問題解決の全体観 #36
0. 問題解決の定義とゴール
問題解決は、地球規模〜会社規模〜日常レベルと範囲が広く、大きく5つのタイプに分類される
型に対し、対象となる問題解決の定義と例を与える。
Trouble対応型
緊急度が高く、現状に大きな不具合を抱えている問題に対処する
人為ミス対応や怪我の治療
Problem解決型
不具合を抱えているが緊急度は高くないため、後回しにすることが多く、結果的に悪化してしまう問題に対処する
売上向上施策や組織改革
Potential Risk回避型
将来、TroubleやProblemを引き起こしそうなリスク要因に対して、事前に処置を施し、その発生を未然に防ぐ
メンテナンスやパトロール
Improvement Opportunity追求型
現状に甘んじず、より良い状況を目指して行う
日々の業務の効率化や自己研鑽
Theme回答型
上司や顧客などから投げかけられたテーマ(命題)に対応する
上記4つ全てに対応する
目指すべき「良い問題解決」は3つの視点から定義される
個別の視点
ビジネスの問題に答えはない。リソースの制約がある中で、質とスピードのバランスがとれた「最もベター」な解決策を創る
全体の視点
全ての問題を完璧に解決すること=全勝は不可能なので、コンスタントに勝ち星を重ねる意識が必要
時間軸の視点
自分の役割、社会情勢が変化するに従って、問題は困難かつ高度にアップデートされる。常に対応しなければならない
1. 問題解決の「型(パターン)」
問題解決には2つの便利なアプローチがある
空・雨・傘(状況・解釈・行動)
基本中の基本
解読・創案・評価・選択
解読:経験・直感・論理的思考を組み合わせ、直面している問題の本質を把握する
創案:解読した問題に対し、その解決策をいくつか創る
評価:複数の解決策オプションに対して、優劣をつける
選択:評価したものの中から、最もベターなものを選ぶ
↓基本 「空・雨・傘」↓
「空・雨・傘」が不完全なパターン
So What?(それで?)が足りない
空のみ:報連相にありがちな、事実を把握しただけのパターン
空・雨止まり:解釈だけ述べる評論家。だから何、と言わざるを得ない
Why So?(なぜ?)が足りない
空・傘短絡:解釈が勘すぎて、間違った行動や筋の悪い施策に走ってしまう
傘のみ:アイデア一本勝負。納得感がない
「空・雨・傘」の創り方
空の創り方:Fact Gathering、まずはちょっと調べてみる
雨の創り方:解釈の精度を高める
他人の解釈を流用せず、自分で考える
間違いを恐れず、精度を磨く
傘の創り方:5W1Hを意識して具体性を追求する
実際の問題解決では、「空・雨・傘」は何通りにも枝分かれする
それぞれについて、なぜ枝分かれするのか、枝分かれで使う技術(経験則)を述べる
空
問題解決における状況を全て把握するのはほぼ不可能であるなので、視点を変えて空を見る必要がある
マクロ/ミクロ
雨
人によって解釈が異なるのは当然
現実的/楽観/悲観、常識/非常識、ポジティブ/ネガティブ
傘
打ち手もさまざま
枝分かれした「空・雨・傘」には、主に2通りの階層構造になる
段取り(必要条件)
仕事(テーマ)が与えられた時に、その仕事をどういう段取りで行うか?を考える
意味合い(十分条件)
上司が仕事を与えた意図と期待されているアウトプットを考え、問題を解く
枝分かれし、かつ重層構造をとる「空・雨・傘」の創り方(イシューツリーの作り方)
ツリーを作るには、「それ」と「それ以外か」で考えるとよい。具体的な分割フレームは『完全無欠の問題解決』p.122より
価格/数量
市場/競争力
資本/非資本…etc
本書に記載はないが、横の論理(詳しくは岡田・照屋の『ロジカル・シンキング』(東洋経済)を参照のこと)を広げるステップである
↓応用 「解読・創案・評価・選択」↓
空と雨を一体化したのが「解読」で、傘を三分化したのが「創案」以降のステップである。このようなアレンジを行う理由は、複雑な問題解決において、この方がスピードと質のバランスを取りやすいから。
問題を解読する
What:何を解読するか?
データ
人の話
起こっている現象
例えば、普段の仕事を「仕事」(ある成果を出すために思考する)と「作業」(思考するために準備・実行する)に分解して捉えることで、Improvement Opportunity型の問題解決になる
How:どうやって解読するのか?
問題を見えたまま捉えるのはラスト・オプション
視点を変える
立ち位置を変える:顧客視点、虫のめ・鳥のめ
フィルターを変える:アナロジーで考える、統計的にみる・みない
問題文を言い換える
要因分析をする(要因ツリー)
グルーピング推理(帰納ツリー)
解決策のオプションを創案する
注意!:バイアスを取り除け
自分が「これだ!」と思った解決策が浮かんだら、他の解決策を思い浮かべなくなってしまう。バイアスに陥れば「致命的な漏れ」が生じてしまう
考えうるバイアスは大きく三種類。
過去の成功体験
過度の楽観
直感の過信
確証バイアス:決めつけ
部分的世界観:最近見聞きしたものに思考を奪われてしまい、狭い世界観で考えてしまう
可用性バイアス:手近にあるものを使ってしまうこと
アンカリングバイアス:最初に見たデータに誤った精神執着をもつこと
創案のコツは3つある。
漏れをなくす
What to do?とHow to do?(いつ・どこで・誰が)で分解する
ORとAND(フローやビジネスシステム)で分解する:ANDで目処がついた部分をORで深ぼる
出た案を評価する
どうやって評価項目を選ぶか?
見えやすい項目と見えにくい項目を等距離で見る
定量>定性
コスト>パフォーマンス
ベネフィット>リスク
挙がった評価項目を論理的にブレークダウンし、武装する
何を基準に優劣を決めるか?
基準点(ゼロ)を定める
現状と比べて、良くなるか悪くなるかを評価する
目指す方向性を基準にとる
個別最適化ではなく、全体最適化をとる
各オプションがその方向性と合致しているかを見る
どう優劣の度合いを表すか?
正負記号で表すのがおすすめ
評価理由は論理武装する
客観性の高い総合評価をする
条件分岐法
オプションの選定条件に優先順位をを定め、その条件に合ったものをスクリーニングしながら評価していく
ロジカル・マトリックス法
PPMに近い
評価したものから提案相手や条件に合うものを選択する
「最も効果的な解決策」と客観的に評価されていても、選択・意思決定には主観が伴う。相手を納得→行動させなければならない
人にはリスクテイカー/慎重派がいるということ、価値観が皆異なることを理解しなければならない=共感が大事
その案に内包されるリスクを緩和するプランを用意する
事前に何度か会話を重ねて価値観を共有できるような努力をする
ことで提案が通りやすくなる
!問題解決で気をつけること!
自分の組み立てたロジックを絶対的なものと信じ込み、他人の意見をきかない確証バイアス
自分で「それ以外」を探し続ける
人の話を鵜呑みにしてしまう
日頃から自分の見解、判断を持つ練習
浅掘り
具体的な答えが出るまでロジック問答をやめない
問題の根源となる要因を全て排除するネガティブ・パーフェクト
ネガティブ・パーフェクトを解決策から除外する
月並み発想
自分独自の見解を持つ、右脳を鍛える
2. 問題解決で使う「道具(ツール)」
漏れをなくすツール
対極オプション
ペア・コンセプト
論理構造を可視化するツール
要因の特定と解決策の策定
因数分解ツリー
ロジックツリー
評価する
ロジカル評価軸
ロジックツリーの作り方
問題に対し、当たり前の答えを作る
当たり前の答えの対極オプションを作る:当たり前の答えをパラフレージングし、ペアコンセプトで対極を生む
アイデアを深掘りする
粒度がおかしい時はSo What?してレイヤーを追加する
ロジカル評価軸の作り方
パフォーマンス/コストなどの感度の高いペアコンセプトを選ぶ
評価軸の基本構造を考える
評価軸を別の論理ツールでブレークダウンする
進化・深化マトリクス
ミーティングで何人かの意見を聞くと、その意見や問題認識がバラバラなことが往々にしてある。理由は、情報量や立場・見方あるいは表現方法が異なるからだ
漠然型:オープンクエスチョンやシンプルな「なぜ?」
選択型:クローズドクエスチョン、二択
仮定型:仮説で「ではないか?」
断定型:断定する
上記をぐるぐる回し、問題認識を発展させていく
仮説志向アプローチ
解読・創案・評価それぞれに対して仮説を立てる
仮説をツリー上で分解する。このとき解読の次のレイヤーに創案・評価が分岐する
脳内シミュレーションで仮説の精度と速度を高める
仮説の精度を検証するために代替案を自問自答する
仮説検証の速度を高めるために検証の段取りに対する仮説を立てる
検証・修正のサイクルを素早く回す。この時、解読の仮説検証結果は下流に反映する
注意点
右脳を使って常識を超えた仮説を出すべし
確証バイアスを捨てるべし
ゼロクリアにすべし
3. 問題解決における「思考様式(モード)」
問題解決に取り組む際の姿勢
答えを創る意識を持つ
ステイ・ポジティブ
誰もやったことなければ1番が取れる
最終成果物を常にイメージする
価値のある成果物を出すためには、クライアントを明確に意識する
最終成果物のイメージを素早く高精度で出せるようになるためには、守破離が大事。まずパクる
Complete Work
漏れがなく質の良い=完結性のある仕事をする
雑務であってもComplete Work
自分に与えられた時間をマネージして、その時間内で完結できる仕事をイメージしながら、それをやり切る
絶対に価値を出す。価値にこだわりまくる
ものの見方を変える
鳥の目、虫の目
普段見ない方(右側)を見る:定量>定性、短期>長期、ベネフィット>リスク
ビジュアライズしてみる
アナロジーで見る
流れを観る:循環型とらせん型
直感力×論理的思考力
直感力とは「体験記憶からのひらめき」である。
直感力に優れる人は問題が起こったときに、その問題に関係のある体験記憶を素早くフラッシュバックしているのだ。
直感力を構成する要素は2つある
経験・知識の広さ
経験・知識の濃さ
一方で論理的思考力とは、ものを構造的に観ることだ。
直感力×論理的思考力による問題解決は五種類ある
直感を論理で検証する
科学の世界の常套手段。ひらめきを実験で検証する
直感から論理を導き出す
ブレインストーミング。帰納法
論理に直感で肉付けする
論理だと硬い話を、例え話を交えることで伝わりやすくする
論理から直感でジャンプする
論理と直感を絡めてアイデアを創出する
事象を見て一次案を作成
一次案を構造化(グルーピングや同じ粒度感)
一次案を整理したラベルを拡張する
ラベルをブレークダウンして二次案を作る
上記全てをグルーピングして、直感でジャンプ。もう一山作る
その山を掘り下げる
問題解決の思考回路:SPM
センサーで正しく問題を感知し、メモリから体験記憶を呼び出す。
感知した問題と呼び起こした体験記憶をプロセッサーで処理して、最もベターな解決策を作る
4. 問題解決の「試合運び(ワークマネジメント)」
仕事と作業の違いを理解し、マネジメントする
仕事とは、ある成果を出すために思考すること
作業とは、思考のために準備すること、思考したことを実行すること
仕事は3ステップある
仕込み:仮説をたて、アプローチや段取りを考える
熟成:仮説の修正や評価方法の検討、実現可能性の確認
仕上げ:検討結果を統合する
仕事から逃げない
仕事は疲れるので、一日4時間が限度
仕事にはエネルギーと不確実性が伴うので、作業に逃げがち
難しい仕事からまず取り掛かる
アタマが動く時は仕事をする
手足を動かさないと不安になるが、仕事をする
プロジェクト・マネジメントにメリハリをつける
仕込みは3つ
最終成果物をイメージする。どんなメッセージ、絵姿になるのか
仮説ストーリーを構築する。手短に集めた情報から仮説を立てる
段取りのシミュレーション。仮説検証のために使う手段、かかる日数を考える
熟成は並行する
解決策を整備する
評価方法を検討する
他の可能性を再検討などをシミュレーションする
ロジックを固める
メッセージを作る
報告書の構成を検討する
仕上げは2つ
統合・まとめ
磨き
論理的に整合性が担保されているか
相手にわかりやすいか、インパクトを与えられるか
PMには注意が必要だ
仕込みと仕上げの時間をまず決める。3ヶ月PJであれば、仕込みに1-1.5週間、仕上げに1.5-2週間かける
クリティカルパス(計画を進める上で最も時間がかかり困難だが、それが終わらなければ先に進みにくいもの)を見極める
スケジュールを可視化する
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