2023 8月号 博士の治療探求#7 オスグッド病の治癒へ。驚くべきシンプルな治療法
皆様暑い夏をいかがお過ごしでしょうか?
もう8月も後半に差し掛かり終わりが近づいてきましたね、気が付けば今年もあと4カ月半、、早すぎますね。
さて、今回は成長期のアスリート・保護者・医療関係者・スポーツ関係者を悩ませる地味だけど治りにくいスポーツ障害の代表格「オスグッド病(Osgood-Schlatter病)」の画期的な治療法をご紹介させていただきます。
まず皆様、オスグッド病を御存じでしょうか?
スポーツをする成長期の子供に起こりやすく、いわゆる「成長痛」と言われることの多いアレです。
スネの上の方にある膝のお皿の下の出っ張り=脛骨粗面が徐々に突出してきて痛みや腫れが出たり熱を持ったりします。休んでいると痛みが無くなりますがスポーツを始めると痛みが再発する厄介なヤツです。10~15歳くらいのバレーボールやバスケットボールなどのジャンプ動作や、サッカーなどの足を前に蹴る動作の多い部活をやっている子に起きやすい慢性的なスポーツ障害です。
非常に身近なスポーツ障害にもかかわらずこれまで決定的な治療が無かったため、オスグッド病の子たちが病院に行くと
1)レントゲンを撮影して
2)オスグッド病だねと言われて
3)安静・ストレッチ・リハビリを指示されて
4)湿布や膝に巻くベルトをもらって
5)限界なら手術と言われて
6)「運動やめましょう」とか「成長期が終わるまでがんばりましょう」と言われて
痛みやオスグッド自体の根本解決が出来ないまま我慢し続けるという、お決まりの黄金パターンが確立されてきました。
そんな形でなんとなくごまかしながら続けていて困っている子は沢山いて、部活を応援する親御さんにとってもお子さんが痛みで思うようにスポーツが出来ないにもかかわらず、病院に行っても特別な治療はなく、数か月~数年単位で我慢している姿を見続けるというのはなかなかの苦痛だと思います。
しかしながら、そんな時代にも夜明けが来ました。この状況に風穴をあけオスグッド病で悩む人たちを救える画期的な治療が実は海外で人知れず行われ、2011年にはしっかりとしたエビデンスが構築されていたのです。
サッカー王国アルゼンチンのGaston ATさんという方の研究グループが小児の疾病を扱う有名な雑誌(Pediatrics 2011;128:e1121–e1128)にランダム化比較試験(RCT:randomized controlled trial)という最も信憑性の高い研究方法で行ったオスグッド病の驚くべき治療成績を発表しました。
その論文のタイトルは「Hyperosmolar Dextrose Injection for Recalcitrant Osgood-Shlatter Disease(難治性Osgood-Schlatter病に対する高浸透圧ブドウ糖注射療法)」 です。
今回はオスグッド病の病態を深堀りしたうえで、その画期的な治療が何故?どこに?どんなメカニズムで効くのかを解説させていただきたいと思います。
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