探求 第2章(算術の基礎編(4))
加算が10を超えると常に1多い世界の住人が採用している算術は、不合理だ。なぜなら、われわれの算術の方が、よりシンプルだからだ。
--- では、なぜあなたがたの算術は、10を超えると常に1少ないのか。1少なくない我々の算術の方がより単純ではないか。
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1+1が10を超えると常に1多い世界の算術は、10を超えた際にいつも1減算すれば、われわれの世界と行き来できる。
これはつまり、たんなる表現の違いではないか。
ここで「たんなる」には「取るに足らない」という意味が込められている。
算術にとって、この2つの表現の違いは、取るに足らない事象だと言いたくなる何かがある。表現の違いを超えた向こう側にある、より価値のある「単一の算術体系」とでも言いたくなる何か。
違いを違いとして放置せず、「ただの違い」として同一性に回収してしまうわれわれの習性は、一体どこからやってくるのか。
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万有引力定数をある用途に使う場合は、有効桁4桁で十分とする。しかし別の用途では、桁数を増やさないと精度が足りない。
そして万有引力定数の測定は(重力の作用があまりに微小であるため)どうしても測定誤差や精度の限界がつきまとう。
足し算をある用途に使う場合は、4桁で十分とする。しかし別の用途では、もっと桁数を増やさないと精度が足りない。
そして加算の検算は、どうしても誤差や精度の限界がつきまとう。
前者には意味があり、後者はナンセンスだ。
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ここに、自然を相手にする体系と、純粋な形式を扱う体系に、根本的な違いがあると考えたくなる誘惑の発生源がある。
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