触るな。(短編小説)
久々に再会した友人。
中学以来だったので15年ぶりくらいだろうか。彼は相変わらず陽気なやつだ。
当時はそこまで仲が良かったというわけではなかったが、先日の同窓会で再会したときに話が盛り上がり後日の今日、サシ呑みに至る。
中学時代の懐かしい話から、同窓会の時のに再会したアイツは今こうだったとか、仕事の話とか、未だ独身の2人は結婚についてだったりを語り合った。
これが気の合った要因かもしれない。
周りは皆妻子持ちがほとんどで、来年は小学校だとか、3人目を考えているだとか、そう言った僕ら2人にとって浮世離れした会話についていけずにいた。
身を寄せるようにして、互いに独身を嘆いていたのがコイツだったのだ。
それにしても、僕はずっときになっていたことがあった。
半年ほど前の同窓会でもそうだったように、今のコイツは今日もキャップを被っている。
特別触れてはこなかったが、僕は薄々気づいていた。
おっと、失礼。薄々なんて言ってはいけない。
おそらく、あれだ。
僕らももう中年と呼べる年齢に片足突っ込んでいるのだから、仕方のないこと。
しかし少しイジってみたくなった僕は、仕掛けてみる。
「お前、いつもキャップ被ってるな」
「そうだっけ?」
「いや、同窓会んときもそうだったから」
「あー、たまたまじゃない?」
目を合わせてはくれない。
これはもう答えを言ってくれているようなものだ。
「ちょっととってみてよ、キャップ」
「なんで、イヤだよ普通に」
「いいじゃんかよべつに」
「イヤだよ。髪ペタンコになってんだから」
ペタンコになる髪ないくせに。と内心でツッコんで笑った。
「お前、あれなんじゃない。キテるんじゃないの?」
「キテるってなんだよ」
「いやいやとぼけんなって。いいじゃんべつに、もうそういう年なんだから」
「キテるとか年とか、何言ってんの?」
あくまでもシラを切るコイツに少しずつ腹が立ってきた。
そして、何がなんでもコイツの頭皮を拝んでやろうと決める。
「大丈夫だって。そんなもんだよみんな」
「だからなんだって言うんだよ」
「お前あれだもんな。中学んときも、デコ広かったし、髪も細かったもんな」
「何が言いたいんだよ」
「ハゲてんだろってことだよ!」
そう言って僕はニヤニヤと笑いながら、ソイツのキャップを剥ぎ取った。
しかし、露わになった頭皮を指差して笑おうとしたとき、そこに肌色は見えなかった。
そこにはペタンとした、黒色があるだけだ。
そして頭皮の代わりに、中学にはなかったものが見えた。
「___ツノ?」
ソイツのおデコの生え際あたりから生える二本のツノのせいか、それとも嫌がることを僕がしたせいか、ソイツは鬼の形相になっていた。
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