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ママパパにも知ってほしい!第4回「全身の機能向上にミトコンドリアケアを!」
みなさんこんにちは。医師の本間龍介です。
「子ども運動教室LUMO」の栄養講習第4 回は、ミトコンドリアがテーマです。
どうして運動教室なのに生物学なのかと思うかもしれません。実は、ミトコンドリアは我々の体にとってものすごく重要でユニークなトピックです。
例えばミトコンドリアは、体に占める総重量が脳や肝臓よりも大きくて、
エネルギー生産工場であり、その機能が高い人ほど高いパフォーマンスを発揮できます。今回も難しい科学の話は一切しませんので、どうぞ気軽に読んでください。
ミトコンドリアとは?
ミトコンドリアの姿はゾウリムシのようにくねくねしているので、あまり気持ちのいい見た目ではないですね。人間の細胞の数は37 兆個と言われます。ミトコンドリアは、脳、肝臓、心臓など、ほぼすべての臓器をつくる細胞に存在する細胞内小器官です。
なぜミトコンドリアが特に大事かというと、エネルギーをつくるからです。ミトコンドリアでつくられたエネルギーを ATP とよびますが、細胞の活動に必要なエネルギーの9割を担います。例えば筋肉を動かす、考える、ご飯を咀嚼するという行為、あるいは胃腸での消化や、体内の解毒(デトックス)機能にも ATP が関わっています。
体内に共生する“扶養家族”
少し余談ですが、このミトコンドリアは非常にユニークです。本来はもっと小さな原核生物であり、別の生物でした。しかし、あるとき人間の細胞に感染し、人間の体と共生するようになり、エネルギーをつくるようになったのです。そしていまや、人間のエネルギーのすべてに関わる、なくてはならない存在になりました。
そして、皆さんご存じのように、私たちの体には腸内細菌、乳酸菌なども住んでいますし、 皮膚の表面にも細菌がたくさんいます。口の中には虫⻭菌をはじめとする口腔内細菌がいます。
実は、人間は一つの個体でありながら、さまざまな生き物と一緒に暮らしている状況です。地球には数十億の人間が住んでいますが、一人の人間は、そんな地球をしのぐ扶養家族を抱えているわけです。腸内細菌だけでも 100 兆個におよびます。
ミトコンドリアも、それらと同じように私たちと共生する、いわば自分の扶養家族だととらえてください。
体重の10%を占めるミトコンドリア
さて、ミトコンドリアは当然ながら目には見えませんので、自分の一部としてリアリティを感じる方は少ないでしょう。例えば心臓ならば映像や写真などで見る機会があるので、赤い拳くらいのものを想像できます。
しかし実は、体重の 10%ものボリュームをミトコンドリアは占めています。
例えば 40kg の方なら、体重の 4kg はミトコンドリアです。脳であっても、重量が1.5kg 前後ですから、体重の 2%くらいにしかなりません。心臓なんて200〜300g 程度、血液を加えても非常に小さいです。脳や心臓と比べても、圧倒的な重量です。私なら体重が 80kg ありますので、8kg がミトコンドリアです。結構なボリュームであることがわかります。
ところで、肝臓には肝臓内科、心臓であれば循環器科や心臓内科、脳には脳外科があるのですが、ミトコンドリア内科というものはありません。ミトコンドリアはほぼすべての細胞に分散している細胞内小器官だからです。臓器のように非常に重要ですが、いまいち注目されづらいことが残念です。
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ミトコンドリアの働き
ミトコンドリアの仕事は、わかりやすく言えばエネルギーをつくることです。筋肉を動かす、消化をする、解毒をする、ものを考える、判断するといったほぼすべての行動に、このミトコンドリアの ATP 産生でつくられたATP というエネルギーが使われます。
つまり、私たちが行動するために必要なエネルギーをつくるためには、ミトコンドリアをマネジメントしなくてはいけないのです。
この ATP はまるで「通貨」だと表現されます。代金と引き換えに肉や魚を買うように、ATP は利用されます。エネルギーを必要とするさまざまなことに利用できるという重要性から「通貨」と表現されるのですね。
ちなみに、ミトコンドリアは母系遺伝です。メンデルの法則で言えば、ママパパの情報は半分ずつ子どもに伝えられますが、ミトコンドリアに関しては母親由来です。
もし、ママがアスリートならば、ミトコンドリアでのエネルギー産生効率がいいお子さんになりやすいでしょう。つまり、どんなにパパがトップアスリートであっても、この点に関する影響はないわけです。ここがほかの遺伝子形式とは異なる点ですね。
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ミトコンドリアの機能障害
ミトコンドリアには、機能障害を起こすさまざまな要因があります。最近のレポートには、その機能障害と自閉症との関連を指摘するものもあります。
LUMO は原始反射の統合をメインにした運動教室ですが、その原始反射をマネジメントするのが脳幹です。この脳幹をケアするには、ミトコンドリアをケアする必要があります。
なぜならミトコンドリアも脳と同様に油でできているためです。食べて入る油のみならず、体内に入るあらゆる油の影響を受けます。
具体的な弊害要因は、毒素です。毒素は脂溶性です。
以前、毒素で脳の機能が低下するというお話をしましたが、ミトコンドリアも同様です。ミトコンドリアの機能が低下するとエネルギー効率が落ちるので、うまくエネルギーをつくることができなくなります。
ですから、体に悪いものを食べることや、空気中の毒素や毒素のついたものにたくさん触れることは、脳とミトコンドリアの両方に影響を生じます。わざわざ毒素をとることはないでしょうが、例えば服用した薬の副作用で元気がなくなるのは、ミトコンドリア機能障害の一つではあります。
次回のテーマでは毒素についてじっくりお話ししますが、ミトコンドリアに悪さをするものは、公害病の元になるような有害重金属、農薬、殺虫剤、環境汚染、大気汚染、有機溶剤。このほか、病気、手術、絶食、脱水によってもダメージを受けます。
逆に、好ましい環境に生きることは、脳の機能を上げるだけでなく、ミトコンドリアの機能をキープすることになるのです。
ミトコンドリアに悪影響をおよぼす三要因
ミトコンドリアに最もダメージが大きいものは、脱水、発熱、感染です。
脱水: 水分不足こそ最大のダメージ
ミトコンドリアは水がないとエネルギー効率が下がってしまいます。
ミトコンドリアは人間の体重の10%、細胞質の40%を占めますが、水分摂取をしっかりしなければ、エネルギーをうまくつくることができません。
そして、人間の体の 70%は水分です。ちょっとやそっとの水分摂取では、運動中のエネルギーをうまくつくることができないことがわかりますね。
運動中は水分に加え塩分をとり、ミトコンドリアをみずみずしく保つことが重要です。 例えばサッカーでもラグビーでも、後半になれば当然のことながらパフォーマンスが落ちますよね。 試合の前半よりもエネルギーをつくることができない、あるいは使えなくなっていく理由の一つは脱水です。
脱水すると、ミトコンドリアはエネルギーをつくることができず、筋肉を動かせなくなり、脳の判断も遅くなります。塩分も含めた保水をしてあげることで、ミトコンドリアのサポートをしましょう。
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発熱: オーバーヒートで機能が低下
スポーツを⻑時間続けていると、体が熱くなりますが、これもミトコンドリアの機能障害に結びつきます。さらに頭も熱くなりますが、そういった場合は脳がオーバーヒートしているだけでなく、うまく脳が機能しなくなっています。
もちろん体はある程度温めないとうまく動かないのですが、熱くなりすぎることも動かなくなる原因です。クールダウンしてあげることも重要です。
運動中は、季節に関わらず飲水を促し、状況に応じて適宜休憩を加えます。ミトコンドリアを絶えず動かせる環境を整えることが重要です。
感染: アフターコロナの後遺症にも
風邪やコロナやインフルエンザに感染して元気がなくなる原因も、ミトコンドリア機能障害です。これは当然のことで、ウイルスが直接影響しているだけではありません。ミトコンドリアは、療養や運動不足のように、動かさないことによって元気をなくすこともあるのです。
別の理由として、ウィルスが体から出ていかないことも機能障害につながります。最近、アフターコロナというワードを聞いたことがあるでしょう。療養後に体調が戻らない、または何かしらの機能が落ちることも、まさにミトコンドリア機能障害です。
アフターコロナで慢性疲労が残っている方の検査をすると、ミトコンドリア機能障害を起こしているケースが多いというレポートが増えてきています。
本来は感染して時間が経てば、感染したウィルスは体から出ていくはずです。しかしウィルスがうまく出ていかなくてミトコンドリア機能障害だけが残り、ずっとだるい状態が続いてしまうこともあります。
ここでさらに注意しなければならないことは、感染症で体調の悪いときにとる食べ物です。一般に食べやすいといわれる食べ物から毒素を入れてしまうことで、ミトコンドリアの機能を低下させるのです。
例えば、感染症のときにうどんやヨーグルトやゼリーなどを食べませんか?詳しくは、次回テーマの毒素でも触れますが、前回までにご説明したグルテンフリーとカゼインフリーも参考になります。体調の悪いときは、それに伴う行動がミトコンドリア機能障害をもたらす可能性も知っていただきたいと思います。
ミトコンドリアをサポートする方法
最後に、ミトコンドリアの機能をサポートする主な方法をお伝えします。
砂糖、小⻨、加工食品を避けましょう。その理由は、これらに毒素が含まれるからです。ミトコンドリアのエネルギーを多大に消費し疲弊させてしまいます。
ミトコンドリアにとってタンパク質は重要な栄養素です。噛む力の弱い子どもには、肉ならばひき肉にして食べさせる工夫も大事です。
ミトコンドリアにはビタミン、ミネラルが必要です。果物や緑⻩色野菜、さつまいもやとうもろこしなど、抗酸化力の高い食品を食べましょう。
ミトコンドリア自体が油であるため、中鎖脂肪酸を含む食品、いわゆるオメガ3のよい油を食べましょう。よい油をとればエネルギー効率を上げることができます。
ミネラルを含む水分を補給しましょう。ただの水やお茶は脱水を助⻑します。塩分を含んだものを飲水しましょう。
このほか、ミトコンドリアを増やす方法もあります。例えば、有酸素運動でミトコンドリアの数が増えることはわかっています。ウォーキングでもジョギングでもいいです。ただ、過度の有酸素運動は、ミトコンドリアを錆びさせて悪化させる原因になるので気をつけてください。