水の”走らせすぎ”に注意
沢の整備は、ついつい、水を走らせてしまう。
でもちょっと待って!
沢は川の起点になるところ。走りすぎると下流への影響も大きいです。
沢はもともと走りやすい地形なので、走らせずに「潜らせる」ことを意識するといいのかも、と先日の体験で感じました。
走った水を抑えるには、
①硬いものにぶつける
②角度を変える
③分散させる
などの方法があります。
逆に、流れを集めたり、岩を取り除くなど、水通りをよくすると、水は走ってしまいます。
沢整備は、水を流す(=走らせる)のが楽しい作業です。とどまった流れを促すような気がするからです。
でもその作業によって、大水が出たときには、さらに水が集まりやすくなり、土地を崩したり削ったりする遠因になるかもしれません。
走らせすぎた失敗
実は、地中の水と空気を走らせすぎて、復帰するのに苦労している場所があります。復旧作業をはじめていますが、まだまだかかりそうです。失敗の事例として共有したいと思います。
7年前に「風の草刈り」を知って、敷地の裏側にある斜面の草を刈りました。
刈ったあとはなかなか草が生えてこなくて、「よしよし、風の草刈りが効いてる!」なんて思ったのですが。
ところがこれが大きな間違いでした。草や低木が抑えていた土砂が、流れてしまうようになったのです。ずるずると崩れていってしまうので、その後は草が生えることができません。崩れる部分が大きくなり、大木の下の土も減ってきています。
そのままではまずいと思い、2年前から流れる土砂をおさえる造作をしています。
走る水をおさえるには、「段差」が有効です。
段差のはたらきは、棚田が参考になる
棚田は、
①水平×垂直
②空気抜けてしみこみやすい
③分散させる
といった働きがあります。
具体的には、
① 水平×垂直
傾斜している土地を、水平×垂直に角度を変えることで、垂直に落ちる水が地面に当たってスピードが弱まり、水平面をゆっくりと動きながらしみこんでいきます。
②空気が抜けてしみこみやすい
空積の石垣によって空気が抜けるので、上から落ちてきた水が地中にしみこみやすくなります。
③分散させる
等高線に平行に作られた段差は、縁で水や空気が平らに分散されて、水が走ろうとする力を弱められます。
段差を作る方法は、石積みと柵(しがらみ)のふたつ
造作は、斜面のいちばん谷側にあたる部分から、はじめました。谷側が安定すると、上からきた土砂がそこで堰き止まるので、崩れにくくなると考えたからです。沢の出口に棚田があることによって、土砂崩れが防げるのと同じです。
今回の場所は、土砂が崩れやすく土がやせているので、柵を作れません。
木が生えているところには、枝の束を横にかけて、柵的な効果を狙っています。
土がほとんどなくガレているところは、石を積んで段を作り、炭と枝葉、土で土壌が安定するようにしました。
崩れやすい土砂なので、石積みは低く、小さく作っていきました。一列にならないように、地形を読みながらランダムに作ります。
枝葉の分解が進むと、湿った土が細かな石などを抱えてくれます。植物も生えやすくなるので、さらに崩れにくくなるでしょう。
炭は、多孔質で微生物がつきやすい
と言われています。
実際に、土壌をつくるのにかなり効果があることがわかりました。炭と土を埋めたところと、そうでないところで、黒土ができる量が大きく違っていました。明らかに、炭を入れた場所の方が有機物が早く分解されていて、黒くて植物が育ちやすそうなフカフカの土になっています。
炭は、枝葉などの有機物を広げた上に、平らに一面に撒きました。この上に土を一面に撒いて土に入っている微生物に働いてもらうようにします。
また、段差を作った山側の溝(斜面変換線)の部分にも、炭を入れました。
できた水平の面に、コンポストトイレで出た有機物や、生ごみなどを平らに均して載せて、その上に土と落ち葉、炭を撒いて、あとからも薄い層を重ねていきます。
水平部分に草木が生えて落ち着くと、土砂の流出もおさまりそうです。まだちょっと時間はかかりそうですけどね。
くれぐれも、水の走らせすぎに、注意しましょう。自戒を込めて。
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地中をめぐる水講座は、毎日おひとりから、開催しています。