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探求 第2章(文脈の決定不可能性(4))

探求 第2章(文脈の決定不可能性(1))


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「Aがその相手よりも背が高い(低い)と言われるということは、それを判定する第三者の目に、Aと相手が並んでいる光景が見えているはずである。その光景を構図として見たとき、人物の頭を結ぶラインが傾いており、Aの立っている方へ上に向かってラインが傾いている状況なら、Aの背が高いのである」--#1

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このアプローチは他よりいくぶん優れているように見える。

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第一に背が「高い」や「低い」という概念を前提していないため、循環にならない。第二に人それぞれの特性に依存しておらず非常に一般的だ。

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確かに、例えばAの相手が台に乗っている場合、相手の方へAから「ライン」が傾いているにもかかわらず、Aの方が背が高いかもしれない。あるいは、相手がAの2メートル後ろに立っている場合、Aと相手の頭のラインは身長どうりの傾きを示さない。

しかしそうであるなら、#1の条件に「正しい条件の元で」と注記を加え、注記の中でいわば「ルール違反」の状況を列挙すれば良いだろう。列挙すべき状況は膨大な数になるかもしれないが、人が身長を比べるときに高さをごまかせる手段はたかがしれているだろう。

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--#1を受け入れたとするなら、身長の高低はラインの傾き状況に全面的に依存することになる。

では、ここではじめの主題、つまりAが相手よりもその状況で、かつその状況に限り背が高い(低い)と言われ、そうとしか言われないような状況が得られただろうか。

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--#1に任意の条件(背伸びしてはならない、同一の線上に立たねばならない、云々)を加えたとして、それは確かにAの背が高いと言われる状況の規則かもしれない。

だがある人がある場面で、目の前の二人について頭を結ぶラインの傾きに着目するとして、それはどんな「ライン」なのか? われわれは上の条件を読んで、なんらかの線を思い浮かべるかもしれない。しかし#1はただ「ライン」としか書いていない。一体、#1の条件が、身長の高低を決定するときの状況として、われわれに何を強いてくるのだろうか。

仮に「ライン」を「細い、太さ1cmのまっすぐな棒」と言い替えてみる。そうだとしたら、なぜ1cmなのか(10cmではいけないのか)、「まっすぐ」とはどの程度か、そしてわれわれはその棒を、Aとその相手の何処に、どの様に乗せ、どのように傾きを計ればよいのか?

この問いへの答えはこうだ。

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とにかく、*適切な*しかたで、そうしなさい

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この言い方に、われわれの言語の謎とその答えが、全て集約されている。


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