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【勝手な詩】 価値

一本の煙草に火を灯せば
指先から青い夢が
ゆらりと立ち上る、儚い線。

肺という黒い銀行へ
一本、また一本、預けるたび
煙は金色の利子をつけて
漂う、舞い上がる、不確かな未来へ。

煙の向こう、ぼんやりと見えるのは
隠しきれぬ後悔か、虚ろな安心か。
灰皿は残高の記録、灰色のエコー、
その残骸の中で、希望は
ゆっくりと燃え尽きていく。

それでも手を伸ばしてしまうのは
何かを掴もうとする錯覚か
あの一瞬の安らぎに
価値があると信じる心の幻か。

煙は形を変え
喉元で溶けて消え、
残るのは刺さる香りと
苦い味の投資の利息だけ。

— そして、誰が語ろうか、
その煙が紡ぐのは、命の美しい終わりか、
それとも、虚空に吸い込まれた無為か。

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