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水を走らせない、段差の作り方

「水が走る」というのは、雨などが降った時に、地面にしみ込まずに流れ去ってしまう状態。うんちに例えると下痢の状態です。勢いよく水が動くので、地面に吸収されず、流量が多いと勢いが増して周りを削り取ってしまいます。

台風や大雨で降水量が多いと、目につきます。

水が集まりやすい形状のままだと、どんどん周りを削ってしまうので被害が大きくなります。崩れるのを抑えるためには、できるだけ早めに対処していきたいです。

水が走りやすいのは、こんな状態です。
 ①集まる
 ②傾斜がある
 ③つるつるしている(抵抗が少ない)

走らせないようにするには、この逆をやっていきます。
 ① 分散させる
 ② 水平×垂直の段にする
 ③ 凸凹にする、硬いものにぶつける

手順

本流を見極める

地中を流れる水の場所を確認してから、作業を始めます。全体の流れがわかると、要所が見つけやすいです。
高いところ、離れたところから眺めたるマクロの視点と、地形や植生、地表のようすを観察するミクロの視点から、どこが水脈なのかを探します。

要所がわかったら、そこの水脈を中心に、分散、水平×垂直、凸凹にします。このみっつの要素を同時に叶えられるのが、「段」です。

段をつくる

段差を作ることで、以下のような効果があります。
 垂直部分で水が下に落ちて地面(硬いもの)にぶつかる
 水平面が流れを緩やかにする
 水平面が水を湛えてしみ込みやすくなる
 段を乗り越えるときに分散される

これは、棚田やワサビ田も同様のはたらきがあります。
実際に、2011年の夏に起きた紀伊半島大水害でも、那智勝浦町色川地域は、棚田の上流にあたる斜面では土砂崩れが抑えられていました。

やり方

土が多く、杭を安定して刺せるなら①柵(しがらみ)が、水の通り道で土がほとんどなく、石や砂利気味のところは、②石積みが向く場合が多い。

その① 柵(しがらみ)

1)溝を掘る

等高線と平行に掘る。

2)杭を打つ

枝がかかる間隔で杭を打つ。表面を焼いた杭だとさらにいい。

枝を杭にかけるように横に置く

周りに落ちている枝をまとめて、横向きに置く。ツンツン出ている枝は切って、籠を編みこむように差し込んでいく。枝は、密集して動かないほうが、微生物がつきやすい。ゆらゆら揺れたり、空間が多いと、微生物が生息しにくい

3)土を平らに入れる

平らに撒くように、土を入れる。かまぼこ型にすると、段の形状が維持されやすい

4)炭を平らに撒く

炭を平らに撒く。炭は、多孔質で微生物がつきやすい。植物の育ちやすい土壌になる

5)落ち葉を平らに撒く

土の表面を隠すように、落ち葉を撒く水分を維持し、葉も分解されて養分になる

7)土を入れる、炭を撒く、落ち葉を撒く・・を繰り返して、層を作っていく

その② 石を積む

1)斜面に溝を掘る

根石の重心が山側へいくように、傾斜して掘る。

2)根石を置く

根石は、山側に重心がいくように安定させる。手前(谷側)に重心がくると、手前に滑り落ちてきてしまうため。根石の上に石をさらに積む場合には、上面の形状にも注意したい。

3)石を積む、グリ石を入れる

根石の上に石を積む。積んだ石が安定するように、山側にグリ石を入れる。載せた石の重さで、根石を抑えるように積む。さらに積む場合には、上面の形状にも注意する。
石は常に山側へ重心がいくようにする

段は、ランダムに配置する

段差は、ランダムに配置したい。水が分散され、勢いがつきにくい。

山側からきた水が、段差にぶつかって分散される。段を越えていくにしたがって、勢いが弱まる

一列に段差を作ると、列の両際に水が集まり、走る。段差をつくることによって、逆に走る部分を作りだしてしまう。

水は両際に集まるので、勢いがつきやすい

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地中をめぐる水講座は、毎日おひとりから開催しています。


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