草の勢いを弱めるには
これからの季節は、草が生えていたほうが、断然、涼しい。草の勢いをおさえて、お互いに気持ちよくいられるためのコツを考えてみた。
庭の草を観察しながら、いかに植物の勢いをおさめるのかを、試している。
ポイントは3つ。
① よーいドンを少なくする
② 生長点をマメに刈る
③ 得意ワザを封じ込める
① よーいドンをなくす
草刈りは、きれいに刈りこんだほうが見た目がきれい。なので、地際(地上ギリギリのところ)で刈ってしまうひとが多い。実はこの刈り方は、植物に勢いをつけてしまいやすい方法だ。
そもそも植物は、葉を広げて光合成をしたいと考えている。ちょっとでも陣地を広げようと、日々、隣の植物たちと競争しているのだ。
春は気温によってスタートフラッグが振られた状態。気温が上がると、一斉に葉を広げようとする。
地際で草を刈ると、それまでの競争関係がリセットされて、「よーいドン」と掛け声をかけられた状態になる。草が刈られたとたんに、植物は競い合って高く、広くぐんぐん伸びようと頑張ってしまうのだ。
ふんわりと高さを残して刈ると、植物たちの競争関係がゆるく保たれたまま、背丈が低い状態で落ち着く。春先に何度か刈っていくと、大きく高くなろうとしなくなるので、夏に刈る手間が少なくてすむ。植物は無駄なことはしないので、「ある程度の高さになったら刈られてしまう」とわかると、それ以上伸びようとしない。
その高さを草たちも覚えるようで、多年草は、翌年から高くなろうとしなくなってくる。(一年草はシーズンごとにリセットされるので、春にはまた高く伸びようとする)
ふんわりと刈ったら、そのあとは周りに揃えるように、伸びた部分だけをマメに刈るといい。
② 生長点をマメに刈る
生長点とは、植物がこれから伸ばそうとしている部分。つまり「ヤル気」がみなぎっている場所だ。そのヤル気が削がれてしまうと、萎えて、小さくまとまりやすい。
春から梅雨前の植物たちがヤル気満々な時期に、その生長点を刈ると効果が高い。その期間内にできるだけ刈る回数を多くしていくと、草の背丈が抑えられ、夏の草刈りがラクになる。刈る時期と回数がとても重要だ。
生長点は、根や茎の先端にある。植物の種類によって違う場所にあるので、違いを知って対処すると効果が高まる。
生長点がどこにあるかを見分けるには、タネから芽が出る葉の数を参考にするといい。
二枚の葉が出るタイプが、双子葉類。
小学校の頃に育てたアサガオのように、最初にフタバが出てくるもの。
生長点は、先端にある。鎌などで削ぎ切るといい。先端を切ると芯が分かれて広がる。根も対応しているので、地上の茎が分かれてくると、土中の根も同様に分かれていく。つまり草を刈ることで、土中のすき間をつくることにもなる。
一枚の葉が出るタイプ、単子葉類。たとえばイネ科や竹の種類。
中心の奥まったところに生長点がある。ススキなどがわかりやすい。草の勢いを弱めるには、中心のまっすぐの葉を手で引っこ抜くのが効果的だ。
*ちなみに、一枚、あるいは二枚の葉が出てくるのは被子植物。裸子植物(スギ、マツなど)は、たくさんの葉が出てくる。
③ 得意ワザを封じ込める
植物は、それぞれに得意なところがある。
例えば、
Aタイプ/ 茎を早く高く伸ばして上を陣取る
Bタイプ/ 茎を作らずに葉をまとめて立ちあげ、葉を広げる
Cタイプ/ 立ってるものを利用して巻きつき、ちょっと遅れて上を陣取る。硬い茎を作るエネルギーを節約する
逆をいえば、得意ワザを封じ込めてしまうと、優位に立てないので弱ってくる。
Aタイプは、先端を刈る
高く早く伸びようとする植物は、生長点は先端にある。先端を刈ると、株立ちするように広がって、高くはなりにくくなる。
ヒメジョオンやアメリカセンダングサなどが、早く高く伸びる植物。先端の生長点をマメに刈ったり手折ったりすると、株立ちして低くおさまっていく。
ちなみに、早く高く伸びるタイプの植物は、茎が空洞になっているものが多い。成長の速さが勝負なので、しっかり詰まった茎を作らない。だから分解されやすいので、土に還るのも速い。土中環境改善では、藁の代わりに使うこともできる。ある程度伸ばしてから刈って土を被せると、腐葉土としても使える。
Bタイプは広がってる葉をむしる、芯を抜く
ススキなどの種類は、根から掘り出すのは大変。力を使わずに弱らせるには、広がった葉をむしる+中心の葉を抜き取るといい。
葉をむしると、日にあたる面積が狭くなるので、勢いが弱まる。同時に、中心の立ち上がった葉を抜き取ると、新しい葉を出せなくなるので、株全体が徐々に弱まって小さくなっていく。
Cタイプは、巻きつく相手をなくすとおとなしくなる
ツル系は、からみつくものから遠ざけるといいようだ。何かに巻きついているツルは、できるだけ長く剥がし、グルグル巻いてひとまとめにする。葉を裏向きにして地面に置いておくと、弱まりやすい。
短く引きちぎるとそこから枝分かれするので、逆に広がりやすい。
ツル植物は立ち上がる硬い茎がないので、目立つ高さにはなりにくい。平らなところでは、低く地表を覆うグランドカバーのような役割をしてくれる。
根は繊維が強く、完全に取りきれないので、地上で弱めていくほうが時間はかかっても、ラクで確実かもしれない。
まとめ
人間が住みやすい環境にするためには、手を加える必要がある。でも、戦おうとすると、植物は粘り強く対抗してくる。
植物と闘って排除するのではなく、その習性を考えて共存する方法を考えたい。
あわせて、草が生えているメリットにも目を向けたい。例えば、ぬかるみにくい。地温が上がらないので夏は涼しい。土が流れ出ないので、地面が削られない。などなど。もっとみんな、草を生やしたほうがいいと思うよ!
自然を観察していくほど、自然の相互関係には無駄がないなぁと感じる。人間は、そのサイクルに入れてもらうような気持ちでいたほうがいいと思ってる。
草刈りのやり方のほか、点穴で土中の環境を整える講座を、毎日やっています。リクエストがあれば、出張講習もできます。