。
『英語語源辞典』にまつわるエピソード
語源の話が出たが、英語史という分野は知らなくとも、単語の歴史に関心がある人や語源の知識を活かした単語学習法に馴染みがある人は意外と多くいるのではないか。
さて語源と言えば、「世界一である」と堀田先生が激推しの語源辞典があるのをご存じだろうか。その名は、研究社出版の『英語語源辞典』である。語源好きの方にはぜひとも愛用していただきたいが、なんと田辺先生はその編集に携わられたお一人だという。その時のお話が伺える対談回がこちら。
#787. 寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社,1997年)のスゴさをご紹介 --- 田辺春美先生との対談
辞書・辞典作りにはどのような過程があるのか興味津々であるが、当時大学院生であった田辺先生がご担当されたのは、原稿の「調査・照合」というお仕事。OEDやMEDなど他の辞書を参照しながら各語義の初出年を確認したり、記号表記の多い語源欄の書き方が決まりに従っているかを点検されたそうだ。
さらに田辺先生がイギリス・グラスゴー大学を訪問された際の『英語語源辞典』にまつわる心温まる&誇らしいエピソードも。当時Historical Thesaurus of Englishを編纂中であった同大学にはその編集用の部屋があり、洋書が立ち並ぶ中に『英語語源辞典』が肩を並べて置かれていたという。日本語で書かれているため実用ではなく、記念に飾ってあるのだろうかと疑問に思い尋ねたところ、「いえいえ、毎日使っていますよ」との回答が。英語話者の研究者が知りたいのは主に語源欄の記述のため、その箇所なら日本語に習熟していなくても欲しい情報が読み取れるとのことであったそうだ。
日本語で書かれた英語の語源辞典が世界的に評価され、活用されている現場があると知ることは何とも嬉しい限りだ。
『英語語源辞典』を入手したいという意欲が高まった皆さん、heldioではフォロー体制が整っています!『英語語源辞典』を読むシリーズにて、凡例ページをひたすら読んで味わったり、1単語を取り上げて「読み方」を解説してくださる回があるので、使いこなせるだろうかという心配は不要である。ぜひ手もとに置き、語源や英語史の世界にどっぷりと浸かってみよう。
17世紀も忘れないでね
とは何とも気になるタイトルであるが、こちらは本紹介の対談回にて田辺先生から発せられたお言葉だ。
#790. 『近代英語における文法的・構文的変化』 --- 田辺春美先生との対談
紹介している本
秋元実治 (編著). 2023年.『近代英語における文法的・構文的変化』開拓社.
同書は15〜20世紀までを世紀区切りにし、世紀ごとに執筆者を分けるというユニークなスタイルを取っている。その中で田辺先生は17世紀をご担当された。内容としては、いくつかの共通項目(句動詞、仮定法、補文)のほか、各世紀の特徴と考えられる文法・構文の変化が個別に取り上げられている。
それでは17世紀とは、一体どのような時代であるのだろうか。
田辺先生曰く、世紀始めはシェイクスピアの活躍や欽定訳聖書の誕生など英語史上に大きな影響を与えた出来事があるが、その後は間が空き、18世紀のサミュエル・ジョンソン著『英語辞典』や規範文法が注目されることが多い。
ではあまり面白みがない時代なのかと言うと決してそのようなことはなく、すべて歴史はつながっている=17世紀は地味だけど重要かつ通過点となる世紀なのである。
具体的にどのような変化が見られるのか、2つピックアップしてみよう。
共通項目の句動詞
句動詞は「動詞+不変化詞」という構造を持つが、用いられる不変化詞に流行り廃りがあることをご存じだろうか。
例えば現代英語ではforthはあまり使われない一方、outやupが頻出する。
時計の針を戻すと、forthは17世紀中に頻度が下がることが確認されるが、outやupにすぐに取って代わるのではないとのこと(これらの使用が拡大するのは19世紀以降である)。
進行形
進行形が発達するのは18世紀以降と言われ、確かに17世紀における生起数は圧倒的に少ない。しかし進行形を取るのは元々は往来発着の意味を表す自動詞に限られていたところ、他動詞への拡張が見られる。また、17世紀後半に向けて進行形の頻度が増えている。
以上のことから、変化とは急にAからBに移り変わることではないこと、「変化」と呼ばれるものは多層的に成り立っていることがわかるのではないか。
17世紀以外についてもheldio上で各執筆者との対談が実施されているので、前後の時代も併せて全て聴いてみると良いだろう。もちろん、本も手に取っていただきたいところだ。
英語史ライヴにご出演予定
英語史って何だか面白そうと最近思い始めた人、heldioを聴くことが日課になっている人、英語史沼にどっぷり浸かっている人、そんな誰しもが満足すること間違いなしのビッグイベント「英語史ライヴ」の開催が2024年9月8日に迫っている。英語史ライヴでは、Voicyにて朝6時から12時間連続で生放送が配信される。配信時間の長さにまずは目を見張るが、別名「英語史エンタメ・デイ」とも呼ばれるこの企画の魅力は他にも多々ある。
英語史や英語学研究者の先生方が多数ご出演
・田辺先生もゲスト出演されます!
・ご出演予定番組:15時〜15時55分「近代英語の魅力を語る」秋元実治先生、福元広二先生とご一緒の対談形式
・秋元先生と福元先生のお二人も上記『近代英語における文法的・構文的変化』の執筆者でいらっしゃるため、予習として読んでおくと当日のお話に対する理解が一層深まるかも!?
・堀田先生曰く、学会でも重鎮の先生方がこれだけ一同に会することは珍しいとのこと
そのほかの魅力
英語学や語学関係の出版社が多数協賛
プレミアムリスナーは生放送配信会場に対面参加可=公開収録に立ち会える
となっており、まさに関係者一同で英語史を広め、楽しみ尽くす1日と言えるだろう。
出演者や番組表等の詳細は、主催団体であるkhelfの特設ホームページに掲載されているので要チェックだ。またheldio通常回でも新情報が随時解禁されるので、それらを聴きながら当日を楽しみに待ちたい。
田辺先生や堀田先生をはじめ、英語史研究者の方々にお目にかかり直接お話しをしてみたいと思った皆さんに朗報です!
今からでもプレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」に加入すると、基本的にはライヴに対面参加ができるとのことなのでぜひご検討を!
「英語史の輪」について詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
〜heldioガイド〜【R】レギュラー放送プラスα(helwaへの誘い)