タイさんの取材ヨレヨレ日記⑤ デスクってなに?
はじめは、訳も分からずに現場を走り回るだけの記者たち。だんだん経験を積んでくると、記者クラブの責任者である「キャップ」になります。キャップは、いわば記者の現場監督。最前線で取材の指揮をとるだけでなく、部下たちから出てきた原稿を手直しし、本社にいるデスクに送ります。
「デスク」は、記事のチェック役兼プロデューサーです。連載のテーマを決めて、各クラブのキャップに指示。また、日々の紙面の責任者として、上がってきた原稿を手直しし、記事に仕立てます。
デスクが夕刊担当の時は、朝8時に着席。紙面ができあがる14時くらいで、お役御免です。
ハードなのは朝刊デスクです。お昼過ぎに出社してから、すべての紙面が完成し、他紙の情報も入ってくる朝3時過ぎまで働きます。多い日は100本を超す原稿に目を通し、隅々までチェックしたうえで、再取材の指示や書き直しを命じます。
こうした日々の紙面づくりだけではなく、自分が担当する分野(金融、官庁、民間など)の連載について企画を考えたり、キャップたちと意見交換したり、眠る間もなく、ひたすらバタバタと働き続けます。「デスクは1年やったら成人病、2年でうつ病、3年やったら、ばったり過労死」とも言われる、過酷な役回りです。
体力自慢の私は、このデスクを4年務めました。1年間に3000時間の残業をこなした官僚時代(実は私、新聞社に入る前は中央省庁の官僚でした)も身体はきつかったのですが、新聞社でのデスク時代も負けず劣らず疲れましたね。
そんな私から見て、「最悪だな」と思うデスクがいます。映画やテレビドラマにもなったベストセラー小説「クライマーズハイ」の主人公です。
この男は、御巣鷹山での日航機墜落事故という、超超超大事件の担当デスクに抜擢されながら、ことごとく判断が遅れます。墜落現場にたどり着いた記者が締め切り間際に送ってきた原稿を、迷い続けているうちに紙面にはできず。部下がつかんできた大きな特ダネも、ぐずぐず紙面化を迷っているうちに、他紙に先にスクープされてしまいます。
デスクにとって重要なのは、現場の記者を信じることです。たとえ誤報だったとしても、すべての責任を負って紙面に載せるのがデスクです。誤報だったら、デスクが責任をとって左遷されれば良い。フィクションとはいえ、クライマーズハイを読むたびに、あるいはその映画やテレビドラマを見るたびに、ものすごくイライラが募ってきます。
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