2024年 京大 理系 第1問 (詳細な解説・解答までの道筋や定石の確認)
問題
$${ { n 個の異なる } }$$色を用意する. 立方体の各面にいずれかの色を塗る. 各面にどの色を塗るかは同様に確からしいとする. 辺を共有するどの二つの面にも異なる色が塗られる確率を $${ { p_n } }$$ とする. 次の問いに答えよ.
1. $${ p_4 }$$ を求めよ.
2. $${ \displaystyle \lim_{{n \to \infty}} p_n }$$ を求めよ.
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解説・考え方の流れ
今年の京大で出題された確率の問題です。立方体の色の塗り方を数える問題は、網羅系などで一度は経験したことがあるんじゃないでしょうか。被りに注意しなければならないため、ややこしくなりがちで苦手とする人も多いかと思います。また、意表を突かれた人が多かったと思われるのが、この問題がよくある立方体の色塗りの「場合の数」の問題ではなく、「確率」の問題であるという点です。
「立方体の色塗り?しかも場合の数じゃなくて確率なんて見たことないぞ…どうしよう」と、試験場で後退りしてしまった受験生も、当時のTwitterでの様子を見る限り少なくなかったと思われます。
しかし、この問題は確率の考え方が身に付いている人にとってはむしろ「ラッキー/取りやすい問題」に見えています。なぜなら、確率では「全てのものを区別する」ため、「被りの影響を考慮する必要がない」からです。立方体の色塗りのよくある場合の数の問題は、ひっくり返したり向きを変えたりした際に生じる被りを考慮しなければいけないのがややこしく、解く際のハードルを上げています。ですが、今回は確率なので、そんなめんどくさい被りの考慮をしなくていいんです。被りなんて無視して面を全部区別して数え上げてしまえばいいので、むしろハードルは大幅に下がっています。この点を俯瞰して見れた人と見れなかった人で、大きく差がついているんじゃないかと思います。確率の原則は「全てのものを区別する」ことであり、これにより「全事象の起こりやすさが全て等しい/同様に確からしい」となります。なお、別に全事象が同様に確からしく取れるのであれば、数え方は自由で構いませんが、一番確実なのは全てを区別することです。
ということで、解答では各面に1〜6で番号を振って全て区別しています。全ての塗り方の場合の数は$${ 4^6 }$$通りです。
(1) 6つの異なる面を、4色まで使ってルール通りに塗ることになります。まず1色、2色では無理ですね。0通りです。
(以下、解答と異なる流れになりますが) 3色なら塗ることができます。4色から3色選ぶのが$${ _4\mathrm C_3 }$$通り。対面(2,4/1,6/3,5)が同じ色じゃないと塗れず、$${ 6 }$$通り。よって$${ _4\mathrm C_3・6=24 }$$通りです。
次に4色の場合です。図を書いて試すと分かりますが、側面2ペアはそれぞれ同じ色じゃないと塗れません。ということで、側面2ペアの選び方が$${ _3\mathrm C_2 }$$通り。色の選び方と塗り方で$${ _4\mathrm C_2・2 }$$通り。残りの2つの面を2色で塗るのが2通り。よって$${ _3\mathrm C_2・_4\mathrm C_2・2・2=72 }$$通り。
あとは分母$${ 4^6 }$$ 分子$${ 24+72 }$$で計算して終わりです。
(2)次は$${ n }$$が無限大に飛んで極限の問題になります。確率の場合は特にそうですが、極限の問題では計算をする前に$${ n $$を飛ばしたときの状況を考えてみると上手くいく}場合があります。実際にやってみましょう。$${ n }$$が無限大のとき、すなわち無限に色の種類がある状況で、隣り合う面で色が被ってしまう場合ってどれくらいありますか?無限に色がある中から色が被る確率なんてそもそも0に近いですよね。よって、隣り合う面で色が被る確率もほぼ0、つまり題意を満たす確率はほぼ1になります。こんな感じで、答えを出すだけなら計算せずとも出すことができます。このように。確率の極限で実際にその状況を考えることで、答えそのものが手に入ることもありますし、何より検算で役立ったりします。あとは答えが1だとわかったので、そうなるように計算すればいいです。極限の求め方は「直接求める」「はさみうちの原理」「区分求積」など色々ありますが、解答のようにはさみうちの原理を利用して計算すれば上手くいきます。なお、答えが1だと最初に俯瞰できなくても、n色からの塗り方を3色使う、4色使う、5色使う、6色使う、と(1)のように具体的に計算しても答えは出ます。ただ、やっぱりめんどくさいので、解答のように6色の場合だけ考えてはさみうちすれば楽に処理できます。
確率の原則
全てのものを区別する
※全ての事象の起こりやすさが同じになるように, 同様に確からしくなるように数える
極限計算の定石
・$${ 公式の利用・直接求める(分母分子を次数の大きいもので割る, など) }$$
・$${ はさみうちの原理 }$$
→不等式を用意する必要がある.
不等式用意の定石は
前の設問で求めた不等式を誘導として利用
平均値の定理の利用 ☆差がつきがち
長方形・台形による面積評価 etc...
$${ 微分係数の定義の利用 }$$
・$${ 区分求積法 }$$
などなど
極限を取るときの姿勢
(特に確率)
実際に計算する前に, $${ n }$$を飛ばしたときの状況を考えて当たりをつける
ポイントチェック
□n絡みの証明で数学的帰納法を持ち出すことができた
□数学的帰納法の3つの解法セットの定石化
□(1)で、$${ a_{k+1}^2+a_{k+1}=a_{k+1}(a_{k+1}+1) }$$と式変形できた
□シグマ計算で和の中抜けの解法を連想できた
□与えられた漸化式から$${ a_{n+1}-a_{n} }$$という和の中抜けが使える形を見出すことができた
□シグマを取る際に、$${ i=1〜n }$$ではなく$${ i=2〜n }$$で取ることができた
□$${ n\geq2 }$$という条件に気をつけることができた
解説・考え方の流れ
角度の条件を満たす点の存在範囲の問題です.苦手な方は取っ掛かりが掴めないかもしれませんが,このような問題こそ定石を用いて機械的に解くことができます.つまり,苦手な人でも再現性のある方法で解けるということです.
「角度に関する条件の処理の仕方」を定石として知っていれば簡単に方針を立てることができます.角度条件の処理の仕方は主に「$${ \displaystyle \tan $$に結びつける」「ベクトルの内積を用いる」「複素数平面」「図形的な考察」の4つ}です.それぞれの大まかな使い道・メリット/デメリットについても同時に押さえましょう.
1.「$${ \displaystyle \tan に結びつける }$$」について}
例えば「$${ \displaystyle \angle\mathrm{AOB}=\frac{\pi}{4} }$$」という条件があるとき,2直線OA,OBのなす角が$${ \displaystyle\frac{\pi}{4} }$$ということで直線の傾きを用いて$${ \displaystyle \tan $$の加法定理で処理}することができます.メリットとして,計算量は比較的少なめです.デメリットとして,角を作る直線の位置関係が複数あるとき,場合分けが生じて煩雑になります.今回の問題もそのパターンです.どっちの直線が上側に来るとか指定がないので,図が複数考えられ,場合分けが必要になってしまいます.よって,この問題での利用は避けたいと判断できます.
2.「ベクトルの内積を用いる」について
「$${ \displaystyle \angle\mathrm{AOB}=\frac{\pi}{4} }$$」という条件があるとき,$${ \displaystyle\overrightarrow {\mathrm{OA}}・\overrightarrow{\mathrm{OB}}=|\overrightarrow{\mathrm{OA}}||\overrightarrow{\mathrm{OB}}|\cos\frac{\pi}{4} }$$として内積を用いて処理することができます.メリットとして,$${ \displaystyle \tan }$$のような場合分けが必要ありません.デメリットして,計算が煩雑になります.座標を用いて$${ |\overrightarrow{\mathrm{OA}}| }$$を表現するときにルートが出てきてしまう関係からです.計算の際はルートを外すために二乗する必要がありますが,条件が不等式であれば同値性が崩れてしまう恐れがあるため,細かな処理に気を付ける必要があります.ということで今回は座標平面上で1.「$${ \displaystyle \tan に結びつける }$$」が使えないということで,計算がハードルにはなりますが,この方針を選択することになります.
3.「複素数平面」
複素数平面は回転や拡大・縮小を表現するのに便利です.
4.「図形的な考察」
例えば,「定点A,Bに対して,点Pは $${ \angle\mathrm{APB}=\displaystyle \frac{\pi}{4} }$$を保って動く」などと言われたら,円周角の定理の逆より3点A,P,Bは同一円周上にあることがわかります.ポイントとして,この解法の利用に気づかないと解けないような場合があります.そこまで多く登場するわけではないですが,使える時にはクリティカルに作用するので,解法選択の引き出しには必ず入れておきましょう.非常に盲点になりがちで差がつきます.
定石のまとめは以上で,解答のように今回は「ベクトルの内積を用いる」を選択します.方針が定石に沿って選べたらあとはルートを含む計算の処理です.ルートの処理の基本は以下にまとめます.よくある注意点として,「$${ A\geq \sqrt{B} }$$」のとき,二乗するなら「$${ A^2\geq B }$$」に「$${ A\geq 0, B\geq 0 }$$」を付け加えないといけません.今回なら,解答の真ん中あたりに出てくる「$${ y\geq \frac{1}{\sqrt{2}}\sqrt{x^2+y^2} }$$」は,単に二乗して「$${ 2y^2\geq x^2+y^2 $$」とするのは大きな間違い}で,「$${ y>0 }$$」が必要です.($${ x,y }$$は原点を通らないので今回は等号を外します)
ルートの計算の注意点も定石化して頭に入れておけば,俯瞰して安定して解くことができます.
座標平面上の角度の扱い
1.tanに結びつける
メリット:計算が比較的楽
デメリット:直線の位置関係が変わる問題だと場合分けが生じる
2.ベクトルの内積を用いる
メリット:場合分けがいらない
デメリット:計算が煩雑
3.複素数平面
4.図形的な考察
☆円周角の定理の逆など,これに気づかないと解けない場合がある
ルートを含む等式、不等式の処理
$$
A = \sqrt{B} \Leftrightarrow A^2 = B \text{かつ} A \geq 0
$$
$$
・A >\sqrt{B} \Leftrightarrow A^2>B\text{かつ}
A\geq 0 \text{かつ} B \geq 0
$$
$$
A < \sqrt{B} \Leftrightarrow 「A < 0 \text{かつ} B \geq 0」
$$
$$
\text{または} 「A^2 < B \text{かつ} A \geq 0」
$$