日々を綴る(20)
流氷が、ずいぶんと早く去ってしまいました。
「ちょっと沖に離れちゃったね」というレベルではなく「これはもう、今年は戻ってこなさそうだね…」というレベルです。わたしは流氷と一緒に過ごすのがまだ3回目なので、わかったようなこと言ってるんじゃないよと叱られてしまいそうな気もしていますが、そんなわたしでさえそう感じるレベルということです。本当に、儚い。
昨日は午前中だけ出勤して午後は半休を取ったのですが、用事を済ませたのち、16時半頃から30分ほどの時間を海岸で過ごしていました。
少し前までは氷と雪に覆われていた海岸も、気が付けば白の割合はあと1~2割ほど。砂浜が再び顔を出し、それと同時に、雪の中や下に隠れていたいろんなものたちの姿が見えるようになってきています。
南寄りの強めの風が吹く中、風の音と波の音を聞きながら海岸を少しだけ歩きました。あちこちにいろんなもの漂着物があるのですが、ひときわたくさんのものが散乱しているエリアがあり、近寄ってみました。
漂着物の種類は様々ですが、流木と漁具がいちばん目につきます。その次には、ペットボトルやビン(中身は入っていたりいなかったり)でしょうか。洗剤か何かのボトルや食品のパッケージといったプラスチックものがやっぱり多いのと、サンダルやスニーカーも必ずあるし、ドラム缶も毎年見ているなあ。
そんな感じのラインナップなのですが、近寄らないとよくわからない、ということがけっこうあります。
流氷がきていたときにはたくさんの人の姿があったこの海岸も、流氷が去るとお役御免といわんばかりに人の気配がなくなり、昨日も、わたしが過ごした30分ほどの間に他の人と遭遇することはありませんでした(週末なら違ったかなあ)。
日没は17時半頃なので、まだ「暗い」というほどではなかったのですが、雲もかかっていたし、少し暗くなり始めている、という時間帯。そんな中で漂着物に近寄るのは、ちょっと緊張します。
わたしの頭では想像もつかないような削られ方をした大きめの流木が海の生きものの死骸のように見えたり、細めの流木が妙に整然とそこに佇んでいて一瞬人間の骨のように見えたり、砂浜に突き刺さっていたり、這いつくばる生きもののように見えたり…。
木だとわかって安堵するわけですが、今度は近くにある漁具が突如視界に入ってきてその人工的な色にびくりとしたり、冬のある日に大量に打ち上げられた魚の残骸と目が合った気がして体がぎゅっと縮こまったり(だいたい顔の部分だけ残っている)(体も残っているものは砂浜に突き刺さっていたりもした)、砂浜がよくわからない不思議な造形をしていたりもします。
春の海はとても美しいけれど、海岸にやってきたものたちには、とにかく驚かされてばかり。
わたしにとってはこのまちで過ごす3回目の春。風のなさそうな穏やかな日を狙って、今年もまたごみ拾いをしてこようと思います。