手口(短編小説)
頻りに画面を点けたり消したりを繰り返していたせいだろうか、白井のスマホのバッテリーは予想以上に早くメモリが減っている。
腕時計を普段からしていないせいだ。
何度も何度も画面を点けて時間を確認する。
今朝封を切ったばかりのタバコはこの一本で空になった。
2、3歩彷徨いたりしゃがみ込んでみたりと落ち着きがない。
黒のパーカーに黒のデニムはとても目立つような格好ではないのに、その異様な空気感は周りとは明らかに違っていた。
左手に握っていた封筒はクシャクシャになっていて、パーカーの前ポケットに突っ込んだり取り出したりしている。
「白井さんですか?」
スカイブルーのシャツを着た清潔感のある男に声を掛けられた。
あ、はい。白井は目の下までかかった前髪の隙間からそのシャツを確認した。
「どうも、黒沢です」
白井は手を差し出し、早くよこせ。と目で訴えた。
「お金は?」
「ちゃんと入ってる、確認してみろ」
パーカーのポケットから封筒を取り出し、黒沢にそれを突き出した。
確かに。封を切って中を確認した黒沢は、それを後ろポケットに差し込み、代わりに紙袋を白井に手渡した。
「_____ちょっと、よろしいですか?」
急に第三者が割って入った。
そいつもスカイブルーのシャツを着ていたが、色々とくっついて重たそうなベストを着て、警官帽を被っていた。
「なんです? おまわりさん」
釈然とした態度の黒沢に対して、白井はオドついている。
「今、通報を受けましてね。その紙袋の中身、拝見させていただきます」
白井から紙袋を奪い取った警官帽の男は、その中を確認しようと覗き込んだ。
その隙に、白井は踵を返してバタバタと転がるように走り出した。
後ろを振り向かず一直線に人混みへと消えていった。
「_____うまくいったね。黒沢さん」
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