![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160322304/rectangle_large_type_2_7a52593e0c1d61896449864910426160.png?width=1200)
【勝手な詩】 価値
一本の煙草に火を灯せば
指先から青い夢が
ゆらりと立ち上る、儚い線。
肺という黒い銀行へ
一本、また一本、預けるたび
煙は金色の利子をつけて
漂う、舞い上がる、不確かな未来へ。
煙の向こう、ぼんやりと見えるのは
隠しきれぬ後悔か、虚ろな安心か。
灰皿は残高の記録、灰色のエコー、
その残骸の中で、希望は
ゆっくりと燃え尽きていく。
それでも手を伸ばしてしまうのは
何かを掴もうとする錯覚か
あの一瞬の安らぎに
価値があると信じる心の幻か。
煙は形を変え
喉元で溶けて消え、
残るのは刺さる香りと
苦い味の投資の利息だけ。
— そして、誰が語ろうか、
その煙が紡ぐのは、命の美しい終わりか、
それとも、虚空に吸い込まれた無為か。
いいなと思ったら応援しよう!
![テツ【勝手な事務所】](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124836972/profile_3b896bb00efc17eb13f569e94948fcda.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)