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マネジメント合宿からの大きな一歩は、組織改革の勇気と覚悟
こんにちは。ジーピーオンライン広報チームです。
ジーピーオンラインでは年に2回「マネジメント合宿」が開催されています。
管理職を中心に実施されたマネジメント合宿では、いったい何がおこなわれていたのでしょうか?
代表の豊永と、参加者の部署責任者である奥野に、合宿内容について詳しくお話を伺いました。
マネジメント合宿の経緯と背景
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――まず、今回の合宿参加にはどなたが参加されていたのでしょうか?
豊永:マネジメント合宿は、原則としてチーフ以上の役職者と役員が参加します。現在は13名いますね。そしてオブザーバーとして約3名を追加した合計16名で実施しています。オブザーバーは毎回テーマに応じて選出しており、例えば今回は東京オフィスから3名、大阪から1名参加してもらいました。
――オブザーバーのメンバーは緊張しそうですね
奥野:前回と今回でもオブザーバーはがらっと変わっているので、「なぜ自分が?」と思う人もいるかもしれません。逆に「なぜ選出されなかったのか?」と思う人がいてもおかしくないくらい、選出理由は毎回変わります。
豊永:議論するテーマに沿って僕が選出しています。オブザーバーに求めているのは、現場の視点や率直な意見を伝えてもらうことで、議論に深みが出たりするんですね。今回もそういった意味では、オブザーバーのみなさんには大いに活躍してもらいました。
――そもそも、マネジメント合宿を始めた背景についても教えてください
豊永:会社をより良くするためには、マネジメント力の向上が不可欠です。会社自体が抱え顕在化している課題と、マネージャー個々が抱えている課題や悩みを抽出し、解決策を見いだすことが目的です。また、マネジメント層の意識改革と、それに伴う組織全体の成長を促進するためでもあります。
豊永:あと、もうひとつ。会社(役員)とマネージャー間の関係構築の狙いもあります。近い距離感で時間をともにすることで、関係性の向上が見込めるからです。普段会社ではできない議論が活発におこなわれることを期待しています。
顧客満足度向上をテーマにした研修
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――今回の合宿テーマについて教えていただけますか?
豊永:今回はWebサイト制作における「顧客満足度の向上」をテーマに取り上げました。制作物の品質だけでなく、お客さまが本当に求めていることに対して十分に応えられていないという課題が浮き彫りになっていることが背景にあります。
――具体的にはどのような課題があったのでしょうか?
豊永:一部の直接取引のお客さまに対して、顧客理解の不足や十分なコミュニケーションが取られていないことから、お客さまの満足度を上げられていないケースが見られました。
奥野:以前は、広告代理店をはじめとしたパートナー企業さまとの間接取引が大半だったのですが、ここ数年で直接取引のお客さまが急増したことも背景にあると思います。間接取引と直接取引とでは、求められる私たちの役割が違い、それぞれの役割に最適な体制を構築する必要があります。その体制構築に改善の余地が残っていると考えており、あらためてどのような体制を構築するべきか話し合いました。
――間接取引と直接取引では、それぞれどのようなことが求められるのでしょうか?
奥野:はい、下記の図がわかりやすいと思いますが、広告代理店をはじめとする「間接取引」のお客さまから求められることは「制作」のプロフェッショナルになることです。一方で「直接取引」のお客さまから求められることは、顧客理解を深めたうえでお客さまとワンチームとなってプロジェクトを推進することです。
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豊永:間接取引のお客さまから求められるものは、頼りになる制作パートナーであり、直接取引のお客さまから求められるものは、自分たちを深く理解してゴールに導いてくれる専門家です。このように求められるものが異なる場合は、それぞれに最適な体制が存在します。しかし、間接取引に最適化された体制のみですべてのプロジェクトを推進していたため、直接取引においては我々の力が十分に発揮しにくい状況が一部生じていました。
――その課題に対して合宿ではどのように取り組まれたのでしょうか?
豊永:当初、私たちは体制に問題があるとは考えておらず、まずは「なぜ顧客満足を満たせないのか」というテーマに立ち返り、その答えを探るところから始めました。
豊永:デザイン思考のフレームワークを用いて、4つのチームに分かれて取り組みました。各チームでお客さまのペルソナを設定し、なぜニーズを満たせなかったのかを分析してニーズを満たすためのアイデアを出していくという流れになります。興味深かったのは、4チームがほぼ同じような分析結果 に至ったことです。
奥野:同じ分析結果ということがわかってからは、ワークショップの形式から、豊永さんのファシリテーションによる16人でのディスカッションに変更されましたね。16人で議論できるのかと心配になりましたが、とても有意義な議論になりましたし、みんな集中していました。
顧客満足度を向上させる要因は何か
――白熱した議論が続いたとのことですが・・・どうなったんでしょうか?
奥野:まずは、豊永さんがワークショップ内容を整理され、顧客満足を満たした、つまり成功したプロジェクトの成功要因について話し合うことから始めました。当然、参加者の多くには成功体験がありますので、それぞれの成功体験を語り合って、共通する要因がないかを探ることになりました。
豊永:成功要因として共通していたのは、プロジェクトチームのメンバー全員が顧客に対する理解度を深く持っていたことです。逆に、成功したとは言い難いプロジェクトでは、顧客理解が一部のメンバーだけに限られており、理解が不足しているメンバーのコントロールが難しくなる傾向がありました。その結果、顧客を深く理解しているメンバーに負担が集中し、プロジェクト全体の進行や成果に悪影響を及ぼしてしまうケースが見受けられました。
――メンバー全員が顧客理解を深めなければ、プロジェクトは成功しないということでしょうか?
豊永:そのとおりです。プロジェクト成功の最大の鍵は、「どれだけ顧客を深く理解できているか」という点に尽きます。顧客を深く理解できていなければ、コミュニケーションが円滑に進むはずもありませんし、私たちが制作するWebサイトのクオリティが向上することもありません。結果として、そのプロジェクトは成功から遠ざかってしまうことになります。
豊永:限られたメンバーだけではなく、プロジェクトに関わる全員が顧客理解を深めていかなければなりません。なぜなら、プロジェクトはチームワークを最大限に発揮することを前提としており、各メンバーが円滑に連携を強化していく必要があるからです。一部のメンバーだけが顧客理解を深めていても、チーム全体のパフォーマンスが向上するわけではありません。
奥野:そこから、顧客理解を妨げる要因は何かを議論していた際に、現在の制作体制に欠点があるのではないかという話に発展しました。
――現在の制作体制とは、どのようなものなのでしょうか?
奥野:現在の制作体制は、先ほどお話ししたとおり、広告代理店をはじめとしたパートナー企業との間接取引に最適化されたものです。この体制は、制作のプロフェッショナルとしての役割を全うすることに特化しており、顧客を深く理解しているパートナー企業さまの良き制作パートナーとして、高品質なWebサイトを提供することを目的に構築されていました。
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豊永:この体制は完成度が非常に高く、窓口となるディレクターが情報を集約、一元管理することで効率よくプロジェクトを進行することができました。また、制作を担うデザイナーなどのリソースは、社内の管理部門が一括で管理しアサインしているため、高い生産性を維持することが可能でした。さらに、プロジェクトにメンバーを固定せず、必要なタイミングで最適な人員を必要な制作工数分だけアサインするという方法を採り入れることで、アサインの柔軟性を高める工夫もおこなっていました。
奥野:今振り返ると、この体制の実現がジーピーオンラインの成長を加速させた理由のひとつと考えてもいいかもしれません。この手法を採り入れている制作会社はほとんど見られなかったように思います。非常にユニークな体制を構築していたと言えます。
――成功と言えた体制に問題があるということでしょうか?
豊永:この体制自体に問題があるわけではありません。この体制が有効に機能する場合もあれば、そうでない場合もあるということです。特に直接取引のケースでは、この体制でプロジェクトを進めた際に、一部のお客さまにご満足いただけない状況が発生してしまうことがあります。
豊永:具体的には、直接取引の場合、お客さまから求められるものが多岐にわたるため、顧客理解がしっかりできていないとその期待に応えることが難しくなります。その状態で先ほどの体制でプロジェクトを進めると、顧客理解や対応のすべてをディレクターが背負わなければならなくなります。
奥野:ディレクターが過剰に負担を抱えると、プロジェクト全体のバランスが崩れるだけでなく、対応の質にも影響が出てしまうんです。そのため、チーム全体で顧客のニーズを共有し、それぞれが役割を持って対応できる仕組みを構築する必要があります。そうすることで、顧客満足度を向上させるとともに、チーム内の負担の偏りを減らすことができるはずです。
奥野:そういった議論を通じて、メンバー全員が顧客理解を深め、それぞれが主体的に考え、協働するチーム体制が必要ではないかという結論に至りました。
バリューチーム制の導入を決断
――具体的にはどのような体制になるのでしょうか?
豊永:合宿時の議論を踏まえ、現在僕が構想を練っているのは、メンバー全員が顧客理解を深められるチームをつくることです。そのため、従来の方法を改め、プロジェクトごとにメンバーを固定してアサインする形を採用します。そして、顧客の情報やニーズを各メンバーが共有しながらそれぞれの役割を果たすことで、プロジェクト全体の一体感が高まり、より質の高い成果を生み出せるようになります。基本的には、メンバー全員が顧客となんらかの接点を持つようにすることで、顧客への理解がさらに深まると期待しています。
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奥野:一見、どこにでもあるような体制に見えるかもしれませんが、メンバー全員が深い顧客理解を持っている点が最大の特徴です。また、従来の体制以上に、メンバー個々のコミュニケーション能力や情報管理能力、スケジュール管理能力に依存する形となるため、個々の能力の高さとチームとしての連携がこれまで以上に求められることになるのではないでしょうか。
豊永:逆に言えば、従来の体制では制作メンバーが制作だけに集中しやすいというメリットがありました。それ以外の業務は管理者やディレクターが担っていたため、納期に間に合わないといった事故がほとんど起こることはありませんでした。
奥野:そうですね。従来の体制は、品質を一括管理していたため、非常に安定した制作が実現できていたと思います。
――従来の体制のメリットとなる点を、新しい体制にも採り入れることは可能なのでしょうか?
豊永:はい。どちらの体制も一長一短がありますので、新しい体制では可能な限り双方の「いいとこ取り」を狙いたいと考えています。メンバー全員が顧客理解を深め、自ら考え協働できる仕組みに加え、管理者によるプロジェクトの総合的な管理を組み合わせることで、個々の能力を補いながら納期の遅延などを未然に防ぐ体制を構築します。
豊永:この新たな体制を「バリューチーム制(仮称)」と呼ぶことにし、管理者からディレクター、エンジニアなど10名程度の小規模なチームを複数つくり、それぞれが独立したチームとして機能するよう目指すものとなります。それぞれのチームが各プロジェクトを受け持ち、お客さまと一体となって価値を共創していく体制をつくっていきたいと考えています。
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豊永:もう少し具体的にお話ししますと、バリューチーム制(お客さまとの価値共創を実現するための小規模な独立チームと、職種別の教育を目的としたチームで構成されたマトリックス組織)に、ジョブグループの概念を加えたマトリックス組織を目指しています。各バリューチームが、お客さまとの価値共創の主体となり、同時にジョブグループで専門性を高めていく。この二つの軸で組織を構成することで、顧客志向と専門性の両立を図りたいと考えています。
――大きく組織が変わりそうですね。実現に向けての課題はありますか?
豊永:まずは、組織改革に取り組む「勇気」を持つことが重要だと考えています。実はこれまでにも、このバリューチーム制について社内で何度も議論を重ねてきました。今回の合宿とは違う観点から、バリューチーム制の概念を取り入れるべきだという意見が強く出ていた時期もありましたが、その時は組織を大きく変える勇気を私たちが持てなかったというのが正直なところです。
奥野:過去の議論には僕も参加しており、バリューチーム制の実現が難しく何度も断念したことを覚えています。しかし、今回の議論を通じて、顧客満足度を向上させるという避けては通れない課題に対し、勇気を持って組織改革に踏み切らねばならないという答えにたどり着きました。この改革を必ず成功につなげなければいけないと感じています。
豊永:また、その他の課題として挙げられるのが人材の確保です。新しい体制では、プロジェクトにメンバーを固定する形となるため、各チームにキャパシティや能力の偏りが出ないよう、バランスよく人員を配置する必要があります。そのためには十分な人材を確保することが求められるため、今後の採用活動は非常に重要な位置づけになるのではないでしょうか。
奥野:ジーピーオンラインは、制作会社としては比較的大規模な人数を抱えているため、一度に組織を変えるリスクを考慮すると、段階的なアプローチが必要ではないでしょうか。そのため、1〜2年の時間をかけて徐々にシフトしていけるよう、計画を立てていきたいと思います。また、新しい体制にあわせて評価制度や教育の仕組みも見直す必要があるため、課題が山積みの状況です…。
豊永:たしかに乗り越えるべきハードルは多いですが、その先に実現できる未来は非常に明るいと確信しています。この取り組みは、お客さまの満足度を向上させるだけでなく、働くスタッフのやりがいを高め、キャリアの構築にも大いに役立つと考えています。
マネジメント合宿の総括
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最終的に、「さらなる価値を提供するために、私たちはバリューチーム制を導入し、人の心を動かす価値共創パートナーになる」という結論を宣言し、合宿を締めくくりました。
――参加者たちの報告を見ていると、合宿が非常に有意義なものだったことが伝わってきました
奥野:そうですね。普段から管理職の人たちが会社やそこで働く人たちにとって「より良い環境づくり」について考えているからこそ、活発な意見交換がおこなわれ、有意義な議論になったのだと思います。全員が共通して抱えている課題を見つけ出し、それについて議論を重ねたうえで結論を導き出せたことで、心地よい達成感と一体感を得ることができました。
以下に、実際に参加したスタッフの合宿に対する所感を掲載しています。いかに建設的な議論がおこなわれたかを感じていただけるのではないでしょうか。
マネージャーNさん:日頃から「どうすればいいのか」を常に考えているからこそ、数多くの意見が出てきて、付け焼き刃的な意見はひとつもなかったように思います。私自身も、ここ数年うまく言語化できずに模索してきたものが、合宿のおかげで明確な言葉にすることができたと感じています。
チーフUさん:みんなで議論することで生まれる気づきや発見は、やはりありますね。前回の研修でも本音で話し合うことができましたが、今回はそれ以上に良い議論ができた気がします!
オブザーバーFさん:マネジメントの皆さまの考えや討論に直接触れる機会はなかなかないので、会社を本気で良くしよう、そして顧客や社員に対して満足のいく結果を出そうとする熱気を強く感じました!とても楽しい議論でした。
――最後に、この変革に込める思いをお聞かせください
豊永:これまでの成功体験や既存のやり方に固執せず、お客さまに対してより良い価値を提供するためには、会社として勇気を持って変化させていく必要があります。この変革は、スタッフの成長機会にもなり、最終的には会社の持続的な発展にもつながると信じています。
取材後記
定期的に広報が実施している社内アンケートでは、自由に意見を入力できる 設問項目を設けています。その中で、「マネジメント合宿の内容が不透明」という意見がありました。
インターナルコミュニケーション(社内広報)の不足が一因であり、広報担当としては不徳の致すところです。
今回は、マネジメント合宿に参加していない筆者が、自身が理解できるまで取材を重ねて、社内外問わず正しく伝わるよう記事にまとめました。
ジーピーオンラインには4つの行動指針があります。
1.顧客視点で価値を創造する
2.チームで真価を発揮する
3.変化を恐れない
4.利他の心で行動する
顧客視点から、常に“ありがとう”を考えられる人でいれるようにと定められています。
今回の合宿で議論にあがった「バリューチーム制(仮称)の導入」は、メリットだけを見ると4つの行動指針すべてを包括した理想的な体制の導入になります。
デメリットは大きな変革となるため、これまでの管理体制は通用せず生産性低下や関連制度の見直しなど、目に見えないリスクがあることです。ただ、実現すれば、ジーピーオンラインの歴史の中でも大きな改革となることは間違いありません。
創業25年目のいま、勇気と覚悟が求められています。