マガジンのカバー画像

いろいろ色(短編小説集)

9
色をテーマにした短編小説、集めました。
運営しているクリエイター

#青春

赤い傘(短編小説)

赤い傘(短編小説)

雨の日が好きだった。
それは初め、僕の意思ではないものだった。

虹がかかるから。
雨上がりの澄んだ空気が好きだから。

よく聞くのはそんな理由だ。
僕はいつも異議を唱える。

それは本当に雨が好きだと言えるのだろうか。
虹。雨上がりの澄んだ空気。
それは雨そのものを楽しんでいるものではなく、雨のあとのそれを楽しみにしているだけだ。
その考え方の時点で君達は雨をマイナスに捉えているのではないだろう

もっとみる
愛の証は紫色(短編小説)

愛の証は紫色(短編小説)

「リン、どうしたの? それ」

リンの首元にある複数の赤い跡を示して、私は答えを解っていながらニヤニヤと笑いながら訊いた。

「新しい彼がね。情熱的なの」

語尾にハートが付くような彼女の口ぶりに私は、ウザあい。と返した。

まだ付き合いだして1週間ちょっとくらいだというのに、彼氏は毎晩求めてくるのだと言う。いや、付き合いたてだからこそだろうか。

やはり同棲という形がそうさせるのだろうか。リンは

もっとみる