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Today is the greatest day

夕飯を食べようとして、窓から外を見たら、空がきれいだったから、ベランダで食べることにした。ベランダにはイスの一つもない。でも一人暮らしになって食事は基本的にワンプレートなので、皿を持って出て、立って食べた。そもそも座るとフェンスで空が見えなくなる。

最近、こういう、ちょっと行儀が悪いけど、誰に迷惑をかけるでもないささいなことに生きる喜びを感じる。
夜に買い物がてら散歩に出て、アイスボックスを買ってガリガリ食べながら帰っている時にも、同じような充実感が湧き上がってきたのを鮮明に覚えている(嬉しくて2回くらいやった)。
誰からも「危ないよ」とか「早く寝たら」とか言われず好きな時に外に出て、暑い夜に冷たいアイスを食べていると、とてもささいなことだけど、生まれてから一度も手に入れられなかった自由を胸いっぱいに吸い込んでいる気がした。

もう何年かして、一人暮らしに慣れたら、同じことをしてもこれほど強烈に喜びを感じることはないだろうと、その時思った。忘れないようにしようと。あらゆることがやがて、昨日や一昨日や去年や一昨年と変わらない平凡な日常になっていく。誰かといることも、一人でいることも。そしていつか、同じアイスを食べながら、「一人は寂しい」とかなんとかつぶやき出すんだろう。

変わりゆく空を見ながらご飯を食べて、楽しくなって飲み残しのシードルも冷蔵庫から出してきて飲んだ。今日見た空も、それを見ている私も、2度と戻ってこない、そう思いながら空を見ていた。私は多分、そういう瞬間を噛み締めながら、今を生きたい人なのだと思った。

朝から在宅の仕事と家事しかしていない。食べているのも昨日と一昨日とほとんど同じメニューだ。でもこの空を見ていたら、今日がものすごく良い一日だった気がしてきた。長い人生の、一番真新しい瞬間が今なのだ。

脳内で誰かがToday is the greatest dayと叫ぶ。
ビリー・コーガンか、車谷浩司。

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