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ウェブ解析を巡る連想 Vol.10  ~ リ-ドクオリフィケーション (続き)

ユーザーから自主的な個人情報の提供を得るコンバージョンLevel.3の施策には、具体的にどのようなものがあるのか。例えば、企業やブランドが主催するイベントや各種キャンペーンへの応募、商品モニターへの応募、資料申し込み(郵送含む)、商品の問い合わせ(メールやチャット、電話など)、見積りの依頼、店頭での体験申し込みなど、対応するコンタクト手段がオンラインだけでなくオフラインに及ぶケースにも及ぶ。

望ましいのは、一元化したデータベースにより、店頭まで含むマルチプラットフォームを一元管理することだ。既存顧客はもちろん、見込み客もシステム管理する必要がある。そこで個人情報に紐づいたIDを、解析ツールを通じてウェブサイトへフィードバックすることで、見込み客や顧客のウェブサイト上での挙動も把握できるようになる。こうしてマルチプラットフォームを統合した見込み客マネジメントの仕組みの基礎ができる。

嘗て凋落したCRM時代のシステムは、運用が伴わないだけでなく機能も未熟だった。最近ではそのシステムやプログラムが進化したとは聞くが、使用経験がないのでその実力はわからない。しかし、その運用の考え方は今も昔も変わらないはずだ。仕組みの要点は、見込み客のステイタスをスコアリング評価して、ターゲットクラスターへ適切なアプローチ方法を選択し、実施後の結果を再評価して次の対処へ繋げる。例を挙げる。Fさんは、主催イベントへ参加後に頻繁に商品Gのページを閲覧するようになり、価格シミュレーションを行った段階でスコアリング指数がある閾値を超えたので、店頭での優待体験のお誘いをプッシュ通知し、結果商品購入へ結びついた。Hさんは、商品モニターへ応募し参加した後、資料請求があってスコアリング指数がある閾値を超えたので、店頭での優待体験のお誘いをプッシュ通知したが反応がなく、再びスコアリング指数が落ちてナーチャリング(待機)状態となった。

こういったシステムとプログラムを的確に実施できる万能なMA(マーケティングオートメーション)はぜひ欲しい。しかし誤ってはいけないのは、そのプログラムを作成してシステム入力するのは結局「人」だということだ。AIはまだそこまで追い付いていないし、あらゆるブランドや商品に共通なプログラムなんてない。きめ細かいユーザーのスコアリングは必要だが、そこでポジショニングされたクラスターごとのユーザーとのコミュニケーションを企画デザインするのは、優れたクリエイターの仕事なのだ。そのチューニング作業は永遠に続く。理論は単純で明解だが根気のいる業務であり、Webマーケティングのベクトルは否応なくこの方向に向いている。以前に企業にも覚悟が必要だと書いたのはこの意味においてであり、時代の流れに即して適度に対応するというような生半可な姿勢では成果は望めない。現在もネット上ではCRMシステムの販売広告がたくさん掲出されているが、そのシステムがどんなに優秀で高性能でも、それを運用するクリエイターとして素質のある人材と両立させなければ、必ずまた失敗するだろう。

オフからオンまで統合したCRM全体戦略下のリードクオリフィケーションの検証は、現在のWeb解析ツールの能力を超えるので、導入するシステム内で行えるように組み立てねばならず、これも重要なシステム/プログラムの要件だ。CRMを想定した場合、各レベルのCVは中でもLevel3が重視され、たとえオフラインなどと見込み客のID統合をしていなくても、ウェブ上の指数の進捗は、ブランドや商品の市場における価値や体力を示唆するので観測し続けねばならない。もしID統合が可能になり、さらにそこでオフラインで購入済/顧客化のフラグを立てることができたなら、それ以降はIDに紐づけてフィードバックし、顧客またはCVから最終的に顧客化したユーザーの、サイト内行動が分析できるようになり、いっきに分析の視野と役割が広がる。つまり、オフラインの購買に繋がったユーザーに基づいて、Step1からStep4までのサイト構造やコンテンツを最適化できる。話を広げ過ぎた感があるが、リードクオリフィケーションの検証は、現状可能な方法だけでもやれることはたくさんある。 [ 続く ]

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