スコップひとつで動き出す/めぐる水講座 第3章_水をためない
水が停滞しないように動かすには、どうしたらいいのか。
水を動かすポイントは、
① 流す
② しみこませる
③ 蒸発させる
のみっつ。
いくつかを組み合わせていくことで、水を動かします。
① 流す(流動)
水を流す<流動>は、水が液体の形で動くので、早く、大きな効果が得られます。
上から下への動きです。
水は、高いところから低いところへ移動します。たまった水を流すには、
高低差をつける
出口を作る
などの方法があります。
高低差は、
①高いところを作る
②低いところを作る
③高いところと低いところを両方作る
のみっつ。
点穴
はじめに試してみるといいのが、点穴(てんあな)です。
穴を掘ると、掘った深さ分の高低差ができます。低い穴の底に向って水が動きます。
出口
出口を作ると水が動きます。
お風呂の栓を抜くと水が排出されるのと同様に、出口を作るとたまった水が動きます。コンクリートで囲われているところなどは、その一部を壊すと出口となります。
また、穴をしみ込む層まで深く掘っても、水の出口となります。
注意したいのは、水のスピード。
抵抗なく速く走らせてしまうと、大雨が降った時などに周りを削り取ってしまいます。ほどよい速さであれば、土にしみ込みながら水が動いていきます。
② しみこませる(浸透)
<浸透>は、効果が出るまでに、時間がかかります。しばらくしてから微生物の菌糸や、植物の根っこが、じわじわと細かな穴が作っていくからです。
浸透は、水平方向へじんわりと広がっていくイメージ。
しみませるには、小さな隙間がたくさんあるといいです。スポンジのように細かな空間がたくさんあるほど、水はしみこんでいきやすくなります。
● 点穴を掘る
ぬかるんでいるところの水がしみ込まないのは、泥の細かな粒子が土のすき間を埋めてしまっているため。泥の層を貫通する深さで点穴を掘ると、しみこんでいきます。
● 植物や微生物の力を借りる
植物の根っこや有機物につく菌糸などが居つくようにすると、すき間を作りだしてくれます。
● 炭など無機質で多孔のものを埋める
炭は変化せず、細かな穴がたくさんあいているので、土の中に埋めると空間を保ち続けてくれます。そのすき間を水と空気が動き、循環のきっかけになりやすいです。
空気の抜け道ができると、より染み込みやすくなります。ポリタンクの水を出す時に、空気穴をあけると出口からよく出てくるのと一緒です。
ミルフィーユのような水平の層を何層も重ねると、広い範囲でしみこませることができます。また、踏みつけて土圧をかけないことも重要です。
→水平の層をつくる
コンクリートで周りや表面を固めたり、踏みつけて土圧をかけてしまうと、水はしみこみません。しみこめなかった水が集まって、別の場所にたまったり、集まった水が「走る」原因を作りだしてもいます。
③ 蒸発させる(蒸散)
<蒸散>は目に見えないのでわかりづらいのですが、水が気体となって空中へ蒸発します。風通しがよく、日当たりがいいと、溜まった水は蒸発しやすい。
植物に手伝ってもらうと、たくさんの水を蒸発させられます。
森では、降った雨の50%は、植物によって蒸散されると言われています。地下から吸い上げた水を上へと持ち上げ、葉っぱから出しています。
たとえば水脈付近に好んで生えるケヤキは、巨木になるとドラム缶数本分の水を吸い上げてくれる、ポンプのような存在です。
大きな木を切るとそのまわりの水はけが悪くなるのは、木がやってくれた土中からくみ上げていた水の行き場がなくなるからです。特に高木は、地中深くから水を汲み上げてくれるので、働きが大きいです。かつては、木を伐ったらすぐわきに、また木を植えていました。
ちなみに蒸散の働きは、夏に地上の温度を下げる効果もあります。草や木が生えていると、涼しく感じるのはそのためです。
草がぼうぼうに生えたままだと、風通しが悪いです。
風の入り口と出口を作るように刈ると、風通しがよくなります。水脈を読み取って、その上が谷になるように刈ると、地上の空気が流れやすいです。それに促されて、土中の水や空気も動きやすくなります。
三つの動きはお互いに影響しあっている
「流動」「浸透」「蒸散」の三つの水の動きはそれぞれが影響しあっています。
点穴、溝を掘る場所、木を植える場所は、地形を読みとって流れがいめーじできると、効果が出やすいです。
次の章からは、具体的な方法を説明していきます。