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愛の証は紫色(短編小説)


「リン、どうしたの? それ」

リンの首元にある複数の赤い跡を示して、私は答えを解っていながらニヤニヤと笑いながら訊いた。

「新しい彼がね。情熱的なの」

語尾にハートが付くような彼女の口ぶりに私は、ウザあい。と返した。

まだ付き合いだして1週間ちょっとくらいだというのに、彼氏は毎晩求めてくるのだと言う。いや、付き合いたてだからこそだろうか。

やはり同棲という形がそうさせるのだろうか。リンは一人暮らしのその彼の部屋に住み込んでいる。

「どんな人?」
「みんなとフットサル行った時にね、もう一つのグループもやっててそこにいたの。それで、一緒にやりませんか? って声かけられたのね」
「そういうとこにも出会いあるんだ。私も行きたかったなー」
「マリは土日仕事だもんしょーがないじゃん。今度またフットサルしよって言ってるから、彼に男友達連れてきてもらうよ」

私は不貞腐れた態度を改めて、ぜひお願いします。と凛花に頭を下げた。


*****


当日、凛花のカップルも含め男女6人ずつ集まり、ちょっとしたコンパみたいな形になった。

改めて自己紹介された凛花の彼氏、ユウトは好青年でとても優しそうな雰囲気の男性だった。

和気藹々とみんなでフットサルをし、男女の親睦は予想以上に深まった。そして次回はこのメンバーで海へ行こうという予定も決まった。
私もユウトの職場の後輩、ヒカルが少し気になった。

フットサル後の飲み会も大盛り上がりの今回のフットサル合コンだったが、私にはどうしても一つだけ気になることがあった。

「なんでそんな厚着? 暑くない?」

初夏だというのに、リンはフルレングスのパンツにパーカーまで羽織っていた。
どんなに動き回って汗をかいても、パーカーを脱ごうとはしない。

「暑いけどほら。キスマーク見られるの恥ずかしいから」

そんなに身体中にキスされているのだろうか。人は見かけによらないものだなと、ボールを追っかけ走り回るユウトを眺める。

それにしても相変わらず、首元の赤い跡は消えない。


*****


やっと本格的に夏がやってきた7月下旬。
以前から計画が持ち上がっていた海バーベキューの日がやってきた。

前回のメンバーは全員集まり切らなかったものの、リンのカップルと私、そしてヒカルも参加している。

「日焼け、嫌だから」

彼女の言い分にも無理があった。
リンは今日も長袖のパーカーを羽織っていたのだ。
しかし、日焼け対策。の一点張りでそれ以上はなにも聞き出せなかった。

私はヒカルと、バーベキューをしていた場所から少し離れた砂浜に座り込んで海を眺めていた。

「今度、2人だけで遊びに行こうよ」
「ほんと? 行こういこう! 」

海と夕陽のマジックは凄いもので、私とヒカルをすんなりキスさせた。


*****


男女のグループレジャーは、遂にリンカのカップルとヒカルと私だけになって、4人で温泉旅行に行くことにした。

「実は部屋ね。4人部屋にしてないよ」
「え、ウソ? どういうこと?」
「2人部屋2つ取ってあるの。私はユウくんと寝るからね」
「ウソでしょ! 心の準備が_____」

リンは、早くくっついちゃえ。とニヤニヤ笑った。

旅館に着いてすぐに温泉へ向かう。
脱衣所で、私は言葉を失った。

「どうしたの? それ」

身体中に紫色のアザをつくっているリンは、なにが? と何食わぬ顔をした。

「アザ、痛そう。なんで」
「うん、痛いけどね。ユウくんが激しいからだよ。だから愛情たっぷりで、痛くないの」

リンはやはり何食わぬ顔をしている。いや、少し嬉しそうにすら映った。

翌日、私の首元には赤い跡が残っていた。


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